――それだけ理解に苦しむ内容にも関わらず、なぜ挑戦しようと思ったんですか。もともと「断る」という選択肢はなかった?

私の中では「断る」という選択肢はありません。いろいろ悩んだことをお話させていただきましたが、この役を大事にして生きることが何かに繋がると思ってすごく感じていましたし、真正面からぶつかっていくことで、その過程が由佳ちゃんに繋がっていくんじゃないかなと思っていたので、私としてはすごく勉強になりました。演じていて苦しかったんですけど、まずはこのメンバーに出会えたことが私の中での幸せです。スタッフさんが人狼の世界を守っていてくださったお陰だと思います。

――「何を演じるか」ではなく、その役柄に近づくまでの過程が大事だと。そう思うようになったきっかけは?

どうやったら早く感情が出るのかとか、私はそういう自分の傾向が全く分かりません。勉強する方もいらっしゃると思うんですけど…自分の中ではわからないので、今後どうやって勉強していったらいいのかなと悩んでいます(笑)。だから、地道にやらせていただいていています。今までは、オーディションに出て、受かったものに出させていただくという感じだったので、自分で築いていくしか方法がありませんでした。今も探り探りですけど。そんなに頻繁に撮影現場に行っているような立場ではなかったですし…撮影がない時期も多かったです。ふとした時に「そういえば最近撮影現場に行ってないな」と思う時期もありました。ドラマの『鈴木先生』が終わった後もそうでした。自分が出ていた作品を見返していたりすると「撮影してたんだなぁ」って(笑)。

――切なくなってきました(笑)。つい最近の出来事ですよね。

そうなんです(笑)。だから、お仕事があることが本当にうれしいんですよね。だからこそ、きちんと1つの役をしっかり生きようと。

――『人狼ゲーム』、『るろうに剣心』、朝ドラ『まれ』。向き合い方はすべて同じだと。

はい。朝ドラのヒロインも感覚としては変わらず、「1つの作品に出演させていただく」という感覚なんですけど、でもヒロインとしての役割もありますので、疑問に思ったことをスタッフさんに尋ねたり、キャストさんともお話をしたり。いつもおしゃべりなんですけど(笑)、チームの1メンバーとして作品を作ることに集中していけたらいいなと思っています。

この前は熊坂監督、『まれ』の監督、『花子とアン』の監督からもお手紙をいただいて。記者発表会には『軍師官兵衛』を撮ってらっしゃる大原拓監督をはじめ、私が出演させていただいた『真夜中のパン屋さん』のスタッフさんたちがいらっしゃって。ふと隣を見たら岡田(准一)さんも「おめでとう」と祝福してくださいました。

――吉高由里子さんも泣いて喜んだそうですね。

本当にありがたいです。周りには信頼できる方々がそばにいます。大学で授業に出られない時も、友だちがノートを全部とってくれていて、「一緒に単位とって卒業するよ」って励ましてくれたり。

――これからが大変ですね。ブログには「比べられることが嫌」と書いてありました。今後、「朝ドラヒロイン」として比べられることもあると思いますけど、それについてはどう思いますか。

もちろん、プレッシャーは感じますけど、同じような人はいらないと思うんですよ。同じようなヒロインというか。だから、その人らしいヒロインになればいいなと。私の場合は現場によって作られている部分が大きいので、まれちゃん自体が少しずついろんな人と出会って別れていくように、NHKは入れ替わりが激しい現場なのでいろんな人との出会いと別れの中で、少しずつ温かいまれちゃんに、温かい現場になっていけばいいなと思います。とりあえず、現場が温かければ何か温かいものが届けられるんじゃないかなと信じています。

『おひさま』の井上真央さん、『花子とアン』の吉高由里子さんとそれぞれ共演させていただいたのは朝ドラの現場を知るいい経験になったと思います。しかも、井上さんの大河ドラマ『花燃ゆ』とスタジオが隣になるかもしれなくて。『おひさま』の先生と生徒になるんですよ。本当に幸せです。

■プロフィール
土屋太鳳(つちや たお)
1995年2月3日生まれ。東京都出身。O型。身長155cm。2005年に行われたスーパー・ヒロイン・オーディション「MISS PHOENIX」にて審査員特別賞を受賞し芸能界デビュー。黒沢清監督作『トウキョウソナタ』(08年)で銀幕デビューを果たした。NHK大河ドラマ『龍馬伝』(10年)のほか、NHK連続テレビ小説『おひさま』(11年)、『花子とアン』(14年)に続いて、2015年3月からスタートする『まれ』のヒロインに抜てきされた。今年の出演映画は『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(8月1日・9月13日公開)。