進化する歩行支援向けロボット技術

そして、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)から出展されたのが、同研究所の遠藤謙研究員が手がけている「ロボット義足」のプロトタイプだ(画像18・19)。近年、オスカー・ピストリウス選手のように、パラリンピックの選手が高性能な義足によって、10秒91という健常者と遜色ない世界記録を出しており、このままいくと、パラリンピックの選手の方が速いタイムが出そうな状況である。中には公式記録ではないが、健常者の世界記録であるウサイン・ボルト選手の9秒58を上回ったなんていう、スーパー義足も世界中で開発されているようだが、ソニーCSLの今回のロボット義足もそうした1つで、モータや電子回路を組み込むことで失われた機能を補うだけでなく、ヒトの身体を拡張して限界突破を目指している義足なのだ。

画像18(左):現在多くのパラリンピックアスリートが装着しているような、メカニズムを用いないタイプの中競技用義足(開発中)。画像19(右):ロボットテクノロジーを応用したメカニズムを備えたタイプ(開発中)

それから、先日、[「受動歩行」を題材にして、名古屋工業大学機械工学科の佐野明人教授のインタビューをお届けしたが] http://news.mynavi.jp/articles/2014/06/13/acsive/ )、その際に紹介した、佐野教授と今仙研究所が共同開発した無動力歩行支援システム「ACSIVE」も展示されていた(画像20)。受動歩行の詳細は先の記事を読んでいただきたいが、ヒトの2本足という構造には自然と備わった物理現象としての「歩行」が生じる仕組みで、ヒトの歩き方に含まれる位置(重力)エネルギーを利用した効率的な運動のことを受動歩行と呼ぶ(ヒトは、バランスを軸足に置かない「動歩行」とこの受動歩行を組み合わせた歩き方で効率よく歩いているとされるが、実はまだわかってないとされる部分もある)。

画像20。受動歩行の原理を応用した無動力歩行支援システムのACSIVE