家族や友達にはやらないのに、気になるひとや恋人にはついついやってしまうことって、ありますよね。以前にマイナビウーマンが調査した「オトコが好きな女性に対してやってしまう言動」では、甘える、意地悪をしてしまう、皮肉をいう、スキンシップなどが挙げられていました。

果たして、心理学的に見た場合、好意を持っている相手に対して、人がついついやってしまう言動というのはあるのでしょうか。

ついついやっていまうのは「ささいな会話」

たとえば、恋愛の進展段階としてそれをみた場合、「(1)友達や勉強・仕事の話、ちょっとした相談をする、(2)用もないのに電話をしたりする、(3)一緒に外出する、(4)キスをし抱き合う、(5)恋人として友人に紹介する」と展開していきます。つまり、意外なことに好意を持っている相手に対して、人がついついやってしまう言動というのは、(1)や(2)のような、実はささいな会話だったりするんです。

では、どんな内容の会話をすることが多いのでしょうか。基本的に会話の内容というのは、時間つぶしや退屈しのぎのための雑談、会話を楽しむための冗談やうわさ話、久しぶりにあった相手に近況を話す新しい話題、その日の出来事を話す報告、相手への気遣いや好意をしめす愛情表現、個人的な事柄なのに関する深刻な話、に大別されます。

日常的な会話が恋愛関係によい効果をもたらす

そして、これらの会話の特徴として、雑談、冗談やうわさ話、新しい話題は友人との会話に多く見られ、報告や愛情表現は恋人に多く見られるんです。愛情表現は当然ですが、そういえば好意をもっているひとには「今日なにしてた?」ってきくことが多いですし、自分のことを話すことって多いですよね。

これは、相手との関係を進展させたいとの思いから、自己開示(自分自身に関する情報をありのままに相手に伝える)が行われるからだとされています。その日の出来事を話す報告を含む日常的な会話は、それを話すひとの価値観や考え方などが色濃く反映します。そのため、直接に価値観などを表明しなくても、普段の会話を通じて、お互いを理解していくことができるんです。その結果、日常的な会話をしている恋人ほど、愛情が深く恋愛関係によい効果をもたらすともいわれています。

好意をもつ相手には「スキンシップ」もしてしまうもの

ところで、好きな相手とは一緒に食事をしたり、遊びに出かけたりしますよね。そんなときに、マイナビウーマンの調査にみられたような、甘えたそぶりをみせてスキンシップを図ったりするかもしれません。たとえば、手をつないだりするのはもちろんのこと、相手の体に触れたりと。これは、エッチな意味でそういう行動をしているのではなく、乳児が母親を求めるような愛着行動(アタッチメント)と同じ意味があります。

つまり、好意をもつ相手と情緒的な絆を築こうとしているわけです。ですので、これも当然ながら、好意をもつ相手としか行われません。ですので、これも好意を持っている相手に対して、ひとがついついやってしまう言動といえるでしょう。

その一方で、マイナビウーマンの調査にみられた、意地悪をしてしまう、皮肉をいうというのは、相手の率直な反応を引き出そうという意図では、自己開示につながりそうですが、これは相手の反感を買ってしまいますよね。どうして、好きなのに意地悪をしてしまうかについては紙幅の都合で省きますが、意地悪や皮肉は、やめておいたほうがいいと思います。

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著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。