山頂での寒さにも耐えられる装備を

近年、登山経験が浅い人も富士登山に挑む姿をよく目にする。確かに、山小屋などの施設は充実し、登山道は整備され、誰でも登りやすくはなっている。しかし、標高3,000m以上という状況に加え、登山は変わりやすい天候を相手にしなければいけない。しっかりとした服装で臨まなければ、命に関わるトラブルにもなりかねないのだ。

地上と富士山頂は約20度の気温差がある

一般的に標高が100m高くなるごとに0.6度気温が下がると言われている。つまり、地上(1合目)が約20℃であっても、3,776mの山頂はおおよそマイナス2度。さらに、富士山は周りに風をさえぎる山もないため強風が吹くことも。低い気温に強風が吹けば、体感温度はかなり低くなる。近頃、短パンとサンダルの軽装の登山客が問題視されているが、この気温差を考えればいかに無謀なことかが分かるだろう。

変わりやすい気温へは、重ね着で対応

とは言うものの、変わりやすいのが富士山の天候。5合目では雨が降って寒いぐらいの気温だったのが、6合目まで登った瞬間、日が差し始めて急に汗がダラダラ落ちるということも珍しくない。そのため、こまめに脱ぎ着できる重ね着(レイヤリング)で体温の調節を行うと良いだろう。

一番下には速乾性の素材を使った半袖や長袖のシャツを着用する。綿製だと一度汗をかいてしまうと乾きにくく、また、乾いたとしてもその気化熱によって身体を冷やすことになる。

パンツは岩などでヒザをすりむいたりすることもあるので、なるべく長ズボンが好ましい。これもシャツと同様、綿製のジーンズなどは避けて、乾きやすくて膝の曲げ伸ばしがしやすいストレッチ素材のパンツが良い。

シャツの上にはフリースなど、保温性の高い素材を使ったものを中間着として着用する。フリースは気温が高くなった時に脱いでも軽いため、特に好まれる素材だ。可能であれば薄手と厚手のものを2種類を用意しておくと、気温の変化に対応しやすい。

雨や風を防いでくれるウインドブレーカーやレインウエアは、富士登山には必須のアイテム。天候に合わせて一番上に着用する。外からの雨は防いで、ウエア内の湿度は外に逃がす機能をもった高機能素材「ゴアテックス」製のものは快適性が高いが、その分価格も高い。ただし、最近は同様の機能をもったリーズナブルなものも多い。

直射日光、紫外線を遮るグッズも必要

風をさえぎるものがないことは前記の通りだが、同時に直射日光を遮るものもないのが富士山。日光に近づくこともあり、晴れの日は強烈な紫外線が降り注ぐ。キャップやハットなどの帽子はもちろん、サングラスなどで目を守ることも必要。日焼けは肌にダメージを与えるだけではなく、疲労の原因にもなるので、日光への対策も忘れずに。

選んだ登山路にもよるが、例えば須走ルートの場合、下りの7合目からは「砂走り」と言われる道に入る。砂走りでは砂ぼこりが舞い上がるので、口や鼻、眼を防備するためにマスクやバンダナ、タオルなどの用意を。また、靴の上から足首までを覆う足首スパッツがあると心強い。

こうしたウエア類は普段なかなか利用しないものなので、「次いつ使うか分からないし、買うのがもったいない……」と感じる人もいるだろう。そんな人はレンタルを利用してみてはいかがだろうか。例えば、アウトドアギアレンタル「そらのした」は、吉田ルート五合目にレンタル受付・返却ができる店舗も展開しており、1点レンタルのほかセットでのレンタルもある。

今回は防寒対策と紫外線対策を中心にウエア類を紹介したが、早朝登山用のライトやトレッキングシューズなど、備えておきたいアイテムはいろいろある。次回はそうしたアイテムを紹介しよう。

ウエアのチェックリスト
・速乾性の素材を使った半袖や長袖のシャツ
・乾きやすいストレッチ素材の長ズボン
・フリース(可能であれば薄手と厚手のものを2種類)
・ウインドブレーカー、もしくはレインウエア(上下)
・帽子
・紫外線対策(サングラスなど)
・砂ぼこり対策(マスクや足首スパッツなど)

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