清潔で整ったお洒落なレストランもいいけれど、時には財布との相談抜きに、アジアンなエネルギーにあふれた屋台風な店で、安くてボリューム満点の料理を気兼ねなく食べたい! そんな時は、本物のアジアンな香りがいっぱいな東京・有楽町のガード下に行ってみよう。

有楽町ガード下のシンボル的存在「まんぷく食堂」バス停看板

初ガード下ならさくっと食べられるカレー店へ

有楽町のガード下は、周囲の銀座や日比谷といった華やかな雰囲気との差異から、ちょっと浮いた魔境的な空間のよう。昼でも薄暗く、頭上からは通過する電車の轟音と振動が降ってくる。そのため、おじさんたちの聖域で女子にとっては足を踏み入れがたいかもしれないが、実はガード下には隠れた名店が潜んでいるのだ。まずはガード下初心者向けに、長居せずにさくっと食べて引き上げられる店から紹介しよう。

初めに紹介するのは、京橋口から東京駅方向を向いてガード下に入ってすぐ左手にあるカレー専門店「ふくてい」。普通のカレーは400円、名物のステーキカレーは、カレーライスに薄切りのサーロインステーキが6枚も乗って、たったの600円という破格値である。

カレーにも肉がたっぷりと入っており、肉に飢えた人にはうってつけのカレーである。店は15席ほどのカウンター席だけで、1日中客が絶えないが、回転がよいので待つこともなく食べられる。

カレー専門店「ふくてい」

ステーキカレーがたったの600円

●information
「ふくてい」
東京都千代田区丸の内3-6-7

同じカレーでもカレーうどんなら、有楽町駅銀座口にある「慶屋」がオススメ。ガード下でもこちらは晴海通りに面しており、すぐ隣が有楽町マリオンという好立地。通行人も多く、暖簾で顔を隠してカウンター席で食べるという立ち食い感覚だが、味は本格的。多くのファンがついている。

天ぷらうどんやきつねうどんもあるが、注文の90%はカレーうどんとのこと。ご飯もついて550円とこちらもおトク感十分である。ダシの効いた深いコクがあって、一口すすると心がほっこり、傍らに白いご飯があるのも嬉しい。

5席ほどの小さな店「慶屋」

このカレーうどんにご飯が付いて550円

●information
「慶屋」
東京都千代田区有楽町2-4-11

店名の通り「まんぷく」になれる店

この「慶屋」のすぐ隣には、有楽町ガード下の名物店とも言うべき「まんぷく食堂」がある。店前の通路の壁には往年の名作映画のポスターが連なって貼られ、さらにバス停スタンドを模した「まんぷく食堂前」の看板が目を奪い、ついつい立ち止まってしまう。

この「まんぷく食堂」は、様々なシチュエーションで重宝する店だ。24時間営業なので、1日の時間帯によってその利用法はいろいろ。夜は酒場となって店内どころか通路のテラス席まで満杯のにぎわいとなるが、朝ご飯も食べられるし、昼時のランチはもちろん、他の店が休憩に入っている中途半端な時間でもおなかを満たすことができる。実に使い勝手がいいのだ。

おまけに店の雰囲気もすばらしい。ランチタイムや酒場時間を除けば、店内にはアジアの屋台のようなゆる~い空気が流れていて、とても東京の都心にいるとは思えない居心地の良さである。ちなみに、ご飯の盛られる丼は深さがあってすごいボリューム! 「まんぷく」の名に恥じないのだ。

豪快な「箱入生雲丹と刺し盛り御前」(1,590円)など和食系から、「ガーリックステーキ」(1,390円)、「スパゲッティナポリタン」(890円)など洋食系、「チーズケーキ」(390円)などデザートまでなんでもありで、その日の気分に合わせた料理が選べるのもうれしい。

夜には通路がテラス席の酒場になる「まんぷく食堂」

●information
「まんぷく食堂」
東京都千代田区有楽町2-4-1

タイ直輸入の素材で提供する料理は全品630円

「まんぷく食堂」のアジア版とでも言うべき、タイ料理の隠れた名店もある。前記した「ふくてい」のすぐ近くにある「プーケット あろいなたべた」がその店だ。

かつてテレビ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」で「きたなシュラン」の三ツ星認定を受けたことがあるように、お世辞にも奇麗とは言いがたいが、素材はタイ直輸入とかで味は保証付き。しかも、消費税増税後も全品630円というお手頃価格でもあり、夕方6時を過ぎると超満員の大盛況となる。

ちなみに、「あろいなたべた」の「あろいな」とはタイ語で「美味しい」の意味で、「たべた」は日本語の「食べた」だそうである。

タイ料理の「あろいなたべた」。全品630円と懐にやさしい

●information
「プーケット あろいなたべた」
東京都千代田区3-7-11

その他にも、立ち食い寿司から韓国料理、各種の地方料理まで、有楽町のガード下にはたくさんの名店がある。すでにこの都心の魔境はおじさんだけの独占空間でなく、おいしさに目のない若い女子や外国人たちが進出して、古くて新しいグルメスポットとして注目されているのだ。

※記事中の価格・情報は2014年5月取材時のもの。価格は税込