iPhone・iPad向けのOS、iOS 8への進化の中で、いくつかのポリシーの変更ともとれる機能追加が見られる。その中で最も象徴的なのが「iCloud Drive」だ。この機能では、iOSがこれまで明示を避けてきた"パソコン的なファイルの存在"を認めると同時に、「より分かりやすいクラウド活用」の道を切り開くことになる。

iCloud Driveで何が起きるのか、使い勝手にどんな変化がもたらされるのか、考えていこう。

2014年6月に開催された開発者イベントWWDC14のOS X Yosemiteの新機能のパートで発表されたiCloud Drive

パソコンの常識をひきずらないiOS

iOSはそれまでのパソコンの常識をいかに引きずらないか、という考えが念頭にあった。

例えば電源が入りっぱなしであるため「起動」という概念がない。またハードディスクやフロッピーディスクなど「ディスク」という考え方も必要なく、アプリの追加はデータ通信やWi-Fiを通じてApp Storeからダウンロードすれば良い。これと同じように、パソコンで分かりにくい概念であるフォルダとファイルの構造も、排除されてきた。

アプリで作成したデータは、フロッピーディスクのアイコンで表現される「保存」ボタンを押さなくても、自動的に保存され続ける。またファイルの保存先という考え方はなく、アプリの中に格納されるか、クラウドにアップロードされる。その文書を作ったアプリで、再び開いて編集すれば良い。

概念として理解しなければならないフォルダやファイルを排除したiOSの取り組みは成功した。しかしiCloud Driveでは、iOS上にフォルダやファイルを明示するようになった。この変化には、より深くiOSを活用したい成熟したユーザーやビジネスユーザーの存在がありそうだ。

また一般の人にも、ファイルをパソコンからiPhoneに移したい、iPhoneのファイルをパソコンに取り込みたい、というちょっとしたニーズを叶える手段を提供することになる。今まではパソコンとiPhoneを直接ケーブルでつないでiTunesを活用したり、ファイルダウンロードのアプリを利用する必要があり、決して便利とは言えなかった。こうした追加のアプリなしにファイルをクラウドを介してやりとりできるようにしたのは、クラウドが浸透してきたからこその進化と言える。