8月25日、サンフランシスコで開催されたVMworld 2014にて、米VMwareは同社のSDDC(Software-Defined Data Center)技術を組み込んだOpenStackディストリビューション「VMware Integrated OpenStack」のBeta版リリースをアナウンスした

クラウド構築基盤として先進的な機能を多数搭載し、すでにエンタープライズの分野で大きなシェアを獲得しているVMwareが、OpenStackディストリビューションをリリースしたのにはどういったねらいがあるのか。また、同ディストリビューションはどういった構成で、VMware技術をどう活用しているのか。

米VMware、Director of Product Management OpenStackのDan Wendlandt

本誌は、米VMwareでDirector of Product Management OpenStackという肩書きを持ち、OpenStackにおいてNeutronのチームリーダーも務めるDan Wendlandt氏に話しを聞く機会を得たので、その模様をお伝えしよう。

——VMwareはOpenStackにいつから参加し、どういった活動を行っているのでしょうか。

Wendlandt氏 : OpenStackでの活動は主に、VMwareが買収したNiciraのメンバーが行っています。

OpenStackは2010年に設立され、Niciraは2011年から参加しています。当時は、仮想ネットワークのプロジェクト「Neutron」を専門に開発していました。

その後、2012年にVMwareがNiciraを買収。その年にOpen Stackのゴールドメンバーになりました。現在は、Neutronだけでなく、コンピューティングの「Nova」、ブロックストレージの「Cinder」、リソース利用量計測機能の「Ceilometer」、イメージサービスの「Glance」、Policy as a Serviceの「Congress」に参加しています。

今年4月にリリースされた最新版「Icehouse」では、VMwareから21人の開発者が関わり、414のコミットを実施、6万6488行のコードを書き、3770のパッチをレビューしました。その結果、4番目に大きなコントリビューターとなっています。

OpenStackにおけるVMwareの貢献の歴史

——VMware Integrated OpenStackの構成を教えてください。

Wendlandt氏 : 図にすると、以下のようなかたちです。

VMware Integrated OpenStackの構成

NovaにVMware vCenterを、NeutronにVMware NSXをつなぎ、CinderとGlanceにはVirtual SANをはじめとするVMware vCenter管理下のデータストアを連携させています。

VMware Integrated OpenStackは、OVF形式の仮想アプライアンスとして提供しています。vSphereのWebクライアントから展開していただければすぐに利用を開始できる点は大きな特徴の1つでしょう。

——VMware Integrated OpenStackの導入メリットとしてはどういった点が挙げられますか。

Wendlandt氏 :上記のような構成にすることで、vCenter、NSX、vSANといった、SDDCのインフラの上で、OpenStackのインタフェースを確保することが可能です。

すなわち、OpenStackのAPIを使ってインフラを制御したいという開発者に対応しながらも、システム管理者は高度に自動化されたVMware環境の上でVMwareの管理コンソールを使ってインフラを管理することができるようになります。もちろん、OpenStackのWeb管理画面「Horizon」を活用することも可能。HorizonからNSXを操作することもできます。

VMware vCenter Log Insightなども活用できるので、トラブルシューティングも効率的に行えますし、実績のあるVMwareの商用サポートも受けることができます。

OpenStackを新規に導入する管理者にもお勧めしたいですが、まずは既にVMwareを使ってインフラを管理しているユーザーに活用してもらいたいですね。

vSphereの仮想アプライアンスとしてOpenStackを取り込む

OpenStackのHorizonからNSXを操作

OpenStackで立ち上げたVMをvSphereから管理可能

Log Insightを使ってトラブルシューティングも容易にできる

——今後の予定について教えててください。

Wendlandt氏 :VMware Integrated OpenStacは、現在Beta版という位置づけで、一部のユーザーに対してのみ提供しています。正式リリースは現在のところ、2015年の前半を予定しています。

今後の開発予定としては、さきほどの構成図の薄い緑色の部分の対応を進めていきます。シングルサインオンに対応させたり、VMware vCenter Operations ManagerやVMware vCloud Automation CenterをOpenStackから直接利用できるようにしたり、あるいはHeat、Trove、CeilometerといったOpenStackの新たなプロジェクトにも対応していきたいと考えています。