【レポート】

富士山山頂でもYouTubeが見られる時代 - 携帯キャリアのLTE電波対策に迫る

1 富士山の登山道対策

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携帯電話がいつでもどこでも通信できて当たり前と思う人は多いだろう。海外では都心部近くでも平気で繋がらないエリアがある中で、地下鉄や地下街、山間部でも容易に繋がるエリア構築は、ひとえに国内携帯キャリアの努力に他ならない。

7月頭に山開きが行なわれた富士山でも、各キャリアがそれぞれ携帯環境の整備を行なっている。7月4日にKDDIが、10日にソフトバンクNTTドコモが富士山頂上におけるLTEサービスの提供を開始した。

富士山山頂で、NTTドコモが受信時最大75Mbps、ソフトバンクモバイルが受信時最大112.5Mbpsの速度環境を提供する中で、KDDIは受信時最大150Mbpsサービスを提供している。「ある程度の速度が出れば良いじゃないか」という印象も受けるが、最大速度とは別の理由でキャリアは整備を行なっているようだ。今回、富士山の登山とともに、KDDI建設本部 エリア設備計画部 システム設計グループ 課長補佐の山梨 幹人氏にエリア構築の裏話をうかがった。

成人男性1人分の重さのアンテナ

富士山登山道のエリア構築は、各キャリア共におおむね同じようで、富士山のふもとから頂上に向けて、各登山道に沿って電波を吹き上げる構造だ(そのため、各登山口・登山道では年間を通して通信可能エリアとなっている)。通常の基地局は周囲2~3kmのエリアカバー範囲となるが、富士山のふもとは「富士箱根伊豆国立公園」であるため、基地局設置に制限がある。

そこで、KDDIでは頂上まで約7km(場所によっては10km)の位置にある施設に富士山対策となる専用の"高利得アンテナ"を設置した。通常の基地局の数倍となるカバー距離を稼ぐためにアンテナを巨大化しており、重量は一般的なアンテナ3本分の約70kgに達する。

「当初、ここ以外にアンテナ設置を検討していた場所があったが、建物の上の基地局のため、強度不足になることがわかってこの場所にアンテナを設置した」(山梨氏)

山梨氏によると、距離にして2~3倍のエリアカバー距離だが、その電波出力は4倍にもなるという。

「普通のエリアではこれほどの出力は要らない。理由は富士山が"独立峰"だから。周囲に高い山がないため、離れた基地局、例えば30km先の基地局からの電波が飛んでくることがある。こうした電波の干渉を押さえるために、高い出力のアンテナを設置しており、山頂まで一気に吹き上げている」(山梨氏)

遠いところからの電波が届くのであれば、わざわざ専用の基地局を用意しなくても良いのではないかと素人考えでは思ってしまうところだが、周囲の基地局から安定して富士山へ電波を飛ばそうとすると、それぞれの基地局のチューニングが必要になり、通常のエリア調整にプラスアルファする形でエリア構築の在り方を見直さなければならなくなる。そのため、強力なアンテナを用意しているようだ。

巨大アンテナは800MHz帯の電波を飛ばすアンテナで、隣にある小さい四角のアンテナが2GHz帯の電波を飛ばすアンテナだ。KDDIのLTE端末は、2GHz帯、あるいは両方の周波数帯をサポートしているため、端末に依存することなく電波をキャッチすることができる。また、この双方の電波が掴めることで見えてくるのがLTE-Advanced技術「キャリアアグリゲーション」だ。

これが富士山の山道をめがけて吹き上げている基地局。斜めになっている縦長のアンテナが800MHz帯の"高利得アンテナ"で、左に見える小さいアンテナが2GHz帯のアンテナだ

異なる周波数帯域の電波を利用して高速化を図る技術だが、この技術導入についてはKDDIも慎重な様子。

「キャリアアグリゲーションによる高速化は検討していますが、富士山については、2GHz帯で連続20M幅の帯域を確保できる。これらの状況を鑑みた上で、現時点では、対応端末が多い2GHz帯での高速化(150Mbps化)を選択しました」(KDDI広報部)と、現時点では10M幅(下り最大75Mbps)で提供しているものの、8月中を目処に山道への150Mbpsサービス提供を開始するようだ。

景観対策で茶色に塗られている基地局

しかしながら、この強力な吹き上げ局をもってしても、山道の一部や山小屋の中では電波がどうしても弱くなってしまう。そこで、山小屋内にはオフィスビルなどに提供されているレピーターと呼ばれる電波の増幅機器や、中継局を30弱設置することで、弱くなってしまう電波の補完を行なっている。

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インデックス

目次
(1) 富士山の登山道対策
(2) 山頂で高速通信サービスを提供する意義


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