ANAは8月4日、日本で初めて受領したボーイング787-9型機で世界初の旅客フライトを実施。"次世代の飛行機で次世代を担う子供たちの夢をのせて"という想いで企画された同フライトには、キャロライン・ケネディ 駐日米国大使等に見送られながら、日米の子供たち72人が搭乗した。

前が787-9型機、後ろが787-8型機。787-9型機の方が全長が6.1m長く、全体的にバランスのいい印象を受ける

大きく積んで燃費減も可能な機体

「競合他社との格差を埋める徹底管理を」と語るANA会長の伊東信一郎氏

ANAは世界最大のボーイング787発注エアラインであり、787-8型機を36機(2011年より導入、すでに28機を保有)し、787-9型機を44機、合計80機を発注している。787-9型機に関しては国内線仕様の初号機を含めて年内に3機を受領予定、また、国際線仕様の787-9型機も今年度末に受領を予定している。1万5,400kmもの航続距離を持つ787-9型機は今後、国内の幹線ルート、ならびに国際線長距離ルートでの活躍が目されており、8月7日からは羽田-福岡/伊丹/松山線に投入される。

787-9型機は787-8型機の胴体を6.1m延長したモデル(787-8型機は全長56.7m、787-9型機は全長62.8m)で、787-8型機の約1.2倍の座席と貨物を搭載できる(座席は国内線仕様機材での比較、貨物は搭載可能重量での比較)。国内線仕様で比べると、787-9型機は787-8型機より60席多い395席仕様となる。なお現在、ボーイング社はさらに胴体を延長させた787-10型機を製造している。

また787-9型機は、787-8型機よりもさらに高い23%の燃費性能を有している(767-300ER対比)。現在、ANAが予定している787-8型機・787-9型機の合計80機を導入すると、年間の燃費削減効果は羽田-フランクフルト間約1,400往復にも値する。原油価格が世界的に高騰しているいま、燃費性能の改良によるメリットは大きい。「(ANAと)競合他社との格差は依然として大きいものがある。コストカットも含めて、徹底管理が必要」というANA会長の伊東信一郎氏の想いに応えるひとつの役目を、787-9型機が担っている。

8月7日からANAが787-9型機を投入する羽田-福岡線といえば、5月から運航開始となった「JAL SKY NEXT」のJALと、6月から運航された「全席グリーンシート」のスカイマークがある。JAL普通席の座席配列は3-4-3だが、シートピッチは変えずに(31インチ(約78.7cm))ひざ周りのスペースを現行座席から最大約5cm拡大した快適空間を確保している。また、スカイマークの座席配列は2-3-2で、シートピッチが38インチ(約96.5cm)、幅が31インチ(約49cm)という、JALの「クラスJ」とほぼ同じ広さだ。

その中で、座席配列3-3-3のANAの787-9型機普通席はというと、2社に比べてやや窮屈な印象を受ける。利用者にはまず、最大のメリットである"世界初の787-9型機での運航"という新型機投入効果を狙うことになりそうだ。

787の壁面は色とりどりのLEDをきれいに反映できるよう、白の無地が基本となっている

国内線仕様の787-9型機には、プレミアムクラス(写真左)を18席、普通席を377席設置する

787-8型機同様、ボタン操作で透明度を5段階調整できる電気シェード(日よけ)

ギャレー

ラバトリー

日米の子供たち72人が世界初のフライトへ

そんなANAの787-9型機の初号機には、「TOMODACHI(トモダチ)」というロゴをデザイン。これは、ANAが2012年にスポンサー契約を結んだ日米友好関係強化のための官民パートナーシップ「TOMODACHIイニシアチブ」への支援の一環であり、同様のロゴを施した機体は現在、米国内でも運航されている。

この初号機で実施された旅客フライトは、日本と米国の小学生ら72名を含む招待客171人を乗せ、羽田から富士山、京都、宮津、琵琶湖、名古屋、東京ディズニーランド上空をめぐる約90分の遊覧フライト。搭乗前には伊東 ANA会長のほか、ケネディ 駐日米国大使とジョージ・マフェオ ボーイングジャパン社長も駆けつけ、ケネディ 駐日米国大使は787-9型機に対して、「両国の深く永遠に続く絆をつくる上で、日米連携のシンボルでもある」とコメントした。

「TOMODACHI(トモダチ)」と記されたANAの787-9型機初号機のフライトに、キャロライン・ケネディ 駐日米国大使も駆けつけた

当日は台風の影響もあり、遊覧フライトのメインでもあった富士山へのアプローチは、厚い雲によって阻まれてしまった。しかし子供たちは、「これ、最新の飛行機なんだよね? 飛び立つ時はちょっとドキドキしたけど、明かり(LEDの機内照明)もいろいろひかってきれいだし、中も広くてかっこいい!」などと世界初の体験を楽しむことができたようだ。また、機内では今冬にも投入される新制服で記念撮影も行われ、CAに着せてもらう子供たちのうれしそうな顔が印象的だった。

乗客には787-9型機の搭乗証明書がプレゼントされた

機内では、今回のフライトのために作られた787-9型機クッキーが振舞われた

記念撮影用の新制服に袖を通す子供たち。CAとの撮影もうれしそう

往路では厚い雲に遮られて富士山を見ることができなかったが、復路では遠方に富士山を望むことができた