ネスレ日本が2014年に実施する「カカオプラン インターンシップコース」では、10名ほどの学生をコートジボワールに連れて行き、現地でインターンシップを体験してもらう。7月22日、23日の2日間、兵庫県・神戸市のネスレ日本本社にてインターンシップ選考会が開催され、約2200名の中から選ばれた29名が参加した。

カカオプラン インターンシップコース公式Webサイトイメージ

カカオプラン インターンシップコースは、「グローバルな視点とリーダーシップを兼ね備えたグローバルリーダーの発掘・育成」を目的としている。学生は、約10日間にわたり、世界最大のカカオ生産地・コートジボワールでの農家視察や現地社員との対話、茨城県・ネスレ霞ヶ浦工場の見学、マーケティングプランの立案といったプログラムに従事する。これにより同社は、将来のグローバルリーダーとして必要な能力の開発・育成をサポートする考えだ。

コートジボワール行きを手にするのは誰? その選考会に潜入した

選考は、2日間にわたり、現役の若手・中堅社員と一緒にワークショップ等の課題に取り組むプログラム。参加した29名は4つのグループに分かれ、ネスレに関係するテーマのワークショップを実施し、チームごとに1つの案を発表した。2日目には、同インターンシップのメインテーマとなる「ネスレ カカオプラン(カカオプラン)」に関する「理解セッション」と、カカオプランを導入している「キットカット」を題材にしたPRプラン立案が行われた。

カカオプラン インターンシップコース選考会の様子

ネスレグループでは、「株主にとって長期的な価値を創造するためには、社会にとっても価値のあるものを創造しなくてはならない」という考え方に基づき、事業展開における基本方針として「共通価値の創造(Creating Shared Value : CSV)」を設けているほか、「持続可能性(サステナビリティ)」を全社共通のテーマとし、未来においても実現可能な事業形態を目指している。

今回のインターンシップコースで学生らは、このCSV活動の一環である「カカオプラン」とチョコレートの現状について学んでいく。その先駆けとして、選考での理解セッションが設けられており、最終課題となる「カカオプランが消費者から理解され、ネスレの商品が選ばれるためのマーケティング・PRプランの立案」に向けて、少しずつ理解を深めていく流れだ。

カカオプランとは、「良質で、高い値段での買い上げが可能なカカオの栽培により、農家がより良い収入と生活を手に入れ、カカオの生産を続けられる環境を整えること」と「環境を整えることで、ネスレにとっても、良質なカカオの入手や、美味しいチョコレート作りを未来につなげること」を目的とした、カカオ農家と同社の双方に価値を生むための取り組み。ネスレグループでは、「栄養」や「環境」などさまざまな分野のCSV活動を展開しているが、カカオプランはその中の「農業・地域開発」に属し、2009年から実施されている。

具体的な施策は、「品質に見合った価格での買い取り」や「病気に強い良質な苗木の提供」「カカオ栽培に関する知識・技術の習得に向けた勉強会の実施」「水環境や道路の整備」「学校の建設」など。これにより、カカオ農家の問題解決をサポートするほか、良質なカカオを使用したチョコレートの供給を目指す。

キットカット公式Webサイト「KITKAT BREAKTOWN」内の「ネスレ カカオプラン」説明ページ

選考でのカカオプラン理解セッションには、同社の執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長で、実際にコートジボワールを訪れた経験をもつMelanie Kohli(メラニー)氏が登壇。カカオ農家を取り巻く現状やカカオプランについての説明が英語で行われたにも関わらず、学生らは真剣な眼差しで聞き入り、「なぜカカオが対象なのか」などの疑問や意見を投げかけた。

その後学生らは、主婦もしくは大学生を訴求対象者に置いた「カカオ生産国の現状と、カカオプランが理解されたうえで、キットカットを選んで購入してもらうためのPRプラン」という課題が与えられ、1日目と同様に4つのチームに分かれて90分間のグループワークを実施した。

