【レポート】

大修理後の驚きの白さ! "白すぎ城"とも言われる姫路城が白すぎない理由

国宝のお城として有名な兵庫県姫路市にある姫路城。白漆喰(しっくい)で塗り固められたその美しい姿から、別名を「白鷺(しらさぎ)城」という。姫路城では2009年から大規模な修復が行われていたが、その様子は白鷺城をもじって"白すぎ城"などと呼ぶ人もいる。しかし、"白すぎ"は決してやりすぎというわけではないのだ。

大修理後の姫路城。正面から望むと壁だけでなく、瓦屋根までがすべて真っ白に見える。この様子から"白すぎ城"と驚きの声も

日本初の世界遺産に登録

姫路城は、小天守など5件の国宝と櫓や城門など74棟が重要文化財に指定されている、まさに日本を代表する城だ。平成5年(1993)には日本で初めての世界遺産に登録され(同年に4件が登録)、日本の宝から世界の宝となった。

2009年からはじまったこの"平成の大修理"は約5年間に及び、今年の春に修理後の天守がお披露目となった。白鷺城のリニューアルに多くの人々が注目をしていたが、5年ぶりの天守は雪でも積もっているかのように真っ白になっていた。"白すぎ城"とも呼ばれてからかわれているものの、決してやりすぎではない白さのはじまりは、徳川家康の家臣であった池田輝政の時代である。

修理中の姫路城。大きな素屋根にすっぽりと覆われていた。現在は足場の撤去作業などの修理が続き、天守内部は2015年3月に公開予定

大修理の前後の天守。修理前(写真右)の天守は屋根が黒く、その変貌ぶりが分かる

秀吉に姫路城をプレゼントした官兵衛

姫路城の歴史は戦国時代にまでさかのぼる。一説によると、現在大河ドラマの主人公として注目されている黒田官兵衛の祖父や父の代に建築されたものだという。その後は官兵衛が姫路城主となっていたが、姫路城ははじめから美しい天守の建つ城だったわけではない。当時は立派な天守や壮大な石垣などは存在せず、土を盛り、木造の館を建てる程度の、現代の人々が想像する城とはかけなはれた貧相な姿だった。

姫路城がその姿を変えるのは、天正8年(1580)に織田信長の命で豊臣秀吉が播磨に侵攻した時だ。秀吉の家臣として手腕を振るっていた官兵衛は、秀吉に「播磨攻めの拠点に」と大胆にも姫路城をプレゼント。その後、秀吉の手により大改修が行われ、姫路城は三重天守をもつ近世城郭へと変貌をとげたのだ。だが、この時点でもまだ、現在の姿からはほど遠かった。

本丸上山里曲輪下の石垣は、城内で唯一残る秀吉時代の石垣とされる。加工されていない石がそのまま積まれた古い工法の石垣だ

白鷺城の真の姿は白漆喰にこそあり!

次の大改修が起こったのは秀吉の死後だ。関ヶ原の戦いがおこり徳川家康が主権を握るようになると、家康の家臣である池田輝政が「西国の監視役」として姫路城に入った。すると輝政は2,000万人以上の作業員を動員し、9年の歳月をかけて広大な城郭を築き、現在の姫路城の基礎をつくった。

このとき輝政は、城の全面に防水や瓦留めのために漆喰を使用する「白漆喰総塗籠造(しろしっくいそうぬりごめづくり)」を採用。窓の格子から庇の裏まで、すべて漆喰で塗り固めた。江戸時代初期には瓦の継ぎ目まで白塗りになり、現在と同じような真っ白な姿だったという。「白鷺城」、その当初から"白すぎ城"だったのだ。

姫路城を上から見た様子。広大な敷地に櫓など多くの建造物が残っている

華麗な装飾に彩られた菱の門。姫路城は天守以外にも見どころが盛りだくさん

"白すぎ城"が見れるのは短い期間だけ

姫路城は、明治、昭和と大修理を行ってきた。50年前の昭和の大修理でも「白漆喰総塗籠造」が採用され、その修理直後も真っ白な姿だった。しかしこの白さは、数年で徐々に失われてしまう。漆喰は黒カビに弱い性質を持っており、浸食が進み色合いが落ちるのだ。

実際に、天守の右側に位置している乾小天守と西小天守は、2002年に修復工事が行われているが、屋根には黒さが戻ってきている。今回は防カビ用の薬剤を混ぜているそうだが、次の大修理は約50年後を予定しており、一度この白さが失われてしまうと、真の白鷺城に会うには長い年月を待つことになる。

姫路城には、この真っ白な天守や小天守群以外にも見どころがたくさんある。実際に訪れてみると実感できるが、天守まではまるで巨大な迷路のような道が続き、狭い門や別れ道など歩いても楽しめる城だ。まさに白鷺のような美しい姫路城を、この機会に訪れてみてはいかがだろうか。

夕焼けに映える大天守

桜や紅葉など、四季折々の姿を楽しむことができる

(文・かみゆ歴史編集部 青木一恵)

筆者プロフィール : かみゆ歴史編集部

歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史全般、世界史、美術・アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『一度は行きたい日本の美城』(学研パブリッシング)、『日本史1000城』(世界文化社)、『廃城をゆく』シリーズ(イカロス出版)、『日本の寺完全名鑑』(廣済堂出版)、『大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)など多数。また、トークショーや城ツアーを行うお城プロジェクト「城フェス」を共催。
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