ドラマ『HERO』(毎週月曜21:00~ フジテレビ系)の第7話では、久利生(木村拓哉)と麻木(北川景子)の1泊出張や、馬場(吉田羊)の元夫が登場など、色恋絡みの展開が目立ったが、今回は"検事としての矜持"というド真ん中の直球勝負。

これまで第2シリーズは城西支部のチームワークに焦点を当てていたが、1日に放送された第8話で久利生の正義感をクローズアップしたのは、大きな敵に立ち向かうフィナーレに向けたカウントダウンなのかもしれない。

『HERO』でヒロインを演じる北川景子

今シリーズ一番のヒーローっぷり

今回の対決図式は、「脅しをかける」ヤクザvs「ビビりまくる」城西支部メンバー&「ブレない」久利生。深夜の盗撮で「お前を見ているぞ」というメッセージを送られても、刑事から「今度は本物の銃弾を撃ち込んでくるぞ」と警告されても、久利生は全く動じない。心配する麻木に対しても、「やっぱやめた方がいいのかな……。でもな~、夜中にラーメンどうしても食いたくなっちゃうんだよね。アサリだしハンパねえ!」とボケをかまして、どこ吹く風だ。

クライマックスで被疑者の釈放に立ち会った際も、「うわ~、すんげえいっぱい(ヤクザが)来てる。めちゃくちゃ怖え顔してんだけど。暑い中お出迎えごくろうさまで~す。権藤さん連れてお帰りになったら組長さんに伝えてもらっていいですか?」といつもの飄々とした姿を見せた。しかし、ここからが今回の見せ場。「全然納得できねえし、身代わりなんていらねえから真犯人出せ! って」と突然ブチ切れたのだ。久利生は最後も決めゼリフの「よろしこ」をかまし、ヤクザがポイ捨てした吸い殻を拾って渡す、徹底したヒーローっぷりを披露。「完全無欠の勝利を飾る」特撮ヒーローや時代劇主演のような、今シリーズ一番のカッコイイ姿を見せつけた。

ただ、そんなメンタルの強い久利生はいいが、同じように脅迫まがいの圧力をかけられていた城西支部メンバーたちは今後大丈夫なのか? 久利生のせいでますますキケンな目に遭わされそうな気もするが……。「本物のヒーローは、正義のためならそんなこと気にしない」というスタンスか。それとも「もしそうなっても、みんなはオレが守る」という覚悟があるのか。もしかしたら「大丈夫、みんなだったら分かってくれるから」という単なる楽天家なのかもしれない。

そんな熱い展開の中で最も笑わせたのは、脅しにビビった城西支部メンバーたちの変装姿。リゾートセレブ風の麻木や、インド人風の遠藤(八嶋智人)はいいとして、井戸(正名僕蔵)がなぜか前シリーズの警備員に逆戻りしていた。ちなみにこの変装は、前シリーズ第9話のオマージュ。城西支部を襲撃した"スモーキー"にビビったメンバーたちが変装し、なかでもフルフェイスのヘルメットにライダースーツを着込んだ江上(勝村政信)の姿を覚えている人は多いだろう。

麻木と宇野は似た者同士でお似合い

久利生には対面する被疑者だけでなく、刑事、弁護士、特捜部など、"もう一つの敵"がいるケースが多い。今回の敵は、"新宿区上歌舞伎町"に事務所を構えるヤクザの顧問弁護士・小此木(鶴見辰吾)だった。

しかし、「お金目当てでヤクザの顧問になったレベルの男は、久利生の敵にあらず。最初から小此木の態度で身代わり出頭を見抜いて不起訴にした上に、「こんなんじゃまだまだ。オレまだ納得していないですから」とトドメのひと言を浴びせて圧勝。最後は小此木に「(ヤクザの)やつらが久利生検事を襲うことはない。オレからもクギを刺しておいた」とまで言わしめた。

これで久利生役の木村拓哉は、エリート弁護士役の谷原章介、特捜部エース役の石黒賢に続いて、ダーク弁護士役の鶴見辰吾もやっつけてしまった。木村拓哉への次なる刺客は、どんな"実力派中年俳優"なのか?

そしてもう1人、小此木に引導を渡したのは、若手検事の宇野(濱田岳)。最初こそ、司法修習生時代の教員だった小此木に言いくるめられ、「美人に弱い」弱点を突かれて怪しい事務所に誘われるなど頼りないところを見せていたが、最後の最後で踏ん張った。

「一度引き受けたらいい金になっちゃったもんだから、やめられなくなった弁護士がいます。そのうち『あいつはヤクザ専門だ』っていう噂が立って堅気の客が寄りつかなくなって、結局ヤクザ専門に。先生、間違ってます。検察が杓子定規で、ヤクザが人間らしいってのは大間違いです。検察にだって面白い人がいます。いるんです!」と力説。さらに弱いはずのお酒を飲み干した上で、「ごちそうさまでした。ああ、おいしい」と言って、恩師・小此木に成長ぶりを見せた。

このところ宇野と麻木は、久利生の影響をモロに受けまくって成長している。今のところ、麻木は宇野を全く相手にしていないが、実は似た者同士のいいカップルになれるのかもしれない。

メンバーの名言、通販、「あるよ」は?

今回も最後に、"メンバーの名言"と"通販グッズ&「あるよ」"をおさらいしておこう。

名言は今回も2つをピックアップ。1つ目は被疑者を不起訴釈放したときに放った久利生の「確信を持たない限り、検事ってのは起訴しません。オレは認めないって言ってるんですよ。あんたのところの組が何を企んでいようが、オレは絶対に認めませんから」。2つ目は「いつも理想論が通じるわけじゃないでしょ。この事件で誰かを起訴できなければ、世間を不安にさせることになるんです」と言う宇野に返した久利生の「オレたちの仕事に例外はないんじゃないの? 責任取るべきやつに責任取らせるのがオレら検事の役目でしょ?」。ともに、「待ってました!」という『HERO』らしい正統派名言だった。

通販グッズは、メガネ型双眼鏡で、久利生は「これ、すげえ歩きづれえ」と言いながら使っていた。そして、マスター(田中要次)の「あるよ」は、タバコを口にくわえた久利生に差し出したライター。また、"ラーメンをすするマスター"というシュールな映像がラストカットになっていた。

そして注目の視聴率は、前話の19.0%から再び大台に乗せる20.5%を記録。裏番組で日本テレビが『24時間テレビ特別編』という最旬ネタをぶつけてきたことを踏まえたら、文句なしの結果だろう。

次回は同一事件の被疑者4人を検事4人で1人ずつ担当し、「チームプレーで解決に導けるか?」という展開。しかもその被疑者は大学生であり、フットサル仲間であることから、日本代表のユニフォームを着た城西支部メンバーが"久利生ジャパン"を結成するという。さらに、フットサルシーンは深夜の撮影にも関わらず、27~28テイク重ねたという話もあり、汗の飛び交うシーンに注目が集まりそうだ。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。