「うどん県」香川には、うどんにまつわる都市伝説も多い。例えば、水道の蛇口からうどんのダシ汁が出る、引越祝いはうどん、新築の家を建てたら風呂でうどんを食べるなどなど。果たしてその真相やいかに?

高松空港ではターンテーブルを巨大うどんが回って来県者を歓迎する

空港に降り立つとそこにはうどんが!

空路・高松空港へ。機内預けの手荷物を引き取るためにターンテーブルの前で待つ。回りだした。と、そこで旅客の目がテンになる。なんと、手荷物の先頭を切って直径30cmほどの大きな讃岐うどんの丼が流れてくるではないか! さすが「うどん県」香川。強烈なうどんインパクトで来訪客を出迎えてくれる。

無事、手荷物を引き取って、空港内にある「そらの駅」に立ち寄ってみる。またまた仰天のうどんインパクトで旅客はノックアウトだ。というのも、施設の一角になぜかシンクと蛇口があり、蛇口をひねるなんとうどんのダシ汁が出てくるのだ。

これがうどんのダシ汁の出る蛇口。1日紙コップ100杯分なので早いもの勝ち

水道の蛇口をひねるとダシ汁が出てくるという香川の都市伝説。その正体はこれだったのか!

「私は地元・香川の出身で若い頃に東京に出ましたが、帰省の折には宇野と高松を結ぶ宇高連絡船を利用していました。船の甲板には、連絡船うどんと呼ばれるうどん店があり、故郷の味が懐かしくて真っ先に食べに行ったものです。そんな思い出もあり、高松空港でも、うどんが帰省客や訪問客を出迎えるシーンを演出できたらと考えたのです」。

こう語るのは、うどんターンテーブル、ダシ汁蛇口の仕掛人である高松空港ビル社長の山下幸男さん。山下さんの説明によると、空港には2台のターンテーブルがあり、1台を香川特産の庵治石(あじいし)で作られたうどんの丼が回り、もう1台をこれも香川特産オリーブの木で作られた船のオブジェが回るのである。

蛇口から出るダシ汁は備え付けの紙コップでいただく決まり。ペットボトルなどの利用はできない。1日およそコップ100杯分が用意されているとのことである。「実は、蛇口からうどんも一緒に出せないかと真剣に考え、大学の研究室に相談してみたのですが、技術的に難しいということで諦めました」。山下さんは残念そうだった。

うどんを極めたドライバーがタクシーで案内

さて、空港から目的地への移動のためにバスやタクシー乗り場に出る。幸運ならば、そこでうどん絡みの交通手段に出くわすかもしれない。観光用ではあるが、香川にはうどんタクシー・うどんバスなるものが存在する。

うどんタクシーには、香川県タクシー協同組合に加盟するタクシー会社21社が運行するものと、コトバスタクシーなるタクシー会社が独自に運行しているものの2つがある。いずれもさぬきうどんに精通したドライバーがお客のリクエストに従って、あるいはおまかせのコースで、うどんの名店を案内してくれる。なお、両者とも予約が必要となっている。

そんなうどんタクシーの名物ドライバーとして名高いのが、コトバスタクシーの糸田川哲也さんだ。

この会社でうどんタクシーのドライバーに認定されるには、例えば「○○うどん店の1玉の重さは何g?」といった問題に答える筆記試験、お客とのコミュニケーション能力を測る実地試験、さらにはうどんの手打ちを習得する手打ち試験の3つをクリアしなければならない。

糸田川さんは2003年に認定試験に合格、以来10年以上の長きにわたってうどんタクシーのドライバーとして県内各地の名店に多くの観光客を案内してきた。

うどんタクシーと糸田川さん。手に持っているのがシンボルの行灯

「小さいけれどおいしいと評判のひなびた名店は、交通の便の悪い山間部などに立地していることが多い。だから、タクシーはうどん店巡りに欠かせない交通手段なんです。最近ではお客さんも詳しい知識をお持ちで、行きたい店を指定なさる方が増えています。若い方、特に女性のその傾向が強いですね」。

糸田川さんはこれまでに客を案内して200店ほどを回ったというが、香川県には800店以上のうどん専門店があるそう。「まだまだですよ、香川のうどん店は奥が深いですから」と謙遜するのだった。

「タクシーは料金的にどうも」という方には琴参バスが提供しているうどんバスがおすすめ。「食べ処、見どころ、バスの旅!! ~讃岐うどん処めぐり」と題した琴参バス運行の観光バスがあり、讃岐ならではの食と観光名所の旅が手軽に味わえる。

こちらが琴参バス運行の観光うどんバス。要予約である

うどん県公式パスポートでもっとお得に

香川にはまた「うどん県公式パスポート」なるものも存在する。「うどん県知事公認」だそうで、香川県観光協会では「うどん県への旅行には必ず携帯」と遊び心たっぷりに呼びかけている。割引クーポンやスタンプラリー、キャンペーン特典などの付いた旅の手帳で、県内の交通ターミナルや観光スポットで入手できる。

遊び心満載の「うどん県公式パスポート」

旅のついでに、うどんの手打ち体験をしたいなら琴平町の「琴平うどん道場」にどうぞ。材料費の300円だけで「レッツ楽しくうどん打ち体験」というわけで、誰でも参加できる。

300円の材料費だけでうどん打ちを体験できる「琴平うどん道場」

家を新築したらお風呂でうどん

まさにうどんづくしのうどん県。最後に「家を新築したらお風呂でうどんを食べる」という、うどん県ならではの都市伝説についても触れておこう。

香川県観光協会によれば、「初風呂うどん食え」という名の風習として今でも香川県西部を中心に残っているそうだ。新築の新しい風呂には年長者から順に入り、湯船でうどんを食べる習わしで、「中風(ちゅうぶ)せずに太く長く生きられるように」との願いが込められているとされる。

ちなみに、「引越そば」のうどん版「引っ越しうどん」も存在するとのこと。うどん県、恐るべし。

湯船でうどんを食べる「初風呂うどん食え」の風習は今も健在とのこと

●information
香川県観光協会