Haswell+インテル 8シリーズ・チップセットにおけるミドルレンジの定番CPU/GPU構成といえば、インテル Core i7-4770KとNVIDIA GeForce GTX 760の組み合わせ。この構成は現在でも現役そのもので、平均以上の高いパフォーマンスと手の届きやすい価格を両立した良い構成だ。だが"Haswell Refresh"や"Devil's Canyon"の登場と共に、定番構成にも変化が訪れようとしている。マウスコンピューターから発売された「MDV-RZ7500X」もまた、新たな定番を予感させるPCだ。

マウスコンピューターのMDV-RZ7500X

MDV-RZ7500Xのスペック上の特徴は2つ。一つは、4コア8スレッドの最新KシリーズCPU、"Devil's Canyon"ことCore i7-4790Kを搭載していること。ついに定格動作クロック4.0GHz(ターボ・ブースト機能利用時4.4GHz)を実現しており、間違いなく現状最高峰のCPU性能を発揮してくれるだろう。"Haswell Refresh"のCore i7-4790の動作クロック3.6GHz(ターボ・ブースト機能利用時4.0GHz)と比べても、それが非常に高いことがわかる。もう一つは、GPUにRadeon R9 280を搭載していることだ。前世代のRadeon HD 7950をクロックアップしたうえで、さらに「AMD PowerTune Technology with Boost」によってブーストできるようにした製品となる。今回はこのMDV-RZ7500Xについて詳しく見てみよう。

電源ユニットのボトム設置を採用した最新のミドルタワーケース

本機は、マウスコンピューターのタワー型ラインナップにおいてアッパーミドルに位置するPCだ。ケースは、市販のケースに負けない最新の設計とギミックを備えたオリジナルATXタワーケース。前面は指紋の目立たないつや消しブラックとなっており、前面パネルの左右と下部から吸気を行う。電源ユニットは中級以上のケースでは当たり前となったボトム配置。ケースの重心が安定するだけでなく、CPUやグラフィックスカードなどの熱の影響を受けにくいため、電源の寿命を延ばす効果も期待できるだろう。

つや消しブラックが採用された前面パネル。ほこりや指紋が付きにくく、さらさらとした感触だ。ロゴの左右と下部に吸気口が設けられている

最近のPCケースのトレンドをしっかりと踏まえ、電源ユニットはボトムに配置されている。電源ファンは内部を向いているが、ボトム側にも通気口がある

左側面のパネルには通気用のエアホールが設けられており、グラフィックスカードに新鮮な外部の空気を取り込める。ミドルタワー以上のサイズでは机の下に本体を設置する例が多いことを配慮し、電源ボタンはケース天面に設けられている。リセットボタンやオーディオ入出力、USB 3.0端子などはケース前面の中央部だ。またマルチカードリーダーが標準搭載されており、別途カードリーダーを用意する必要がない。なお、前面パネルはBTOカスタマイズによってスチールメッシュパネル(2,900円・税別)に変更することも可能。12cmフロントケースファン(1,400円・税別)も合わせて追加すれば、よりケース内のエアフローを向上させることができるため、グラフィックスカードを酷使する場合は検討したい。

サイドパネルの拡張スロット側面には通気口を備える。ケース外のフレッシュな空気を直接グラフィックスカードに供給可能だ

電源ボタンはほかのインタフェースやボタンとは別に、前面パネルの天面に取り付けられている。机の下にPCケースを置いた場合でもON/OFFしやすい

リセットボタンや前面端子は前面パネル中央に配置。マルチカードリーダーが標準で利用できる。5インチベイとの隙間にはアクセスランプを装備

BTOカスタマイズにて、前面パネルをスチールメッシュパネルに変更することも可能。エアフローを重視するならこちらを選択しよう

右側面のパネルを開けると、CPUの裏側にCPUクーラーの脱着作業に役立つメンテナンスホールが開けられているのが確認できる。BTO PCでCPUクーラーを自分で交換する人は少ないかもしれないが、いざというときの作業がしやすく大変ありがたい。さらにストレージ用のゲージには、脱着式のワンタッチHDDホルダを採用。工具などを利用することなくHDDの入れ替えや追加が行える。ケースは長く使用することが多いだけに、最新のトレンドをしっかり押さえた製品を採用している点は、ユーザーフレンドリーな製品といえそうだ。

