地上デジタル放送の視聴環境は、家庭内だけに留まらない。例えば、クルマに搭載されたカーナビ。地デジへの完全移行から3年を経過しても、依然として多くのアナログチューナーを搭載したカーナビが存在すると言われている。

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700万台から800万台規模でアナログチューナーを搭載するクルマが存在?

カーエレクトロニクス市場を俯瞰する場合、新車市場や、自動車が登録されてない段階の中古車市場、そして、実際に登録され稼働しているクルマといったいくつかの見方がある。さらに、自家用車のほか、トラックやバス、タクシーなどの商用車、あるいは軽自動車といったカテゴリー分けなど、様々な角度から見ることもできる。

だが残念ながら、どの切り口からも、地デジ化率という形で明確な数字は存在しないのが実態だ。そこで、いくつの情報を加味しながら、地デジ化率をざっと試算をしてみた。

新車に搭載されるカーナビは、すでに地デジ対応となっているのは明らかだ。ここは除外していい数字になる。2000年代後半以降に販売された新車は、ワンセグチューナー搭載を含めて、ほとんどが地デジ対応といってもいい。

一方で現在、登録され、実際に稼働しているクルマは国内に約7,000万台といわれている。そのうち、カーナビが搭載されているクルマは約45%。逆算すれば3,000万台強がカーナビ搭載車と推計できる。さらに、このうち地上デジタル放送が受信可能な状態になっているカーナビは7~8割程度に達するとみられ、2割強がアナログチューナーのままのカーナビだといえそうだ。つまり、少なくとも600万台強のカーナビが地デジ化対象として、いまでも残っている。

さらに、中古車としてまだ市場に登録されていないクルマは約200万台存在するとみられており、ここでは3~4割程度がアナログチューナーのままだと推測される。60~80万台程度が地デジ化の対象になるというわけだ。

こうしてみると、あわせて700万台から800万台規模もの地デジ化対象カーナビ(非地デジ化カーナビ)があるといえそうだ。

家庭用テレビでは、デジアナ変換サービスの終了とともに、約500万世帯で600万台程度の地デジ化対策が必要なテレビが存在するとみられるが、見方を変えれば、それを上回る規模の地デジ化対策カーナビが存在するともいえよう。

クルマに地デジ、どのくらいニーズがある?

パイオニア販売 営業統括部マーケティング部マーケティング課の紺野賢一主事

だが、カーエレクトロニクス業界では、地デジ化への取り組みが、カーナビの需要喚起につながるとは考えていないようだ。

パイオニア販売 営業統括部マーケティング部マーケティング課の紺野賢一主事は、「カーナビの購入理由としてテレビ機能をあげる購入者はそれほど多くはない。購入者アンケートによると、購入理由の10位以内にようやくテレビ機能が入るという程度」とする。

カーナビは、やはり地図機能の充実といった基本機能そのものの差別化策が、購入理由の上位を占めているというわけだ。

実際、2011年7月の地デジへの完全移行時でも、「アナログ停波時には、一時的に2.5~3倍に販売数量が伸びた時期もあった。だが、家庭用テレビのように継続的に高い需要が続いたわけではない」(パイオニア・紺野主事)と振り返る。