ソニーの「α7S」は、αシリーズでは3機種目となるフルサイズ対応のミラーレスカメラだ。注目は、画素数を有効1,220万画素に抑え、1画素あたりの集光率を高めた新開発フルサイズセンサーを搭載したこと。これによって低ノイズの高感度画質と幅広いダイナミックレンジを実現している。その静止画性能を中心にした、製品レビューをお伝えしよう。

「α7S」

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2013年11月、ソニーはフルサイズセンサー搭載のミラーレスカメラ「α7」「α7R」を発売した。両モデルとも、それまでは大きくて重いことがネックだったフルサイズ対応のレンズ交換式カメラの中で、画期的ともいえる小型軽量ボディを実現し、発売から現在まで写真愛好家層を中心に人気を得ている。

製品としての位置づけは、有効2,430万画素センサーを採用したα7がトータルバランス重視のスタンダードモデル(実勢価格14万円前後)で、ローパスレス仕様の有効3,640画素センサーを採用したα7Rが解像感優先の高画素モデル(実勢価格21万円前後)となる。

それに対して今回登場した第3のモデルであるα7Sは、高感度とダイナミックレンジ、および動画性能を重視した製品だ。実勢価格は3台の中でもっとも高く24万円前後(2014年8月時点)。基本的なデザインと操作系を踏襲しつつ、電子シャッターによるサイレント撮影などの新機能も搭載している。

まずは、α7Sのいちばんのウリである高感度性能を試すために、薄暗い水族館内をスナップしてみた。下の2枚は、撮影モードをマニュアルにした上で、被写体ブレを抑えるためにシャッター速度を1/200秒、感度をオートにして写したもの。1枚目はISO1600に、2枚目はISO2000にそれぞれ自動設定されたが、画質に破綻はなく、ディテールまできちんと描写できている。

マニュアル(F2 1/200秒) 露出補正:±0 ISO1600 WB:オート 焦点距離:55mm レンズ:「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」(原寸大画像を見る)

マニュアル(F2 1/200秒) 露出補正:±0 ISO2000 WB:オート 焦点距離:55mm レンズ:「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」(原寸大画像を見る)

次の3枚は、被写界深度を深くするために、絞りをF5.6まで絞り込んで撮影したもの。そのためオートに設定した感度はさらに高まり、1枚目はISO2500、2枚目はISO3200、3枚目はISO5000となった。いずれもPCのディスプレイ上で等倍表示にするとややザラつきは見られるが、汚いという印象はない。レンズの光学性能の高さと相まって、細部までくっきりと解像しているのはお見事だ。

マニュアル(F5.6 1/60秒) 露出補正:±0 ISO2500 WB:オート 焦点距離:55mm レンズ:「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」(原寸大画像を見る)

マニュアル(F5.6 1/60秒) 露出補正:-1.3 ISO3200 WB:オート 焦点距離:55mm レンズ:「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」(原寸大画像を見る)

マニュアル(F5.6 1/60秒) 露出補正:+0.3 ISO5000 WB:オート 焦点距離:55mm レンズ:「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」(原寸大画像を見る)

加えて、高感度時の階調再現性のよさも見逃せない。水族館の館内は強い照明によって明るく照らされた部分と、光が当たらず暗く影になった部分との明暗差が大きく、露出設定を間違えると一般的には白とびや黒つぶれが生じやすいシーンだ。しかし今回の撮影では、どのカットもハイライトからシャドウまでの階調をきちんと再現できた。