Illustrator CCは、2014年1月の17.1へのアップデート以降、ダイレクト選択ツールを使って角丸を調整できるライブコーナー機能が追加されています。本稿では、ライブコーナーを中心に、パスの変形機能について詳しく解説します。
ライブコーナーとはどんな機能か
ライブコーナーとは、ダイレクト選択ツールでコーナーポイントの角を丸める機能のことです。ダイレクト選択ツールでコーナーポイントを選択すると、角の内側にコーナーウィジェットが表示されます。コーナーウィジェットをドラッグすると、角を丸められます。
複数のコーナーポイントを選択しておけば、1回のドラッグ操作ですべてのコーナーポイントを同時に変形できます。
これまでのIllustratorでは、角丸長方形ツールを使って作成したオブジェクトの角を丸めることはできましたが、作成した角丸長方形の角丸サイズを変更することはできませんでした。
また、図形の角を丸める機能としては、[効果]メニュー→[スタイライズ]→[角を丸くする]がありますが、すべてのコーナーポイントが対象となり、部分的に角を丸めることはできませんでした。また、[角を丸くする]効果は、見た目だけを変形させているだけなので、実際にパスの角を丸めるには、[オブジェクト]メニュー→[アピアランスを分割]を選択する必要がありました。
その意味においては、ライブコーナー機能は、Illustratorの根幹であるパスの形状を編集するための画期的な機能と言ってよいでしょう。
[コーナー]ダイアログボックス
角を丸める方法はドラッグ操作によるものだけではありません。コーナーウィジェットをダブルクリックすると、[コーナー]ダイアログボックスが表示され、コーナーの[形状]や[半径]、[角丸]を設定できます。
コーナーの形状は「角丸(外側)」だけでなく、「角丸(内側)」「面取り」を選択できます。サイズは、角丸のサイズです。
[コーナー]ダイアログボックスの[角丸]では、角の形状のタイプを設定できます。デフォルトは「絶対的」です。「絶対的」では、指定した半径サイズの円が内接するように正確に角を丸めます。
「相対的」では、コーナーの角度に応じて角丸の形状が変わります。ダイアログボックスのアイコンでは、サイズが小さくなるように表示されていますが、必ず小さくなるわけではありません。実際には、角度が90°のコーナーでは「相対的」と「絶対的」の角丸の形状が同じになります。コーナーの角度が90°以下のときは、「絶対的」よりも角丸が小さくなります。逆に90°以上のときは若干角丸が大きくなります(ただし見た目はそれほど変わりません)。
どんなときにコーナーウィジェットは表示されるか
コーナーウィジェットは、ダイレクト選択ツールでコーナーポイントを選択すると表示されます。ここでいうコーナーポイントとは、スムーズポイント以外の、すべてのアンカーポイントのことです。スムーズポイントは、ダイレクト選択ツールで選択した際に表示される、方向線が直線でつながっているアンカーポイントのことです。
また、コーナーウィジェットが表示されるパス、またはアンカーポイントを選択すると、コントロールパネルにも「コーナー」が表示されサイズを指定できます。もちろん「コーナー」の表示部分をクリックして[コーナー]ダイアログボックスを表示できます。
再調整も可能なコーナーウィジェット
ライブコーナーを使って角を丸めたオブジェクトの角丸部分をクリックすると、再度コーナーウィジェットが表示され、角丸の形状を変更できます。サイズを0にすれば、元の角丸のないコーナーに戻すこともできます。
アンカーポイントやハンドルを操作すると再編集できない
ライブコーナーは、直接パスの形状を変形する機能です。ライブコーナーで作成した角丸部分は、従来のダイレクト選択ツールの操作で、アンカーポイントやハンドルを操作してパスの形状を変更することもできます。ただし、一度編集するとコーナーウィジェットは表示されなくなり、ライブコーナーでサイズや形状を編集することはできなくなります。
旧バージョンとの互換性
ライブコーナーは、パスの形状を直接変形させる機能なので、旧バージョンで保存しても特に問題はありません。変形後のパスの形状が保持されます。
もちろん、旧バージョンではライブコーナー機能で再編集することはできません。
逆に旧バージョンで作成したIllustratorファイルをIllustrator CC(17.1)で開けば、ライブコーナーを使って角を編集することが可能です。
コーナーウィジェットの表示・非表示
ダイレクト選択ツールでパスを操作する際、コーナーウィジェットが邪魔だと感じる場合は、これを非表示にすることもできます。
[表示]メニューから[コーナーウィジェットを隠す]を選択すれば、ダイレクト選択ツールでパスを選択してもコーナーウィジェットは表示されません。ドラッグ操作による編集はできなくなりますが、ライブコーナーのがオフになったわけではないので、コントロールパネルの「コーナー」は使用できます。
[表示]メニューから[コーナーウィジェットを表示]を選択すれば、再度コーナーウィジェットが表示されます。
このコマンドにはショートカットキーが割り当てられていません。必要に応じて[編集]メニュー→[キーボードショートカット]で割り当てるといいでしょう。
ダイレクト選択ツールで曲線セグメントの変形を変更する
ライブコーナーと直接関係するかどうかはわかりませんが……ダイレクト選択ツールによる曲線セグメントの変形で、パスの変形のしかたが変わりました。
両端がスムーズポイントで接続している曲線のセグメントをドラッグして変形すると、これまでは、ハンドルの方向は固定されたままで長さだけが変わるようにセグメントが変形しました。17.1からはドラッグしたセグメントに接続する両端のパスも同時に変形するようになっています。
実際に使用してみると、(理にかなってはいるのですが)これまでとは異なる動きになるため、戸惑いが生じるユーザーがいるかもしれません。
下図のようなコーナーポイントに挟まれた曲線セグメントでも、従来はハンドルの方向は固定されたまま、長さだけが変わりましたが、17.1からはハンドルの方向も同時に変わるようになり、よりスムーズに変形できるようになりました。
アンカーポイントツールによる直線から曲線への変形
ダイレクト選択ツールではありませんが、アンカーポイントツールによる変形機能の追加も紹介しておきます。 これまで「アンカーポイントの切り替え」ツールと言われていたツールは、17.1のアップデートで「アンカーポイント」ツールに名称が変更されました。
アンカーポイントツールには、パスの直線部分をドラッグして曲線に変更できる機能が追加されています。
従来は、アンカーポイントをクリックして、コーナーポイントとスムーズポイントを切り替えたりハンドルを個別に調整したりする用途で使われていましたが、さらに直線を曲線に変更する機能が追加されたわけです。名称が変わった理由もわかります。
曲線に変更したパスは、アンカーポイントツールでドラッグして変形できます。これは、ダイレクト選択ツールでの操作と同じになります。
ペンツールの使用時に、optionキー(WindowsではAltキー)を押すと一時的にアンカーポイントツールになるショートカットはそのまま残っているので、ペンツールで線描画を行う際は便利です。