既報の通り、テレダイン・レクロイ・ジャパンは7月2日に新しくWaveSurfer 3000シリーズを発表した。タッチスクリーン対応の10.1inchという大径ディスプレイや、MAUIアドバンスド・ユーザー・インターフェースの採用に加え、最大帯域500MHz、10Mpoint/ch、最大サンプリング速度4GSpsと基本機能の充実振りも目を引くが、これが定価ですら43万円~(税別)、現在はキャンペーン価格として39万8千円~(税別)と手頃な価格である点も大きな訴求力がある。そんなWaveSurfer 3000シリーズであるが、今回この中で帯域350MHz、4ch構成のWaveSurfer 3034を試用する機会があったので、レポートをお届けしたい。

案外にコンパクトな筐体

最近の同社の製品トレンドに漏れず、WaveSurfer 3000も操作面こそ大型なものの奥行きが狭いこともあり、設置は非常に容易である。実測値では幅350mm、高さ255mm(脚部除く)となっており(図1)、裏面の配置もすっきりしているので戸惑いは少ないだろう(図2)。上についているハンドルは丁度重心位置にあっていて、持ち運びは簡単である。

図1:4chながら配置が整理されており、オシロスコープを触った経験のあるユーザーなら操作に戸惑いは少ない

図2:左から外部トリガーや入出力端子、外部モニター出力、Ethernet、USB Device/Hostポート、電源が整然と並ぶ。一番左はMicroSD Cardのスロット

奥行きは125mm(実測値・脚部除く)程度であり、ケーブル類の突き出しを考慮しても200mm未満の奥行きで問題なく設置ができる(図3)。面白いのは底面の脚部は前後方向を逆転できる上、足を開いて傾けることができる。これを使うと、後方向に画面を倒す(図4)ことも、前方向に画面を倒す(図5)ことも可能である。図4は普通に机上に設置する場合に便利だろうし、逆に図5は机の上の棚に設置してプローブだけ垂らして使う、なんて場合に適しているだろう。

図3:側面はこんな感じ

図4:今回は机上で評価したので、この形が操作しやすく便利であった

図5:逆にワークエリアなどで、机のずっと上方に設置する場合は、こうすると画面が見やすい

ちなみに付属品はプローブ×4、電源ケーブル、それにSD Card/MicroSDのアダプタとなっている(図6)。

さて、この製品の最大の特徴は性能などというよりもむしろ使いやすさであろう。MAUI(Most Advanced oscilloscope User Interface)は、従来のボタンとダイアルによる操作以外に、タッチスクリーン操作で全ての作業が行えるようになっており、それに適したGUIが提供される。またタッチ以外にUSBキーボード/マウスを接続することも可能で、こちらを使っての操作も可能である(図7)。

図6:標準で付属するのは10:1のパッシブプローブ。先端も何種類か用意されている

図7:マウスとタッチパネルは併用可能。細かいカーソルの動きなどはマウスの方が楽である。ちなみに数字や文字(例えばラベル)入力はソフトキーボードを使うこともできるし、キーボードからの直接入力もサポートされる

図8はArduinoにI2C経由でRTC(Maxim DS1370)を接続して、その波形をAutoモードでプロットした結果だが、何もしないとこのような画面になる。ここで左下の[C1]という項目を指かマウスでクリックすると、C1のプロパティが表示される(図9)ので、直接変更ができる仕組みだ。勿論画面右のダイヤル類を操作しての変更も可能で、これをやるとちゃんとプロパティの数値が変化する。同様に[C2]をクリックすれば、こちらの変更も可能となる(図10)。ちなみにトリガーは[C1](I2CのSCL信号をプローブしている)の立ち上がりにしているが、この変更も簡単に行える(図11)。

図8:電圧レベルが同じなので、当然2つの波形が重なることになる

図9:volts/divとかOffsetなどは、キーボード入力も可能(ダブルクリックするとテンキーが出てくる)だし、横の上下ボタンで変更もできる

図10:今はオフセットが両方0Vなので波形が重なっている形

図11:画面上の「Trigger」をクリックするとプロパティが表示される。左からトリガーの種類、ソースとレベル、傾き、カップリングなどが非常にわかりやすく設定可能

ところでいつまでも重ねて表示していると見難いので、C1とC2に若干のオフセットをつけて表示を分離させることにする。これはプロパティからオフセットを入力するか、もしくはダイヤルでVerticalのOffsetダイヤルを操作というのが一般的であるが、マウスを使って直接波形を掴んで上下左右に移動させることも可能である(図12)。これで適宜波形を分離することで、見やすくできるようになった。

図12:こう書くと簡単だが、実際にやってみるとあまりの操作の簡単さに少しびっくりする

図13:コンテクストメニューはよく使う項目が簡単にまとめられており、使いやすい

またWaverSurfer 3034には幾つかの測定機能も搭載されている。これは上段の「Measure」をクリックしてもいいが、実は波形をマウスで直接クリックするとコンテクストメニューが示される(図13)ので、ここから指定も可能だ。測定項目は25種類ほど用意されており、最大6つまでの同時測定が可能である(図14)。わかりやすいところでC1(SCL信号)のデューティ比を測定してみると、図15のように下段にリアルタイムで測定結果が示される。

図14:測定項目には"None"(何もしない)も含まれているので、これを除くと24種類

図15:デューティ比は50.5%ほどで、ほぼEvenになっていることが読み取れる

このあたりまでは本当に基本的な項目であるが、画面が非常に整理されており、かつ説明が豊富に示されているので、本当にマニュアルを見なくても直感的に操作できる。また記録した波形の保存/呼び出しや設定の保存/呼び出し、画面の記録/印刷なども可能になっている。外部接続機能も豊富であり、標準のMicroSDカードへの記録以外にUSB Flash Memoryに記録したり、WaverSurfer 3034自身がUSB Storage Deviceとしての動作も可能である。他にEthernetポートもあり、HTTPアクセスで内部Storageにアクセスできる機能も用意される。信号そのものは最大4ch入力だが、オプションでMS Probeを装着することで最大16chのDigital Inputがサポートされる。これはオシロというよりはロジアナ的な使い方をする場合に便利だろう。

ちなみに今回は英語/イタリア語/フランス語/ドイツ語/中国語/スペイン語のみがインストールされて届いたが、日本語表示も今後提供されるそうだ。ただ英語表記については、普通のエンジニアならばまず困らない程度の平易な英語で記述されているので、これが問題になることはあまりないだろう。