アプリケーションに対するニーズがますます多様化するなか、個人・企業を問わず、クラウドストレージの利用が急速に広がりつつあります。一部のクラウド事業者は、数年前からそのことに気付いていたようです。Amazonの先見の明は、Amazon Simple Storage Service (S3)を開始した2006年初頭にさかのぼります。このS3は、世界中の利用者が生み出す大量データを収容するため特別に開発された、大規模な拡張性とコスト効率の高いクラウドストレージソリューションです。

以来、私たちは、このパブリッククラウドの巨人がもたらした、画期的な出来事をいくつも目撃してきました。S3に格納されるオブジェクト数が2兆個を越え、40回の値下げを行い、350本を越える対応アプリケーションからなるエコシステムが生まれ、成長を続けています。Amazonがパブリッククラウドストレージの分野における、群を抜くリーダーとして定着していることは明らかです。

さて、最近はハイブリッドクラウドストレージが注目を集めはじめています。エンタープライズにとって、柔軟性、管理性、復元性は最大の関心事であり、オンプレミスのクラウドとパブリッククラウドとの間でストレージの自動階層化を実現するハイブリッドクラウドは、そういったストレージニーズのために選択するソリューションとして次第に浸透しつつあります。最近のRackspaceの調査では、エンタープライズITの60%以上が、今後3年間にハイブリッドクラウドを展開する計画があると指摘しています。

Amazon S3は、類似する競合者の全てを合わせた市場シェアの2倍を有しています。そのため、各ストレージ製品が提供するS3との互換性の高さが、プライベート、もしくは、ハイブリッドクラウドのためのストレージ基盤の選択について、大きな影響力を持つでしょう。しかし現状では、互換性に関する明確な基準は存在せず、仮にS3のごく一部の機能だけをサポートしていたとしても、自分の製品がS3互換であると堂々と主張できます。このような状況では、正しいストレージ基盤の選択は困難なものになるでしょう。

では、S3互換性とは何を意味するのでしょうか? なぜそれが重要なのでしょうか?

なぜ重要なのでしょう…

以下のようなケースでは、マイグレーションの簡単さ、コスト効率とTCOの観点から、S3互換性が重要になるでしょう。

  • すでにアプリケーションがS3を活用しており、アプリケーションのデータ格納先を単純に切り替えるハイブリッドクラウドソリューションを探している
  • S3に対応した350以上のアプリケーションのいずれかを利用し、それらをオンプレミスかハイブリッドクラウド環境でシームレスに運用させたい
  • S3を活用するアプリケーションを開発中で、今後もAPIを書き直さずに運用を続けたい

S3 APIの互換性レベルの違いが、プロジェクトを成功させたり、逆に、コストや時間を浪費させてしまうかもしれません。S3 APIと互換性あるストレージ基盤が持つ多様な互換性のレベルを理解することは、ハイブリッドやオンプレミスクラウドの立ち上げを牽引する人たちにとって、不可欠となるでしょう。

S3 API

アプリケーションがS3をもっと便利に使えるように、AmazonはS3 APIでできる操作を増やし続けています。APIは、S3サービス、S3バケット、S3オブジェクトに対する操作を提供します。これらの操作は現時点で51あります。ストレージ基盤によって、これらのうちのいくつの操作をサポートしているかが大きく異なります。

シンプルな互換性

S3 APIが提供する9つの「シンプル」な操作があります。これらは、API経由でデータ操作をする最も基本的かつ不可欠なもので、S3互換性があるとされるどのストレージ基盤もサポートしています。つまり、S3互換性があるといっても、後に続く42の操作をサポートしているかどうかはわかりません。このことをよく覚えておいてください。以下に9つの「シンプル」な操作を示します。

シンプルな互換性に該当するストレージ基盤の例としては、Swift Stackがあります。Swift3と呼ぶミドルウェアを使うことで、SwiftStackは、S3 API経由の上記操作を実行できます。

中程度の互換性

アプリケーションが上記リストにある9つの「シンプル」な操作以外のS3 APIを活用しており、アプリケーションの修正を避けたいのならば、もう少し強力な互換性のあるストレージ基盤を見つける必要があります。以下の表は、9つのシンプルな操作(緑)に18の中程度の複雑な操作(黄色)を付け加えて表示しています。以下に示した27の操作の大半が実行できるストレージ基盤は、中程度の互換性があるといってよいでしょう。

これに該当するストレージ基盤は、オープンソースの統合ストレージ基盤、Cephです。上の表に基づく「中程度」のS3互換性を有しています。

高度な互換性

もしあなたが、S3を活用した自社開発のアプリケーションや、市場にある350本以上のS3互換アプリケーションが、オンプレミス、または、ハイブリッドのクラウドでも何の問題もなく動作することを望むなら、S3 APIとの高度な互換性を持つストレージ基盤を選択することが極めて重要です。S3 APIが提供する51の操作のうち、残りの24が高度と考えられます。以下は、シンプル(緑)、中程度(黄色)、高度(赤)のAPIが提供する全ての操作です。

Cloudianは、高度な互換性に該当する唯一のストレージ基盤で、高度なAPIのほとんどをサポートしています。これにより、Cloudianでは、Amazon Web Servicesが提供するS3 SDK(システム開発キット)をそのまま使うことができ、開発者の負担を大いに軽減します。

さらに、Cloudianはハイブリッドクラウドに対応した唯一のストレージ基盤です。Cloudianによるオンプレミスのクラウドと、Amazon S3のパブリッククラウドを、あたかも単一のクラウドのように融合し、2者の間で自動的にデータを階層化することができます。これらの高度な機能一式とともに、Cloudianは、オンプレミスとハイブリッドクラウドを実現するために、バグのためのバグ(bug for bug)までS3に適合するとしています。

さいごに

オープンなハイブリッドクラウド展開を探したり、S3とあなたのプライベートクラウド間でデータ移行をする時、あなたのストレージ基盤が唱える互換性のレベルと、現実の互換性の違いを見ぬくことは、とても重要です。S3は今後も広く使われていくでしょう。これを読んでいただいているということは、単独かハイブリッドクラウドのいずれかを使っている、もしくは使う計画があるのかもしれません。いずれにせよビジネスにとって素晴らしい機会となるでしょう。ハイブリッドかプライベートクラウドのために最適のストレージ基盤を選択することは、導入のための投資を大きく節約し。数ヶ月もの時間を短縮します。互換性は重要なのです。

賢く選択しましょう。

著者:Steven Walchek
Stevenはシリコンバレー在住のストレージ業界のビジネスリーダー。過去3年間に2件の買収されたテクノロジー企業に携わっている。
本レポートは、Cloudian Blogより和訳、転載したものです。