2014年8月は集中豪雨と土砂災害による鉄道路線の被害が頻発。つらいニュースが目立った。そんな中、未来につながる話題も。北陸新幹線の開業日決定、JR東日本の「羽田空港アクセス線構想」、リニア中央新幹線の進展だ。未来は確実に近づいている。

北陸本線を走る特急「はくたか」。北陸新幹線の新しい列車名となる

北陸新幹線長野~金沢間の開業日が2015年3月14日に決定

8月27日、JR東日本・JR西日本は北陸新幹線長野~金沢間の開業日を2015年3月14日と発表した。これに先立ち、8月5日から新型車両W7系による走行試験も開始されている。いよいよ東京~金沢間が約2時間半、東京~富山間が約2時間で結ばれる時代がやってくる。首都圏を朝遅めに出発しても、昼食で日本海の海の幸を楽しめる。

大変革となる北陸新幹線金沢開業が3月14日に決まったから、JRグループのダイヤ改正もこの日がターゲットとなるだろう。並行在来線も同日に第3セクター鉄道に転換される。JR線と相互直通運転を行い、新幹線や在来線特急列車と接続する私鉄のダイヤ改正にも連鎖していく。すべてが3月14日に向けて動き出した。JR各社のダイヤ改正は12月20日前後の発表が通例だ。北陸新幹線も含めてダイヤの詳細が明らかになるだろう。今後の情報が待ち遠しい。

北陸新幹線金沢開業で、周辺の在来線にも大きな動きが

来春のダイヤ改正のうち、北陸新幹線に関連した事項がいくつか明らかになっている。北陸新幹線の並行在来線を走る特急列車のうち、特急「サンダーバード」は和倉温泉駅発着の1往復を除き、大阪~金沢間に短縮。名古屋駅発着のL特急「しらさぎ」も金沢駅以北は運転取りやめに。福井駅と富山駅・泊駅を結ぶ特急「おはようエクスプレス」も福井~金沢間に短縮される。代わって金沢駅を起点に、和倉温泉方面・福井方面に特急列車が新設される。北陸新幹線と接続を取ることになるようだ。

金沢~新潟間の特急「北越」も来春で廃止に

上越新幹線と接続し、北陸方面を結んで活躍した北越急行経由の特急「はくたか」は、北陸新幹線の停車タイプの列車に名前を譲って廃止となる。同じく信越本線経由で北陸方面へ接続した特急「北越」も廃止。代わって北陸新幹線上越妙高駅と新潟駅を結ぶ特急「しらゆき」が新設される。車両は常磐線で活躍したE653系をリフォームした1100番台に決まった。JR東日本も、この列車に期待を込めているようだ。

一方、国鉄時代の特急用車両を使っていた快速「くびき野」と普通・快速「妙高」も来春で運転終了。代わって新潟~新井間・新潟~糸魚川間に快速列車が設定される。

北陸から中越地域の鉄道アクセスが、従来の直通タイプから新幹線と接続する形に切り替わる。石川県や富山県では首都圏からの旅客増に期待し、観光誘致プロジェクトチームを発足している。従来は終着駅だった長野県も、北陸新幹線利用者に下車して観光してもらうために取り組んでいるという。

石川県は従来の関西方面からの直通列車が残り、新幹線による関東方面からの乗客増も期待できるため、盛り上がるだろう。一方、富山県は関西方面からの直通列車がなくなる。所要時間が短縮されるとはいえ、乗換えを強いられる。その分、関東方面からの旅客増を期待したいところだ。そこで富山県は観光だけではなく、企業の誘致にも積極的だ。

すでに川崎市のユースキン製薬が、生産拠点を横浜から富山市の新工場に移転すると発表しているし、富山県黒部市に生産拠点があるYKKグループも、東京の本社機能の一部を黒部に移すという。富山市に本社を置くインテックが高岡市に新設したデータセンターは、東京の企業からの引き合いが多くなっているとのこと。石川県でも、航空機部品と医療機器のメーカーが静岡から金沢へ工場を移し、規模を拡大するそう。関連企業も合わせて移転する流れができつつある。東京に近づいた北陸は、東海地域より震災リスクが小さいという判断があるという。

北陸新幹線は、日本の産業地図も塗り替える力を持っているようだ。

JR東日本の「羽田空港アクセス線構想」が明らかに

8月19日の「交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」(第4回)で、JR東日本が「羽田空港アクセス線構想」を公表した。田町駅付近で東海道本線から分岐し、休止中の貨物線を復活させて東京貨物ターミナル付近へ、そこから新たにトンネルを掘って羽田空港地下に至るルートだ。その他、東京貨物ターミナル付近でりんかい線と接続し、新木場方面・新宿方面とも直通する。

この構想が実現すると、東京~羽田空港間の所要時間はわずか18分に。新宿~羽田空港間は23分、新木場~羽田空港間は20分で結ばれる。いずれも従来の乗換えルートより半分程度の所要時間に短縮される。羽田空港アクセスの大変革だ。着工時期は未定で、羽田空港旅客ターミナル地下駅までは建設時間を要するため、2020年東京オリンピック開催までに羽田空港貨物ターミナル付近に仮設駅を設置する。将来的には羽田空港国際線ターミナルへも延伸する構想だ。

