パナソニックは、高級オーディオ専用ブランド「Technics(テクニクス)」を復活させる。第1弾として、2014年12月に欧州市場向けにハイファイオオーディオシステムを投入するの皮切りに、順次、グローバルに展開していくことになる。

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写真は、旧テクニクスのクォーツシンセサイザーD.D.プレーヤー「SL-1200MK6」

発売するのは、最高レベルの音質を実現するリファレンスシステム「R1シリーズ」と、音楽愛好家のためのプレミアムシステム「C700シリーズ」。R1シリーズは、ステレオパワーアンプ「SE-R1」、ネットワークオーディオコントロールプレーヤー「SU-R1」、スピーカーシステム「SB-R1」の3製品で構成。価格は約4万ユーロ。日本では500万円弱の見込み。

プレミアムシステムの「C700シリーズ」は、ステレオインテグレーテッドアンプ「SU-C700」、ネットワークオーディオプレーヤー「ST-C700」、CDプレーヤー「SL-C700」、2ウェイスピーカーシステム「SB-C700」で構成。価格は、CDプレーヤーを除いたシステム価格で約4,000ユーロ。日本では約50万円になるという。

ハイレゾがTechnics復活の引き金

9月5日からの一般公開に先駆けて、9月3日からプレス向けに公開されているドイツ・ベルリンの「IFA 2014」の会場において、取材に応じたパナソニック アプライアンス社 上席副社長 ホームエンターテインメント・ビューティー・リビング事業担当兼ホームエンターテインメント事業部長の楠見雄規役員は、「ここ数年、パナソニックが音で感動をお伝えすることができていないという反省があった」と切り出し、「住空間やモビリティ環境において、感動を与えられる商品を出したい。そこにTechnics復活の狙いがある」と、今回の狙いを語った。

Technicsは、1965年に、密閉型2ウェイ2ユニットスピーカーシステム「Technics 1」を投入。1970年には、世界初のダイレクトドライブ方式のターンテーブル「SP-10」を発売。コントロールアンプ、パワーアンプやCDプレーヤーなどを品揃えし、長年にわたり、ハイファイオーディオ専用ブランドとして高い評価を得てきた。

ブランド名の由来は、原音を忠実に再生する「テクノロジー」に基づく造語で、ハイクオリティな音づくりにこだわるパナソニックの思いを象徴したものだという。

だが、パナソニックへの社名変更、ブランド統一の動きのなかで2008年に発売し、2010年に生産を終了したクォーツシンセサイザー ダイレクトドライブプレーヤー「SL-1200MK6」を最後に、Technicsブランドの製品は登場していなかった。

パナソニック アプライアンス社 上席副社長 ホームエンターテインメント・ビューティー・リビング事業担当兼ホームエンターテインメント事業部長の楠見雄規役員

楠見事業部長は、「デジタル化することで、手軽に音楽が楽しめる世界が訪れる一方で、CD音質よりも劣るものが広がってきたのも事実」と、デジタル音源に主流が移っていることについてコメント。だが、「ここにきてハイレゾが注目を集めており、ここにTechnicsで培ってきたオーディオ技術のノウハウを発揮できると考えた。ハイレゾはTechnics復活の引き金になっている」などとした。

原音の忠実な再現による感動が「Technics」のフィロソフィー

また、「Technicsは、超広帯域、超低ノイズ、超低歪み、原音再生が強み。Technicsは、原音を忠実に再現し、それによって感動を与えるということがフィロソフィーであり、それを新たなTechnicsでも継続させていく」と、ブランドに込めた哲学を語る。その上で、「技術的なアプローチが、かつてのTechnicsとは異なる。薄型テレビのVIERA、レコーダーのDIGAで追求してきたデジタル信号処理によるオーディオ技術を活用して、新たなTechnicsの世界を作っていきたい。4年間に渡って、Technicsを出してこなかったパナソニックが、本当にTechnicsブランドにふさわしいものを出せるのかという声もあるが、それについては自信がある。これまでの製品に劣るものを出すのでは、Technicsブランドを復活する意味がない」などと語り、製品の完成度に自信をみせた。

Technicsブランド製品の事業模については、「高級オーディオ市場の規模は約1,000億円とされるが、ここでシェアを追求するというよりも、聴くという領域において、パナソニックとしてどう存在感を発揮するのか、どう事業を継続するのかという点が重要。高級オーディオシステムだけでなく、音質の水準が、Technicsのブランドに合致するものであれば、そうしたものにも展開したい。そうした観点から、2018年に100億円規模の事業に育てたい」としたほか、「こうした取り組みも行うことで、2018年にはオーディオ事業全体で1.5倍に拡大させたい」と語った。

Technicsブランドは、1990年代には年間500億円の規模、累計で1兆円規模の実績があったという。新製品の具体的な販売目標については、明らかにしていないが、リファレンスモデルのR1シリーズは、高価格帯の製品であることから、販売ルートを限定した形で展開することになるという。

日本市場向けにも今年度中には投入したい

まずは欧州市場に向けて販売するが、「かつてのTechnicsブランド製品での構成比が3~4割と高いこと、Technicsブランドに対する認知度が、日本が40%であるのに対して、英国では64%、ドイツでは47%と日本よりも高いことが背景にある」とした。

「まずは欧州での販売を加速させ、日本市場向けには今年度中に製品投入をしたい」としている。また、車載向けなどへの展開については、「まだ具体的な計画はないが検討していきたい」とした。

パナソニックへのブランドへの統一を進めるなかで、新たにTechnicsブランドの商品を投入することに対しては、「パソナニックブランドでは認知されない価値観というものがあり、そこにTechnicsというブランドを活用する意味がある。ブランドを復活させるだけの覚悟をもって、商品化を進めてきてものである。時代の変化に則した判断であり、ブランド戦略も変更している時期にきている」とした。