富士重工業がこのほど発表した、スバルの新型スポーツセダン「WRX STI」「WRX S4」。これに先立ち、7月末から8月にかけて、富士スピードウェイ(静岡県小山町)にて報道関係者向けの事前試乗会が実施された。その模様をレポートする。

新型「WRX STI」の試乗会は富士スピードウェイの国際レーシングコースで行われた

ステアリングレスポンス、リアグリップ、フラットライドの性能向上を追求

新型「WRX STI」は、「WRX」シリーズのトップグレードモデルであり、スポーツセダンとしての「絶対的な速さ」「クルマを操ることの愉しさ」を追求したという。試乗会では富士スピードウェイの国際レーシングコースを使用し、本格的なサーキット走行でポテンシャルを試すことになった。

サーキットで走らせてみて、まず感じたのは剛性の高さだ。スバルは技術革新のポイントとして、「ステアリングレスポンス」「リアグリップ」「フラットライド」の3点を挙げているが、いずれも明確に感じ取ることができた。

世界でも屈指のエンジンポテンシャルと走行性能を誇る「WRX STI」

「ステアリングレスポンス」は、ステアリングを切り始めてから実際に車が回頭するまでのギャップのことだが、旧型に比べれば圧倒的に短くなったと実感できた。そのためか、最小回転半径に大きな違いはないのだが、ステアリングがより「切れる」ような錯覚さえ抱いた。鋭利なナイフのように、意図した方向へスパッと俊敏に切れ込むことができるため、限界点をより深くへ持っていくことができる。

おそらくその効果は、2点目の「リアグリップ」の向上が寄与した部分もあるのだろう。軸足といえるリアの挙動を安定させることで、フロントをより正確な方向へ向けられる印象だ。今回はAWDシステム「マルチモードDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)」を「AUTO」の状態で走行したが、これを「AUTO -」にすればより鋭く、「AUTO +」にすればより安定したハンドリングが味わえただろう。

最高出力は308PS、最大トルクは43.0kgf・mに達する。ミッションは6MT

特筆すべきは3点目の「フラットライド」。高速コーナーでは適度なロールが感じられる一方、低速コーナーではとにかくフラット。スポーツクーペに比べれば全高の高い「WRX STI」だが、ローリングの少なさでは他を圧倒しそうなフラット性だ。ビルシュタインのダンパーが装着された「WRX Type-S」では、さらに薄皮1枚ほどの限界性能が味わえる。

同時に、ブレーキング時のピッチもかなり抑えられている。ブレンボ製ベンチレーテッドディスクブレーキの制動力はきわめて高く、勢い各コーナーではより奥へと突っ込む形になるのだが、ピッチングが少なく挙動が安定しているため、正確なコースを描くことができる。嫌なブレ方や暴れ方をしないのだ。

最高で308PSを発揮するEJ20のハイパワーは、やはり圧倒的。加速のスムーズさとミッションのなめらかさが向上した印象で、初心者にもより扱いやすくなったように感じた。直進安定性も抜群で、富士の直線でレブリミットまで達しても挙動を乱すことはない。

室内は全体的にブラックがベースで、ところどころに攻撃的な赤が差し込まれている

装備面も、普段使いに必要なものは網羅している。室内のレイアウトやトランクスペースなどは、新型「WRX S4」と同様のものが設定された。エンジン音も、とりたててやかましいということもないので、セダンとして通勤などに使うことも十分に可能だろう。

ただし、新型「WRX S4」と明らかに違うのは足回り。通常の舗装道路上を運転していても、石畳か鉄板の上を歩くようなコツコツ感を感じるのは致し方のないところだ。とくに「STI Type-S」はその傾向が強く、迫力あるリアスポイラーも目立つため、ある程度の覚悟が必要かもしれない。

メーターもスポーティな雰囲気。モードの切替えスイッチはセンターコンソールに置かれた

「STI Type-S」にはビルシュタインのダンパーと、BBSの18インチアルミホイールが組み合わされている

デザイン面は、従来のSTIに比べれば、それほど尖った印象は受けなかった。エクステリアではメッシュグリルに大きなエアインテーク、前述のリアスポイラー(「STI Type-S」のみ装着)、インテリアでは本格的スポーツシートや、黒地に攻撃的な赤が随所に散りばめられたデザインなど、「本気感」は満点なのだが、全体的にはコンサバティブなイメージだ。