ここ10年という短いサイクルを見ただけでも、Webデザインは大きく様変わりしている。トレンドは、偶然に生まれるものではなく、環境や要求の変化に応じて、生まれるもの。ある意味で必然的な結果だといえるだろう。

Creator’s Career Lounge(CCL)web vol.6の様子

こうした中、「2014年のWebデザイントレンドとは?そして本当に必要とされる、今後のデザインとはいったいどういうものなのか?」というテーマで、6月25日に東京都・竹橋にて「Creator’s Career Lounge(CCL)web vol.6」を開催。プレゼンターとして、WEBクリエイターのインスピレーションを刺激するWebデザインブックマークサイト『AnotherBookmark』などを運営しているFICCのクリエイティブディレクター 福岡陽一氏や、シニアクリエイティブディレクターの戸塚省太氏、フロントエンドデザイナーの冨田一樹氏、同社のパートナー企業であるSTANDARDのUIデザイナー 鈴木健一氏が登壇した。

過去10年のデザインの変遷で見えてくるもの

FICC クリエイティブディレクター 福岡陽一氏

「デザインには目的があります。商品について『知ってほしい』『買ってほしい』『シェアしてほしい』ソーシャルメディアなら『交流してほしい』など。このように状況によって目的は変化して、それぞれの目的にあわせて、デザインも変化する」。

まずは福岡氏によるデザイン定義の解説で、今回のトークセッションが始まった。続いてWebデザインのトレンドが過去10年で、どのように様変わりしてきたのか。その変遷を年代ごとに振り返っていった。まとめると以下のようになる。

2004年-「Web広告時代」
Flash全盛期であり、ガラケーにおいてもほとんどの機種がFlashライト1.1を搭載。PCへのFlashインストール率が98%と環境も整っていた時代。このようなFlashの圧倒的な普及率の背景には、「HTMLでの表現力の物足りなさ」があったのではと福岡氏は考察した。

2005年-「Webサービスの萌芽」
WebサービスというITが世の中に浸透した時期。mixiが誕生したのもこの頃のこと。Movable TypeのCMSが浸透し、企業による製品PR活動にブログを利用するケースも増加した。あわせてSEO対策も注目され始めたほか、JavaScriptだけでスムーズに地図のアプリが動くGoogleMapも登場し、HTMLやCSS、JavaScriptの重要性が少しずつ高まってきたのが2005年だった。

2006年-「Web動画の登場」
今でこそ当たり前になったが、Flashプレイヤーで動画の再生が可能になったのが2006年。人物映像と融合させたPIPコンテンツが流行し、YouTubeが誕生した年でもある。動画が新しい表現として登場した革命的な時代だった。

2007年-「ソーシャルメディアの勃興」
TwitterやFacebookなどの様々なソーシャルメディアが誕生し、「シェアする」という選択肢ができた年。ここでWebサイトへのユーザーの関わり方が一気に多様化した。ユーザー行動の中に、評価するシステムが組み込まれるようになった。

2008年-「iPhoneショック」
スマートフォンという新しいカテゴリーが生まれた年。Webサイトを作る際には、PCとガラケー、スマートフォンの3つに対応する必要がでてきた。iPhone3Gが発売され、Flashの衰退のきっかけにもなった。その一方で、iPhoneに搭載されていたブラウザ「Safari」がモダンブラウザだったというのは、大きなメリットに。画像はほぼ制限なく、文字も鮮明で綺麗に表示でき、拡大・縮小も自由自在。HTML5やCSS3、JavaScriptがスタンダードになったスマートフォンはとても画期的だった。

2009年-「スマホアプリの時代」
iPhoneアプリが注目を集め、それによりリアルで立体的なデザイン「スキューモーフィックデザイン」が爆発的に流行。「タッチデバイスという新しい分野だからこそ、リアリティがあったほうがわかりやすい」という発想から生まれたスキューモーフィックは次第にWebサイトへ多用されることに。Instagramなどスマホ固有の機能を利用したアプリが登場し、携帯ゲームなどは著しい成長を遂げるようになった。ビジネスの中心がPCからスマホへと移り、新しいUIが生まれるようになった年だ。

2010年-「タブレット誕生」
ガラケーがタブレットに代わり、PCとスマートフォン、タブレットの3極化が生まれた年。スマートフォンに関しては、多くの機種のAndroidが登場し、異なるスクリーンサイズや解像度が乱立。高解像度を実現したレティーナディスプレイを搭載したiPhone4がリリースされたのもこの年。この状況が2014年の現在に続いている。