ドイツのベルリンで開催された家電見本市「IFA 2014」では、世界ナンバーワンの白物家電メーカーであるハイアールも、2つのブースを構えて製品展示を行っていた。

1つの会場では、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電。そして、もう1つの会場では、日本で展開していないテレビやタブレット、スマートフォンを展示。冷蔵庫では、日本では未発表の独自技術「ABT(Anti Bacterial Technology)」を搭載した製品を展示してみせた。これは、日本にも近いうちに投入されることになりそうだ。

ハイアール アジア インターナショナルの伊藤嘉明代表取締役社長兼CEOは会場でインタビューに応じ、今後の日本における取り組みなどに言及。クロモノ家電製品も日本市場に投入する考えを明らかにした。IFA会場で、ハイアール アジア インターナショナルの伊藤社長と、CMOである関本太朗執行役員に話を聞いた。

白物家電メーカーで終わるつもりはない

―― IFA 2014の会場をみた感想はどうですか。

ハイアール アジア インターナショナルの伊藤嘉明代表取締役社長兼CEO

ハイアール アジア インターナショナル CMOの関本太朗執行役員

伊藤「ハイアールとしては、展示規模は昨年と同じです。当初は、白物家電とクロモノ家電とを一緒に展示するという話もあったようですが、実際には訪れている人の層が違うのが明らかで、その点では、ブースを分けたのは正解だったといえます。白物家電については、すべてを無線LANで接続しようという動きに取り組んでいるほか、冷蔵庫では、日本では未発表の独自技術『ABT(Anti Bacterial Technology)』を搭載した製品を展示しました。ABTは、冷蔵庫内のUV光により、冷蔵庫の空気の流れのなかに潜む有害な最近を除去し、食料を新鮮に保つことができるという機能で、日本にも近いうちに投入することになるでしょう。いま、ハイアールでは全社をあげて『ゼロディスタンス』を打ち出しており、消費者と近い関係で、消費者の声を取り入れるといった取り組みを行っています。これをどんどん進化させて、研究過程のものについても、意見交換できるような仕組みを構築したいですね。ハイアール アジア インターナショナルは、全世界で5つに分かれるブロックを担当するなかで、中国を除くと最も大きい規模を誇ります。アジアはもとより、日本においても『ゼロディスタンス』の取り組みを、もっと加速していくべきだと考えています」

―― 現在、日本では、白物家電だけの取り組みとなっていますが、テレビなどのクロモノ家電に関してはどう考えていますか。

伊藤「白物家電メーカーで終わるつもりはないというのが私の想いです。つまり、日本でもクロモノを投入していきます。ただ、タイミングがいつかというのは現時点では言及はできません。市場動向を見ながらやっていくということになります。IFA 2014の会場を見ると、各社ともに曲面ディスプレイを前面に打ち出しています。日本ではまだ受け入れられていませんが、欧州や東南アジアでは関心が高まっています。これが3Dのように一時的なものになるのか、それとも定着していくのかわかりませんが、明らかに素晴らしい商品が出ています。曲面テレビは、その良さをしっかりとメッセージとして届けなくてなくてはいけない商材ですね。

私自身、クロモノが大好きで、大型テレビはいつも、最新モデルを出始めのタイングで、購入することが多いんです。これから安くなるのがわかっているのに買ってしまうというあまり賢くないユーザーでもあります。そうした消費者の視点を持ちながら、参入時期などを考えていきたいと考えています」

―― 具体的には、どんな商品を投入することになりますか。

伊藤「スマホ、タブレット、そして、テレビとしての用途を含めた大型モニターとなります。個別の商品で展開するのではなく、スマート化というなかで、これらがループでつながるようなものを考えたいですね。テレビではなく、大型モニターと表現しているのは、地上デジタル放送や衛星放送などを受信して楽しむという用途のほかに、インターネットを通じて配信されるコンテンツを楽しむことを狙った製品だということが含まれます。いまの使い方は、テレビに向かう時間は劇的に減る一方で、インターネットに接する時間は大幅に増加している。1時間の番組を見るというのではなく、YouTubeのように、こま切れのコンテンツを見ることが増えているという変化もある。居間に置くテレビという使い方だけに限定するのではなく、インターネットの周辺機器のひとつともいえる提案も必要です」

今回のIFA 2014では、曲面テレビを展示するメーカーが多かった

スマート化の流れのなかで、複数の製品がループでつながることが理想だという

―― 勝算はありますか。

伊藤「かつては自分の好きなメーカーの製品だけで、すべてを揃えるという傾向がありました。しかし、いまは、いいなと思った製品だったり、ライフスタイルに適している製品、手の届く価格の製品、デザイン、サービスといったように、消費者が持つ情緒的価値を刺激するような製品が求められている。その結果、携帯電話はアップルだが、テレビはソニーというような使い方が当たり前になっています。むしろ、ひとつのメーカーが、すべてのユーザーに対してすべての製品を揃えるのは無理だと考えています。メーカーには得意分野と不得意分野があり、それを省みずにすべてを揃えようとするから、魅力的ではない製品が生まれることになる。消費者の視点からみると、囲い込みはあり得ない。メーカーの立場からいえば、エコシステムを考えないとスマート化は進まないといえます。

そうなってくると、我々が勝負できる部分が出てくる。だからこそ、クロモノ家電市場にも参入し、そこで戦えると思っています。ハイアールは、世界ナンバーワンの白物家電メーカーであり、その知見と実績を生かすことができると考えています。

ハイアールが、オープンプラットフォームの場を提供し、それぞれの分野で得意な人たちとなにか一緒にやっていかないかというのが、もうひとつの戦略としてあります。私自身、かつて在籍したソニーではコンテンツ事業を担当し、また、ソニー以外にも様々な事業を経験してきました。そこに私の価値があり、この会社に呼ばれた理由がある。エコシステムをどう構築するのか。そこに力を注ぎたいですね」