数年前まで、液晶ペンタブレットと言うと高級かつ大型サイズのデバイスという印象が強かったが、近年はコンパクトなサイズの製品が複数登場し、価格帯もグッとお手頃になっている。

液晶ペンタブレットの代表的メーカーとして知られるワコムが展開する液晶ペンタブレットの最小サイズは13.3型(現行機種)。OS搭載液晶ペンタブレット「Cintiq Companion」シリーズと、純然たる液晶ペンタブレット「Cintiq 13HD」のどちらを購入するか、迷ったことのあるクリエイターもいるのではないだろうか。

今回は、価格帯の近いAndroid搭載液晶ペンタブレット「Cintiq Companion Hybrid」と液晶ペンタブレット「Cintiq 13HD」を比較し、スペックや想定される利用シーンなどの違いをまとめて紹介していく。

「Cintiq Companion Hybrid」はAndroid4.2を搭載

「Cintiq 13HD」は一般的な液晶ペンタブレットとして最小サイズの機種

OSの有無

まず両機種の最も大きな違いとして、「OSの有無」が挙げられる。「Cintiq Companion Hybrid」はAndroid4.2を搭載。製品名の"ハイブリッド"という単語から連想される通り、単体ではAndroidタブレットとして機能し、パソコン(Windows8/7/Mac OS 10.6.8以降)に接続すると、液晶ペンタブレットとして使用することができる。一方、「Cintiq 13HD」はOSを搭載していないため、常にPCと組み合わせて使うことになる。

つまり、「Cintiq Companion Hybrid」は、液晶ペンタブレット「Cintiq 13HD」の機能を含んでいるといえる。ただ、液晶ペンタブレットはパソコンと組み合わせて使用することを前提とした機器のため、「Cintiq Companion Hybrid」をはじめ、OSを搭載した「Cintiq Companion 」シリーズが型破りな存在なのだと言える。

価格

「Cintiq Companion Hybrid」が登場してなお「Cintiq 13HD」がクリエイターの検討の俎上にのるのは、ひとえに価格面のアドバンテージが大きい。同社の液晶ペンタブレットの中でも最先端のスペックを持つ両機種だが、「Cintiq 13HD」は約10万円(10万2,651円)という比較的手頃な価格設定となっている。

一方、「Cintiq Companion Hybrid」のEntryモデルは約13万円(13万1,657円)。「Cintiq 13HD」になくて同機種にある機能としては、Androidによる独立駆動モードと内蔵SSD、内蔵カメラ、Bluetooth/Wi-Fi(Wireless 802.11 b/g/n)接続、拡張用のMicroSDスロット、USBインタフェースやヘッドホン端子などが挙げられる。液晶ペンタブレットとしてのスペックは両者ともに同一なので、約3万円の差額と機能の有無をどう考えるか、これから導入するクリエイターにとっては悩ましい問題と言える。

重量

小型の液晶ペンタレットは、出先でも使えることが最大の利点である。「Cintiq Companion Hybrid」の重量は約1.6kg(スタンド除く)で、「Cintiq 13HD」の重量は1.2㎏(スタンド除く)。これだけ見ると後者の方が軽量だが、接続するノートPCをセットで持ち歩くことを考えると、実際に液晶ペンタブレットを使用するシーンでの総重量としては「Cintiq Companion Hybrid」に軍配があがる。持ち歩く頻度や使用環境に応じて考えたい要素だ。

ワコム純正のAndroidアプリ

「Cintiq Companion Hybrid」は、出先ではラフやネームなどの作業に専念し、自宅ではPCに接続して「Photoshop」や「CLIP STUDIO PAINT」などの本格的なツールで描画するというワークフローが想定されている。それにあたり、同機種にだけ搭載されているオリジナルのAndroidアプリがふたつある。

漫画のネーム作成アプリ「Wacom Manga Canvas」

イラスト描画アプリ「Wacom Creative Canvas」

イラスト描画アプリ「Wacom Creative Canvas」はレイヤー機能を持つなど本格的な作りで、描画データをPhotoshopで編集可能なPSDファイル形式で書き出せる。一方、漫画のネーム作成に特化した個性的なアプリ「Wacom Manga Canvas」は、データを「CLIP STUDIO PAINT」に受け渡すことができる。そのため、出先で描いたラフなどを、自宅のPCと同機種を組み合わせ、PhotoshopやCLIP STUDIO PAINTで仕上げることが可能となっている。

いかがだっただろうか。OS搭載機種の「Cintiq Companion」シリーズ2機種を比較検討する記事を以前掲載したが、クリエイターの声をヒアリングしたところ、「Cintiq Companion Hybrid」と「Cintiq 13HD」を比較検討している人も少なからずいたため、今回両機種の違いをまとめてみた。実際の書き味は家電量販店に展示されている「Cintiq 13HD」で確かめつつ、上記内容を購入の際の検討材料としてみてほしい。