選考会2日目 グループワークの様子

開始当初は、SNSの活用やゆるキャラの使用など、大学生らしい面白いアイディアが次々と飛び出したが、後半に差し掛かると、「世の中に話題を生み出してから、どうメディアに取り上げてもらうのか」や「メディアに取り上げられたことで認知を拡大するのか」「この施策で誰に何が伝わるのか」「購入にまで結びつくのか」といった疑義も呈され、実ビジネスさながらの議論が展開された。

この様子に対し、同社の人事担当者は、「1日目のグループディスカッションの反省を活かそうとする姿勢が見て取れる。集団内で自分がどのような立場・視点で活躍できるのかや、タイムマネジメントなどの議論の進め方といったスキル部分が向上したことで、より深い議論が可能になったのでは」とした。

グループワークで立案されたPR施策

グループワーク後には、チームごとのプレゼンテーションと質疑応答が行われ、参加学生と先輩社員による投票のもと順位付けを実施。優秀賞を獲得したチームは、肩を組んで喜びを分かち合うなど、一丸となって取り組んだことがうかがい知れる一幕もあった。また、反省会も設けられ、「議論の進め方はどうだったのか」「プレゼンテーションや提案の内容はどうだったのか」など率直に意見を言い合う場面や、先輩社員に客観的な意見を求める場面なども見られた。

プレゼンテーションの様子

優秀賞を獲得したチームが喜びを分かち合う様子

選考終了後、学生らは2日間を振り返り、「個性が強く、レベルの高い学生ばかりで、焦ると同時に刺激にもなった」と口を揃えた。個別インタビューに応じてくれた学生によると、今回のインターンシップの応募は、就職活動の一環というより、「普段訪れる機会のないコートジボワールを体験したい」という想いが強いのだという。

インタビューを実施した生徒。彼はシンガポールで15年間生活していた経験があるという

インターンシップを企画したネスレ日本に対しては、「外資企業であること」や「食品業界の企業であること」という点で興味が湧いたとしたうえで、「選考会でのセッションや先輩社員との懇親会などを通じて、海外だけでなく日本のマーケットに対して『何ができるのか』真剣に取り組む姿勢を感じた」と振り返った。

コートジボワールに学生を連れて行く、その意味

ネスレ日本によると、カカオプランとインターンシップを組み合わせた取り組みは今回が初めてで、「3月に日本市場にて販売するキットカットにカカオプランを導入したことがキッカケになった」という。

インタビューを実施した生徒。IT分野での起業経験があり、ARなどを活用した施策を提案していた

同社のマーケティング&コミュニケーション本部 広報担当である森本正樹氏は、採用活動にCSV活動の一部を組み合わせた目的を、「未来を担う学生にカカオプランを知ってほしい」という想いや「カカオ生産国の現状を体験することで、グローバルリーダーを育成する」狙いがあるとした。

また、森本氏は、同社の代表取締役社長兼CEOである高岡浩三氏が「日本において優秀な人材を育成し、世界へ輩出する必要性を強く感じている」としたうえ、「座学ではなく実際にコートジボワールへ赴き、現地で活動する人と行動を共にすることは、他のインターンシップではない取り組みだと思う。これによって、学生に新しい視点や経験を提供し、『真のグローバルリーダー』育成へのサポートができると確信している」と説明した。

インタビューを実施した生徒。グループワークで彼女は、積極的に意見発信を行っていた

一方で、「新興国といった日本とかけ離れた環境で、学生がどんなことを学び、行動するのかを見ることで、求める人材像に近い人物を採用できるのではないかといった狙いもある」とし、学生と社会、ネスレ日本の3者にとって価値のある活動であることを示唆した。

なお、カカオプラン インターンシップへの参加者は、7月28日、29日の選考で決定し、人数は10名程度とのこと。参加する学生らは、コートジボワールへ赴き、カカオ農園の現状を実際に見て体験した先に何を思うのか。価値観や感情の変化、成長を伺えることを楽しみにしたい。