【レポート】

NEC製PCのスピーカーとDSP技術はひとつの「楽器」だった――ヤマハ技術者に訊く

1 NECとヤマハのコラボの成果を「FR-Port」に見る

海上忍  [2014/08/04]
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「よい音をユーザに提供したい」という共通の思いのもと、ヤマハとNECパーソナルコンピュータ(NECPC:当時NEC)のPC内蔵スピーカーを巡る協業がスタートしたのは2009年のこと。一種の付加価値戦略であり、サブウーファー付き2.1chスピーカーを搭載した「VALUESTAR W」を皮切りに、毎年コンスタントに「sound by YAMAHA」ロゴを付したモデルを送り出している。

今回、静岡県磐田市にあるヤマハ豊岡工場を訪ね、スピーカーおよびDSP開発担当技術者を取材。「sound by YAMAHA」の秘密に迫った。

NECPCに搭載されたスピーカーの秘密に迫るべく、静岡県磐田市にあるヤマハ豊岡工場を訪ねた

NECとヤマハ、コラボの成果を「FR-Port」に見る

「よい音をユーザに提供したい」――話は単純なようで単純ではない。前提として、デスクトップ/ノートを問わず昨今のPCに「薄さの追求」という強いトレンドがあるからだ。

当然、全体を設計する側のNECPCとしてはスピーカーを含め徹底的に薄くしたいが、スピーカーは薄くすると音が変わる。変わるどころか、空気を振動させることで音を発するスピーカーの性質上、薄い(エンクロージャーの容積が少ない)ことは特に低音域の再生において不利に働く。薄く/小さくしたいが音にこだわりたい、その二律背反する命題に取り組むことが、両社の協同関係には前提としてある。

音づくりは、いまも試行錯誤が続く。PC用スピーカーにはエンクロージャの薄さ/小ささが要求されるため、普通に設計するとどうしても低音域の量感が不足してしまうが、その点を解決しないことには"高音質"をうたえない。

ヤマハでスピーカーの設計を担当する新井 明氏は、基本的な考え方として「エンクロージャ容量に厳しい制限があるPC用スピーカーの場合、密閉型や開放型では豊かな低音を出すことが難しい。そこで注目したのが捨ててしまうエネルギーを活用することで低音域を強化する『バスレフ型』だ」と語る。

スピーカー高音質技術の解説にあたったNECPCの石井宏幸氏、ヤマハの石田厚司氏と新井明氏(左から)

「sound by YAMAHA」を名乗る初代VALUESTAR Wには、1枚板にU字型の切り込みを入れた「スウィングラジエータ」を採用、パッシブラジエータ(振動板だけのスピーカーユニット、低音を増強する目的で使用される)としての基本構造を薄いエンクロージャで効率的に実現した。これが「SR-Bass」で、3、4センチ径のユニットとは思えないほどの豊かな低音を聞かせてくれる。

2009年モデルのVALUESTAR Wには、1枚板にU字型の切り込みを入れた「スウィングラジエータ」を使った「SR-Bass」が採用されていた

しかし、VALUESTAR N/SとLavie Lの現行モデルには、それと異なるポート方式のエンクロージャが採用されている。「ポート方式では排出される空気の量が大きく、風切り音が発生する問題があった。その後開発を進めたところ、ポート方式でも風切り音を防ぐことが可能になった」(新井氏)、それが「FR-Port」だ。

NECPCの2014年夏モデル「VALUESTAR N」。FR-Port採用の薄型スピーカーユニットを左右に2基配置している

NECPCの2014年夏モデル「LaVie L」。VALUESTAR N同様、音質に対する証である「sound by YAMAHA」のロゴが光る

FR-Portの特徴は「無風」にある。一般的なポート方式を採用したエンクロージャの場合、スピーカーユニットにより生じた空気の振動は排出口付近で空気流を乱し音を濁らせるが、FR-Portではポート中心部空気が振動するため、空気流に乱れは生じない。FR-Port搭載/非搭載の同じエンクロージャで音を鳴らし、開口部付近に置いた羽毛の動きを見るデモでは、FR-Port非搭載機では羽毛が音にあわせ動くところ、FR-Port搭載機では時折かすかに揺れる程度だった。

一般的なポート方式を採用したエンクロージャの場合、スピーカーユニットにより生じた空気の振動は排出口付近で空気流に乱れを生じ音を濁らせるが、FR-Portではポート中心部空気が振動するため、空気流の乱れは生じない

FR-Portの新旧試作品。当初開口部はスピーカーユニット(ウーファー)から離れた位置に設けられていたが、製品では近づけられ音の自然さが改善されているという

排出口付近に羽毛を置き、一般的なポート型(左)とFR-Port(右)の風量の違いをテスト。音量を上げてもFR-Port側の羽毛は時折かすかに揺れる程度だった

風量の減少は、確実に「音の違い」として現れる。空気流が発生しないため、ポート開口部をパンチングメタルで塞いでも音の変化を抑えられるのだ。空気流を気にせずポート形状を設計できるので終端を90度曲げてもよく、そうすることでスピーカーユニット付近に開口部を配置することもできる。「ユニットにポート開口部を近づけることで音像がはっきり定位し、音場の奥行きも正確に表現できるようになった」(新井氏)というメリットがあり、後述するAudioEngineの特性を生かす素地としても見逃せない。

VALUESTAR Nに搭載されたエンクロージャの内部。磁性流体採用のフルレンジとウーハーは分離されており、フルレンジ側は密閉型、ウーハー側はFR-Portを利用したバスレフ型と構造が異なる

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インデックス

目次
(1) NECとヤマハのコラボの成果を「FR-Port」に見る
(2) "楽器屋"ヤマハの本領発揮、DSP技術「AudioEngine」
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