沖縄の海は本当にきれいだ。今回のダイビングとは別の日、別の場所で撮った写真ですが…

「沖縄に行きませんか?」(担当A)
「は? 何しに?」(筆者)
「取材ですよ、取材」(担当A)

決して沖縄料理や青い海・空に釣られたわけではない。山形カシオが手がけるダイビング向け小型水中トランシーバー「ロゴシーズ」を持って、沖縄の海でダイビングと水中会話を体験してきた。以前にもロゴシーズを体験させてもらっているが、そのときは深さ5mの実験用プールだったので、ロゴシーズが真価を発揮する「海中」に潜るのは今回が初めて。ロゴシーズ体験記、第二弾だ。

ロゴシーズを簡単に紹介すると、ダイビング装備のレギュレーターをくわえたまま、水中で会話ができる小型のトランシーバー。防水性能は水深55m(アドヴァンスドモデル)、潜水40mまでのレジャーダイビング向けだ。音声の伝達には超音波を用い、自分が話した声と受信した相手の声は、骨伝導を使ってロゴシーズのマイクとスピーカー(人間の耳)に伝える。透明度が高く静かな海中なら、50m~100mも音声が届く。電源は内蔵バッテリで、動作時間は最大約3時間だ。

山形カシオの水中トランシーバー「Logosease」(ロゴシーズ)。写真左と写真中央は、多機能なアドヴァンスドモデルの「LGS-RG004」、写真右は通信に特化したベーシックモデル「LGS-RG005BA」(2個セット)。なお、ベーシックモデルの防水性能は、最大深度42mとなる

発売から何度かのファームウェアアップデートを行い、会話を録音する機能や、音声によって送信モードへ切り替えるハンズフリー機能などが追加された(無音状態が3秒間続くと自動で受信モードになる)。ロゴシーズはトランシーバーなので、相手の声を聞く「受信」と自分が話す「送信」は、必ずどちらか一方の状態だ。電話のような双方向の会話はできない。

若干あいにくの空模様でしたが海の中はきれい

さて、ロゴシーズと一緒に潜ったのは、宜野湾トロピカルビーチの近く。指導してくれたのは、ダイビングスクール マレア沖縄のインストラクター、坪根さんと小松さんだ。山形カシオでロゴシーズを担当する芳賀さんも、一緒に潜ってくれた。かつてプールに潜ったことがあるとはいえ、なにせ1年前の話で今回はそれ以来。ダイビングスーツを着たり装備を身に付けたり、ほとんど坪根さんにやってもらった。

宜野湾トロピカルビーチ

ダイビングスクール マレア沖縄のインストラクター、坪根さん(左)と小松さん(右)

ロゴシーズは、水中マスクのストラップに引っかけるように取り付ける。片手で握れるくらい小型で(本体サイズはW89×D41×H44.8mm)、しかも軽い(107g)。ロゴシーズ本体のフックが水中マスクのストラップをしっかりつかんで固定し、水中マスクも顔と頭の周りにフィットするので、ダイビング中にロゴシーズが外れたり、位置がズレたりすることはない。ロゴシーズのマイクとスピーカーは骨伝導なので、耳たぶの少し前方の「骨」に当たるところへ位置を調整する。

ロゴシーズを水中マスクに取り付ける

水中マスクを装着すると、こんな感じ。この時点では元気一杯、意気揚々だったが…

準備できた

砂浜から徐々に海へ入っていき、まずは足が着くところで呼吸の練習。一度やってるし楽勝だ。ところが、思ったより速いペースで沖へ向かうと、余裕も爪の先ほどの自信も消え失せる。海の中は波や潮の流れがあって、フィン(足首に付けるヒレ)もうまく動かせず、姿勢が崩れそうになるとパニック寸前だ。正直、苦しくないように呼吸するだけで精一杯…。

動けない筆者を、坪根さんと小松さんがゆっくりフォローしてくれる。海中の移動は、ほとんど引っ張ってもらった

どれくらいの時間がたっただろう。

不思議なもので、呼吸に慣れてくると周りを見渡すゆとりが生まれる。ヒトデやサンゴ、魚を間近に見て感激していると(もちろん「生」で見るのは初めて)、右耳のロゴシーズから声が聞こえてきた。「上手になりましたね~」、小松さんだ。続けて芳賀さんも魚を指さしながら、魚の名前を教えてくれる。本来ならここで、筆者のロゴシーズを送信モードに切り替えて何か返答するところだが、まだそこまでの余裕はない。

