先日掲載した「年間125万件に対応する弥生カスタマーセンターが行う効率化とは?(前)」では、増床した弥生の札幌カスタマーセンターと、増大するコール数に対応すための同社の効率化の取り組みをレポートした。

後半では、なぜこのように弥生はサポートを充実させているのか、事業コンシェルジュ化を目指す本質とは何なのかを弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏のインタビューを通してレポートする。

Q:2014年度(2013年10月-2014年9月)は、弥生にとってどういう年でしたか?

弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏

岡本社長:消費税アップとWindows XPのサポート終了への対応が繁忙期(12月-3月)と重なり危機的な年でしたが、いい形では乗り切れたと思います。業績面では、消費税の変更の影響で会計系と販売管理系は大きく伸び、非常にいい年でした。

Q:今後も業務の拡張に合わせ、カスタマーセンターを増床していく予定ですか?

岡本社長:私はお問い合わせをいただくことが、良いことだとは思っていません。お客様とっては問い合わせしないで済むのであれば、それがベストだと思います。そのため、単純な問い合わせについてはソフトの使い勝手を良くし、ナビゲーション機能などを搭載して、問い合わせの数を減らしていきたいと思います。一方、業務相談の数は増やしていきたいと思います。今年は125万件のコールを処理する見込みですが、今後はトータルの数はあまり変えずに、内容の比率を変える方向で考えていきたいと思います。

Q:事業コンシェルジュ化は、弥生にとってどういう意味があるのでしょうか?

岡本社長:事業コンシェルジュという考えは、お客様とお話したり、ツイッターでやりとりする中で、「お客様は業務ソフトを買いたくて買っているわけではない」とわかったことが出発点になります。お客様が望んでいるのは、業務を成立させることや効率化すること、そして、事業を成功させるということで、その手段として業務ソフトを買われるわけです。そういう意味で、我々はソフトを提供するだけでは十分ではありません。

たとえば会計ソフトでは、仕訳の仕組みを提供すれば十分ですが、お客様はどういう仕訳が最適なのかわからないという悩みを抱えています。そう考えれば、仕訳の仕組みだけではなく、どの科目が最適なのかをアドバイスし、お客様の悩みを解決するのも我々の責務だと思います。そのため我々は、業務ヘルプデスクの中で「仕訳相談」というサービスを提供していますが、この範囲を広げていこうとすることが、事業コンシェルジュという考えにつながっています。

ただ、まだまだ進化途上で、事業コンシェルジュと胸を張っていえるような状況ではなく、認知も十分ではないと思います。しかし、今後5年というスパンで考えれば、お客から弥生は単なる業務ソフトメーカーではないということがわかってもらえると思います。そういう意味では、ソフトを提供する会社ではなく、サービスを提供する会社になろうと思っています。

Q:「やよいの白色申告オンライン」や「やよいの店舗経営オンライン」などのクラウドアプリには、どういった狙いがあるのですか?

岡本社長:「弥生オンライン」は新たな層の顧客獲得を目指したもので、会計業務に不安でよくわからない、税理士の方に丸投げしているような業務ソフトに縁遠い方に業務ソフトのベネフィットを提供したいと思っています。それには、これまでのような機能が豊富なデスクトップアプリではなく、クラウドでシンプルというアプリを提供していくことで、難しいと感じることなく使えるソリューションを提供していきたいと思っています。また、法制度が変更され、白色申告にも記帳義務が発生するようになりましたので、これまで我々と接点を持っていなかった人と接点を持つことも狙いです。

Q:今後も、青色申告をはじめ、他のデスクトップ製品のクラウド化を進めていかれるのですね

岡本社長:デスクトップアプリケーションは機能が豊富で、利用できるユーザーの幅も広く、間口の広い製品となっています。一方クラウドアプリは、これまで業務ソフトを使ったことがない人向けなので、初心者に特化したものです。そのため、クラウド製品はデスクトップの代替とは考えていません。機能にも差を設けていきます。両者がまったく同じである必要はないと思います。ただ、5年、10年という単位で考えた場合、クラウドの機能が充実し、両者の差が縮まっていくことは考えられます。今後は、クラウドサービスを充実させていきますので、クラウドとデスクトップのいい面を組み合わせながら、お客様に多くの選択肢を提供していきたいと思います。来季は弥生のクラウドに対する本気度を実感していただけると思います。来季は我々にとって、大きな年になると思います。

Q:今後、どのように事業を拡大していく予定なのでしょうか?

岡本社長:我々のコアなお客様は、中小企業や個人のお客様になりますが、それは今後も変えていこうとは思いません。もう少し大きなお客様をターゲットにしていくことも可能ですが、そこはわれわれの強みを発揮できる領域ではないと思います。必要されている領域に特化していくべきだと思います。現在はソフト中心ですが、今後はそれを支えていくためのサービスの部分にも広げたいと思います。

Q:「YAYOI SMART CONNECT」でAPIの提供を開始しましたが、今後は他社との連携が増えていくのでしょうか?

岡本社長:他社システムとAPIを通じて連動することは、今後増えていくと思います。現在は完全公開ではなく、限られた会社との連携になっていますが、時間をかけてオープンにし、完全公開していきたいと思います。そうなれば、多くの会社とAPIを通して連動することが増えていくと思います。