『テラフォーマーズ』という漫画をご存知だろうか。『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載中であり、この秋にはTVアニメ化も決定している超人気作品だ。8月に発売となる単行本10巻、11月発売の11巻には、TVアニメに先がけてOVAが同梱されることが決まっており、こちらも話題を呼んでいる。

アニメ『テラフォーマーズ』より

『テラフォーマーズ』はジャンルとしてはSFバトル漫画だが、その設定・世界観は実に斬新である。火星に特殊な苔とゴキブリを送り込み、その黒さで太陽光を吸収させて、人が住める環境にする「テラフォーミング計画」から500年。この計画の中で、予期しない出来事が起こった。火星のゴキブリたちは500年間で驚異的な進化を遂げ、駆除に向かった人間に襲いかかってきたのだ。ここに、人類とゴキブリの壮絶な戦いが幕を開けたのだった――。

個性豊かなキャラクターと迫力のバトル、そして何より読者の予想を裏切り続ける熱いストーリーで人気の本作。原作者はこれがデビュー作となる若干25歳の若手原作者・貴家悠氏だ。いったい『テラフォーマーズ』はどのようにして生み出されたのか。そして、デビュー作がアニメ化という快挙に対して貴家悠氏は何を思うのか。作家としての経歴から製作秘話まで、幅広い話を聞くことができた。

貴家悠 1988年生まれ
橘賢一氏のアシスタントを経て、2011年の漫画誌『ミラクルジャンプ』(集英社)創刊に併せて連載開始した『テラフォーマーズ』で漫画家デビュー。2012年に『週刊ヤングジャンプ』で新たに『ミラクルジャンプ』版の20年後(2619年)を舞台にした後日談『TERRA FORMARS テラフォーマーズ』を連載中。本作は、2013年版『このマンガがすごい!』オトコ編で1位、『全国書店員が選んだおすすめコミック2013』で2位を獲得している

――早速ですが、まずはアニメ化について率直な感想をお聞かせください。

本当にありがたい限りですね。アニメ化はもちろん、ここまで続いたことすら想定外でした。単行本10巻、11巻にはOVAが同梱されるのですが、シーンの一つひとつをとてもよく再現していただきました。人がもがれるところなどをアニメで改めて見ると、なかなかキツイですね……(笑)。

――ここまで続いたことが想定外ということですが、連載当初はそこまで続けるつもりがなかったのでしょうか。

本当は6話で終わる予定だったんですよ。それで、5話目くらいですべての謎が明らかになるようなシナリオを書いていたんです。ところが、編集さんに「やっぱり続くから」って言われたので、火星の謎を解説していた知的キャラの首を飛ばして謎を残し、続けることになりました(笑)。

――本作は貴家先生のデビュー作ですが、そもそもどういった経緯で連載が始まったのでしょうか。

自分がもともとラグビーをやっていたこともあって、ラグビー漫画を描いて編集さんに見せたところ、「次は潜水艦か火星の話を持ってきて」って言われまして。それがきっかけでしたね。

――ということは、もともとゴキブリVS人間の話を描きたいというわけではなかったのですか?

そうなんです。特に虫に詳しいということもなかったですし、『テラフォーマーズ』を描くと決めてから図書館の昆虫コーナーに通い始めました。虫について調べるうちに面白いなと思い始めたんです。平日の図書館の小学生が多いコーナーで、ひげ面の男が昆虫図鑑を見ている見ているわけですからね。警備員さんに「何かお探しですか」って声をかけられたこともありましたよ。いやいや、探してるも何も、今昆虫の本をめっちゃ読んでるじゃないですか! って(笑)。どうも僕は、子供の頃から疑われやすいたちみたいなんですよね(笑)。

――ちょうど小学生のお話が出たので、漫画家になられた経緯をお聞かせください。

小学2年生くらいのとき、いとこが『世紀末リーダー伝たけし!』(島袋光年/集英社)をうちに置いていったんですよ。それを読んでからずっと漫画家になりたくて、でもそのためにどうしたらいいかはわからず、絵の練習もせずに過ごしていました。大学に入ってからようやく暇になったので、ラグビー漫画を描いて某少年誌に持ち込んだのですが、やんわりと全ボツになりまして……。それから『ヤングジャンプ』を見たところ、アシスタント募集って書いてあったので、まずは修行をしようと思って応募しました。それから橘先生(テラフォーマーズ作画・橘賢一氏)のアシスタントになったんです。