そこで、いったん海底で止まって、ロゴシーズでの会話を練習。坪根さん、小松さん、芳賀さんは慣れたもので、話し声がはっきりと筆者の耳に伝わってくる。静かなプールと違って海の中には何かしらの雑音があり、レギュレーターで呼吸して空気が出て行くときの「ゴポゴポ」という音もかなりのノイズだ。しかしそんな中でも、ロゴシーズから皆さんの声がはっきり聞こえる。

ロゴシーズ練習用の会話集で読み合わせ

筆者も自分のロゴシーズを送信モードに切り替え、カタコトの会話を交わす。ロゴシーズを指先で軽く叩く(タッピング)と、「ピ・ボッ」と音がして受信モードから送信モードに切り替わる。または、受信モードのときに「イー」などと発音することで、タッピングしなくても送信モードへ切り替えることが可能だ。自分が話し終わったら、「どうぞ」と言って再びタッピングすると、今度は「ピ・ボボボッ」の音とともに、受信モードに戻る(タッピングしなくても無音状態が3秒間続くと自動で受信モードになる)。

ロゴシーズは、上部のLEDで送信モードか受信モードかが分かる

レギュレーターをくわえたまま発音するのはけっこう難しいのだが、ここは前回の経験が役に立った。口の中で舌を大きく動かし、一文字ずつゆっくりはっきり話すイメージだ。唇と口を大きく動かすとより明瞭になるが、水をたくさん食べてしまうこともあるので、唇と口の動きは最小限がいい。また、ロゴシーズは右側に装着するため(右耳)、話すときに首を少し右側に傾けると、レギュレーターの空気が左上に抜けてノイズが緩和される。

そんなこんなで、初の海中ダイビングは終了。時間にして40分程度だったが、沖縄のきれいな海中と生き物を見られたのは素敵な体験だった。ロゴシーズのおかげで海中会話もでき、やっぱり言葉でコミュニケーションが取れるのってすばらしい。ダイビングを趣味にするならハンドシグナルは必修だろうが、それを補助する意味でも、ロゴシーズはダイビング装備としての存在感を高めていきそうだ。一方で、体験ダイビングや初心者にこそ、あると心強いとも感じた。ほんの一言二言でも、海中で自分の意思を伝えたり、インストラクターの指示が聞こえてくると安心感が違うのだ。

真っ青な魚の小集団が目前に。触れそうだがさすがに無理

これはなんという魚でしょう?(答えはクマノミです)

ダイビングのインストラクターから見て、ロゴシーズってどうですか?

海から上がったあと、マレア沖縄の坪根さんと小松さんに、改めてロゴシーズについて聞いてみた。

坪根さん

小松さん

ダイビングのインストラクターから見ても、「海中で声のコミュニケーションができるのは楽しい」そうだ。「ちょっと呼びかけるだけでもおもしろいし、みんなでしゃべれるようになったらもっと楽しくなる」(坪根さん)。

「私はダイビング中、よく1人でしゃべってるんです。『うわー』とか『きれいー』とか『ウミウシー』とか(笑)。それがロゴシーズで周りの仲間に伝われば、いろんなことをみんなで楽しめますね」(小松さん)。

ただ、いきなり使いこなすのは難しいとも。これは筆者も痛感している。例えば、ダイビングのライセンスを取得するには、始めにやるべきことがたくさんあり、体験ダイビングだと今回の筆者のように「潜るだけ」でテンパってしまいがち。ダイビングスクールのマレア沖縄では、最初は潜ることに専念し、慣れたところで海中でのいろいろな遊び方を伝えていくとのこと。夜のダイビングや、水中ライトを持って海中の洞窟を泳いだりと、すごく楽しそうだ。「次はもっと深い場所、次は洞窟、次は会話みたいに、海の中でできることが増えていくと本当に楽しいですよ」(坪根さん)。

ダイビングスクール マレア沖縄の外観(写真左)、店内(写真右)。ご協力いただき本当にありがとうございました

ダイビングというとハードルが高い印象があるかもしれないが、近年はだいぶ始めやすくなった。日本近海には潜れる場所が多いし、飛行機の運賃が安くなって発着便が増えたことで、沖縄本島へのアクセスも改善されている。条件しだいだが、金曜の夜に沖縄へ行き、土曜にダイビング、日曜に帰宅というスケジュールも不可能ではない。まずは体験ダイビングから、気軽に始めてみてはいかがだろうか。