セイコーアイ・インフォテック(SIIT)はこれまで、大判図面用プリンターや屋外広告用の大型カラーインクジェットプリンターなどを提供してきた。業務用プリンターのユーザーには、よく知られた企業だといえるだろう。最近では3Dプリンターの取り扱いも始め、特に今年に入ってラインアップを拡充するなど3D関連事業の展開を強化している。

その一環として投入されたのが、3D SYSTEMS社製の3Dスキャニング設計システム「Geomagic Capture」だ。この製品で何ができるのか、どこで活用できるものなのか、そして3Dプリンターと3Dスキャナーを組み合わせるとどのようなソリューションが生まれるのか、セイコーアイ・インフォテック 企画営業部の大和久睦丘氏に話を聞いた。

3Dスキャニング設計システム「Geomagic Capture」

設計現場のデスクトップ環境でリバースエンジニアリングを実現

3Dスキャナーを利用すると、すでに存在する立体物の形状をデータ化することができる。方式によりデータの取得方法はいくつかあるが、プローブといわれる針のようなもので対象物に直接触れ、その座標情報をデータ化するような接触式と、対象物に離れた位置からLED光などを照射しそれをカメラ等で捕捉し座標情報を計測するような非接触式に大分される。

「Geomagic Capture」の場合は、後者の非接触方式であり、対象物に青色LED光のパターンを照射し、それをカメラで撮影することで物体の形を読み取るという方式だ。

青色LEDを対象物に照射

3Dスキャナーのカメラでパターンを撮影してアプリケーションで解析する

セイコーアイ・インフォテック 企画営業部 大和久睦丘氏

「3Dスキャナーというと新しい物に感じられるかもしれませんが、三次元計測器と呼ばれてきたものも広義では3Dスキャナーと言えます。広範囲を対象とするものなら橋や建物、都市景観の形状を読み取るものもありますし、医療分野で使われるCTスキャンも三次元計測の一種と言えます。今ではさまざまな製品が製造業などの物造りの現場だけでなく、医療やアパレル、エンターテインメント分野で活用されていますが、Geomagic Captureは比較的小型なパーツをデスクトップ環境で手軽に読み取ることにたけています」と大和久氏。

具体的には20×20×20cm程度の対象物のスキャンに適している。各種製造パーツや小型の製品、宝飾品といったコンパクトなものが当てはまる。

「古い部品が破損したので保守用部品を造りたいが設計データがない、というような場合に現物から読み取って新しく同じものを作り直すことができます。また試作段階でのモックアップを用いたデザイン検討にて、少し削ったり盛ったりして形を整えたものを、あらためてスキャンしデータ化するというのも有効な利用方法の1つだと思います。現物から設計データを作る、リバースエンジニアリングを可能にするシステムなのです」と大和久氏は語る。

しかもデスクトップで利用できるサイズであり、接続するのもある程度のスペックは必要だが、普通のPCでよいため、設計部門やデザイン部門など現場に手軽に設置することができる。

「企業によっては、社内に3Dスキャニングや3D出力ができる専門部門がある場合もありますが、社内とはいえ依頼する場合時間もコストもかかります。Geomagic Captureを設計の現場に導入いただければ、試作検討時に必要な基礎的な計測は自部署内でタイムリーに作業を行い製品化、量産化段階でもっと精度の高い計測が必要な場合は専門部門に回す、などというような効率的な動きが可能になるのです」と大和久氏はその効果を語った。

低価格ながら、本格的な設計アプリケーションがセットになったパッケージ

「Geomagic Capture」の大きな特徴は、デスクトップサイズでのリバースエンジニアリングを可能にすることだけではない。非常に大きなポイントとして、コストメリットがある。

一般に3Dスキャナーを購入した場合、基本ソフトウェアは付属しているものの3D CADでの設計データとして活用する場合は、別途連携するアプリケーションを購入する必要がある。しかし「Geomagic Capture」はスキャナー本体と3D設計のための専用アプリケーションを組み合わせたソリューションパッケージになっているのだ。

「だいたいアプリケーションを購入すると250万円程度かかるのですが、Geomagic Captureはスキャナー本体とのセットで350万円程度になります。非常にお得なパッケージといえるでしょう。しかも付属するアプリケーションは、ソフトウェア単体としては既に多くの実績と評価を頂いているもので、使いやすいものである点も特徴です」と大和久氏。

大和久氏は「Geomagic Capture for Design X」のパッケージを例にとって「メニューやヘルプもきちんと日本語化されており、チュートリアルも充実しています。新しいアプリケーションを使いこなすには当然一定の習熟期間は必要です。ただGeomagic Captureの各アプリケーションはこの点でも使用者を最大限アシストするための配慮がされています」と語った。

付属アプリケーション「Design X」の画面。読み取った直後、対象物の形状が細かな点の集合で表現されている

点群情報を元にポリゴンメッシュデータが作成される

メニューが日本語化されているだけでなく、チュートリアルやヘルプも充実している