パナソニックが2014年2月に発表したTOUGHPAD FZ-E1が、いよいよ7月下旬から発売される。頑丈タブレットコンピュータ「TOUGHPAD(タフパッド)」シリーズとしては初めて、LTE/3G回線での音声通話機能を搭載。5型液晶ディプレイを搭載し、過酷な現場や屋外での用途に適した製品だ。

OSにWindows Embedded 8.1 Handheldを搭載したFZ-E1には、同じ筐体設計でありながら、Android 4.2.2を搭載したFZ-X1という兄弟モデルも用意され、これも7月下旬から発売される。

これらはBtoB向けの製品となるが、取材を通じて感じたのは、顧客の声に真摯に耳を傾け、それを実現するために開発陣が奮闘努力した結果、誕生した製品であるという点だ。

TOUGHPAD FZ-E1(左)とFZ-X1(右)

3つの源流を持つTOUGHPADシリーズ

TOUGHPADは、大きく3つのアプローチで製品化されている。

ひとつは、ITプロダクツ事業部が以前から取り組んでいたTOUGHBOOK(タフブック)シリーズの流れを組むTOUGHPAD。10.1型液晶ディスプレイを搭載したFZ-G1などがこれにあたる。

2つめは、BizPadの名称でパナソニックシステムネットワークスが担当してきたビジネス向けタブレット。7型液晶ディスプレイを搭載した、同じく7月下旬発売のFZ-M1などがBizPadの進化系となる。

そして、3つめが、今回紹介する5型液晶ディスプレイを搭載したFZ-E1およびFZ-X1の製品ライン。これは、かつてスマートフォン「ELUGA」シリーズを開発していたチームが中心となって開発した音声通話ができる製品だ。

いずれも堅牢性を追求したタブレットデバイスであり、それぞれが蓄積したノウハウを相互に生かしながら、WindowsおよびAndroidを搭載した製品群をそれぞれラインアップ。ユーザーニーズに幅広く対応できるようにしている。

そうしたなかで、新たにな追加されたFZ-E1およびFZ-X1は、これまでTOUGHPADが未開拓だった市場への提案を狙って開発された製品だといえるだろう。

パナソニックシステムネットワークス ターミナルシステムビジネスユニット 商品開発室・二文字屋 剛参事は、「ELUGAによる個人向けスマートフォン事業の休止が発表された当時から、一方で市場調査を行い法人向けの製品企画に取り組んでいた。これが、FZ-E1およびFZ-X1の前身となっている」と前置きし、「これまでPCを持ち込めなかったような場所で使いたいといったニーズや、過酷な条件の場所でもスマートフォンやハンディーターミナルのような機能を使いたいといったニーズに対応した製品を目指した。一度持ち出したら何時間も充電できない環境での利用や、携帯電話とバーコードリーダー、高性能デジカメといった複数のデバイスを持ち歩かなくてはならない状況にある現場で、デバイスを1台に集約したいというニーズに対応した端末でもある」と、FZ-E1およびFZ-X1を位置づける。

パナソニックシステムネットワークス ターミナルシステムビジネスユニット商品開発室・二文字屋 剛参事

いずれも、CPUにはQualcommのクアッドコアCPUを搭載。外形寸法は高さ165mm×幅87mm×厚さ31mm。ハンドストラップを含む重量はE1が約458g、X1が約455gとなっている。

5型液晶ディスプレイは、運送業界などで用いられるデバイスでは一般化している「3.5インチでは小さい」というニーズに応えて大型化しつつも、ホルスターや作業服のポケットに収納して持ち運べるボディサイズを実現している。スマホのように音声通話をするという点でも、ぎりぎりのサイズがこの大きさだろう。パナソニックでは、開発当初から音声通話は必須機能として搭載を検討していたとする。スマホの開発ノウハウを生かして、通話機能までを統合したというわけだ。

こうしてみると、FZ-E1およびFZ-X1は、これまでのTOUGHPADでは踏み込めなかった新たなビジネスニーズに対応するために製品化したものであることがわかる。

これまで本連載で取り上げてきた製品は、タブレットといえども、PC側からの開発アプローチであったが、スマートフォンのノウハウをベースにして、PCやタブレットのノウハウを組み合わせた製品を取り上げるのは今回が初めてだ。

2種類のOSを選択可能にした点については、「顧客の声を聞くと、地域、用途、業種を問わず、WindowsとAndroidに対するニーズが半々だった。そのため、いずれのOSにも対応できるように、2モデルをラインナップした。Windowsユーザーの多くは、Visual BASICやVisual C♯といったWindowsの開発環境との親和性や資産の継承、セキュアな環境を実現できることなどを採用理由にあげている」という。

一方でWindows Phone 8をOSに採用するという選択肢も検討したが、幅広い法人ニーズに対応するには、柔軟なカスタマイズが必要となることから、より柔軟性が高いWindows Embedded 8 Handheldを選択している。

現場からはWindowsとAndroidに対するニーズが半々。カスタマイズ性の高さから、FZ-E1ではWindows Embedded 8.1 Handheldを採用した