最近の市販PCケース同様、マザーボードベースのCPUの裏側に当たる部分がくり抜かれており、CPUクーラーの着脱を簡単に行えるようになっている

3.5インチベイのうち4つは脱着式のHDDホルダに対応しており、追加や換装が容易に行える。本機ではHDDが1台取り付け済み

続いて内部を見ていこう。左側面のパネルを開けるとまず目に入るのが、マザーボードより長いグラフィックスカード。太いヒートパイプがGPUの発熱を予感させるとともに、GPUクーラーの性能の高さを窺わせる。マザーボードにはMSI製のZ97-S01を採用。マウスコンピューターのWebページでは確認できない型番だが、拡張スロットや各種コンポーネントの配置を見る限り、Z97 GUARD-PROのOEM仕様のカスタマイズモデルではないかと思われる。使用する機会がほとんどなくなったPCIを、潔く切り捨てた拡張スロットは、最新の環境を構築したい人にはうれしい仕様だろう。

また、インテル 9シリーズ・チップセットで新たに採用された、M.2スロットが搭載されているのもポイント。最近はSSDの性能向上に伴い、SATA 3.0の6Gbpsという転送速度がボトルネックとなってきているが、M.2スロットであればPCI Expressにストレージを接続することで10Gbpsを実現できる。M.2対応製品はまだ少ないが、マウスコンピューターでは早速BTOメニューにPLEXTOR製のSSD「M6e」シリーズを用意。SATA 3.0では実現できない超速ストレージをいち早く導入できる。

構成に合わせてケーブル類が束ねられた、ケース内の様子。マザーボードの横幅より長いグラフィックスカードが非常に目立つ

マザーボードはZ97 Expressを採用したMSI製のZ97-S01。PCIスロットがないため、最新のデバイスを数多く搭載できるだろう

CPUと拡張スロットの間には、M.2スロットが確認できる。SATA 3.0の6Gbpsを超える、10Gbpsでのデータアクセスが可能な最新のコネクタだ

BTOカスタマイズでは、早速PLEXTOR製のSSD「M6e」シリーズが選択可能となっている。予算が許すなら、ぜひその速度を体験してみてほしい

高品質パーツによって消費電力を抑えつつ安定した環境を実現

バックパネルには、USB 2.0×2、USB 3.0×4、PS/2ポート、ギガビットLAN、HDオーディオといった端子が並ぶ。映像出力用の端子もDVI-D、VGA、DisplayPortと豊富だが、グラフィックスカードを装備しておりこれらは使用しないため、プラスチック製のカバーでフタがされている。12cmファンの下には水冷用ホールも確認でき、知識のあるユーザーならさまざまな活用が考えられるだろう。グラフィックスカードの映像出力端子は、デュアルリンクDVI-I、HDMI1.4a、mini DisplayPort×2という構成で、4Kなどの高解像度やマルチディスプレイ環境にも対応できる。

電源ユニットには、数々のPCメーカーやパーツメーカーへOEM供給を行っているAcBelの定格出力700W製品を採用。"80PLUS BRONZE"認定製品なので、消費電力の軽減も期待できそうだ。メモリは、ADATA製のDDR3L-1600、8GB×2、計16GBを標準搭載。容量不足で困ることはないだろう。HDDはWestern Digitalの1TB製品を採用している。本機の速度的なボトルネックになっているのが、このHDDだろう。決して性能的に劣るものではなく、Windows 8.1を採用しているためOSの起動速度も十分早いのだが、やはりSSDと比べてしまうと体感的にもベンチマーク的にも見劣りがち。予算が許すなら、BTOカスタマイズにてSSDの追加を考えたい。

バックパネルの様子。USB 3.0やHDオーディオ端子などが並んでいる。グラフィックスカードの映像出力端子が豊富なので、さまざまなディスプレイ環境が構築できそうだ

電源は定格700Wの"80PLUS BRONZE"認定製品。数多くのメーカーにOEMとして電源ユニットを供給している、AcBelの製品が採用されている

ADATA製のメモリ16GBが搭載されている。DDR3Lを採用しており、動作電圧は1.35Vと低め。交換も可能だが、16GBあれば容量不足に陥ることは当分ないだろう

標準構成でのストレージは1TBのHDDが1台。ほかのパーツが高速なだけに、ストレージのみ若干物足りない印象を受ける。可能であればBTOカスタマイズでSSDの追加を検討しよう

9シリーズ・マザーボードにCore i7-4790K、M.2スロットなど、最新のデバイスをもれなく採用したMDV-RZ7500X。そしてそれらを収めるオリジナルケースも、自作市場のトレンドに乗っ取ったギミックを備えており抜かりがない。次ページでは、AMD Radeon R9 280を搭載したグラフィックスカードを確認しつつ、ベンチマークテストでその実力を探ろう。

※ここで紹介した各パーツは、今回試用した機種のものです。出荷時にメーカー、型番などが変わる可能性もあります。ご了承ください。