東京貨物ターミナル付近。りんかい線の車庫の隣が、復活予定の貨物用線路

左端の線路が休止中の貨物線。田町駅付近で新幹線の下をくぐり抜け、東海道本線と合流する

田町駅から貨物線を経由して羽田空港を結ぶ計画については、2000年に運輸政策審議会が「今後整備を検討すべき路線」としていた。この当時は、東海道貨物線が羽田空港島直下の天空橋駅付近を通過していることから、東海道貨物線を経由し、天空橋付近からターミナルビル方面へ分岐すると思われた。しかし、東海道貨物線は関西方面から首都圏への貨物輸送の要であり、旅客列車の運行・増発は難しい。そこで今回のJR東日本の構想は、東京貨物ターミナルから新しいトンネルを掘るという大胆な提案となっている。このプランなら貨物列車の運行に支障することなく、旅客列車を増発できる。

8月20日には、JR東日本の関連会社でもある東京モノレールが、現在の起点の浜松町駅から東京駅までの延伸計画を明らかにしている。浜松町駅は貿易センタービルの建替えをきっかけに再開発計画が立ち上がっている。これに合わせて浜松町駅も改良し、モノレールを北側へ延伸したい考えだ。JR東日本の計画では、田町駅付近の分岐線が単線となり、ボトルネックとなる。しかし、モノレールは他の路線と干渉せず、複線のまま延伸するため、運行本数を増やせる。JR東日本は上野東京ラインに接続して北関東から羽田へのアクセスをにらみ、モノレールは都心からのアクセスに特化する。それぞれ棲み分けができそうである。

この時期に羽田空港アクセス線の動きが活発になった理由は、羽田空港の再国際化と旅客機発着数拡大の方針があるから。少子高齢化傾向の中で、羽田は数少ない旅客増が見込めるエリアだ。また、各社の発表が続いている理由は、運輸政策審議会の後継機関、交通政策審議会が、2015年に新たな首都圏交通のあり方を答申するため、各鉄道会社から意見聴取を実施しているからだ。9月に入り、東急電鉄が「蒲蒲線構想」を上申するなどの動きもある。これについても、機会があればまた改めて紹介したい。

中央新幹線開業予定は2027年 - 山梨リニア実験線で体験試乗会も

8月28日、JR東海は山梨リニア実験線で超電導リニアの体験乗車を実施すると発表した。開催日は11~12月の8日間、各日3回の実施で、合計24回の開催だ。募集期間は9月11~30日。応募多数の場合は抽選となる。応募単位は2座席分を1区画とし、1区画2名まで利用できる。料金は4,320円で2区画最大4名まで申し込めるとのこと。申込みは体験乗車専用サイトから。このサイトでは「第1回」と書かれているから、今後も随時開催されるようだ。

なお、この発表の2日前、8月26日に、JR東海は国土交通大臣に「中央新幹線品川・名古屋間の工事実施計画」を認可申請すると発表している。工事費は4兆158億円。すでに投資した金額や開業までに準備する車両費を含めた総額は5兆5,235億円とのこと。鉄道会社1社の投資計画としても、前代未聞の大規模プロジェクトとなる。

「乗り鉄」にとって気になる路線延長は285.6km。ただし、全体の約86%がトンネルまたは大震度地下となるため、車窓は期待できないだろう。高架橋、橋りょう、路盤区間はわずか38kmで、しかもそのほとんどがシェルターで覆われる予定だ。「撮り鉄」にとって気になる「明かり区間」はもっと少ない。ちなみに現在の実験線では、山梨県笛吹市の花鳥山周辺、ふるさと公園周辺、境川町前間田周辺がリニアの走行を眺められるスポットとのこと。笛吹市ではこれら3カ所をリニアの見える丘として整備する方針だ。

岐阜県中津川市でも、木曽川を渡るあたりにリニアの丘公園を建設する動きがある。もっとも、この付近の線路は雪害対策のためにフードで覆われるらしい。リニア新幹線の窓の内側では景色を見たいという声があり、窓の外側でもリニアの走りを見たいという声がある。JR東海は安全と定時運行のためにフードで覆いたいという。良い落としどころを見つけてほしい。

さて、JR東海の認可申請が認められると、リニア中央新幹線はいよいよこの秋に着工される。開業予定は2027(平成39)年とのことで、これから13年も先の話だ。それまでは体験乗車に楽しみつつ、開業を待つことにしよう。

JR九州の新しい列車や寝台特急の運休・時刻変更などのニュースも

7月末から8月にかけて、その他にもJR九州が筑肥線の新型車両305系や、「或る列車」をモチーフとした新しい観光列車を発表している。島根県の私鉄、一畑電車が5000系の室内を島根県産木材でリフォームするなど、楽しいニュースもあった。

「或る列車」に関しては、筆者は原鉄道模型博物館の館長・原信太郎氏(7月5日死去)制作の模型の客車を再現してくれると思っていた。しかし、「ディーゼルカー2両編成」と聞き、ちょっとがっかりしてしまった。もっとも、新しい観光列車の登場はうれしいし、「スイーツを楽しむトレイン」というコンセプトも良い。予算などさまざまな制約の中で、幻の豪華列車に乗った気分をどれだけ楽しませてくれるだろうか? 楽しみでもある。

一方、秋の臨時列車の発表と同時に、北海道への寝台特急の運休・時刻変更のニュースが寂しかった。北海道新幹線の工事進捗や試運転などで、青函トンネルの通過時間が限られてしまうからだという。北海道新幹線も楽しみだけど、いよいよ長距離寝台特急の終焉も近づいている。楽しい未来も寂しい未来も、すぐそこまで来ている。