MMD研究所が公表した「MNPユーザーのスマートフォンネットワーク調査」の結果によれば、ソフトバンクにMNPした利用者が、最も「つながりやすさ」と「通信速度の速さ」に満足しているという。ソフトバンクの電波は、かつて「最もつながらない」と言われていた。どのようにして、ここまで改善したのだろうか。その理由について考えてみたので本稿で説明しよう。

ソフトバンクの電波改善の秘密は「プラチナバンド」とビッグデータ活用?

今回MMD研究所が発表した調査は、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクのユーザー各600人(計1,800人)に、 MNPをした時期や理由について聞いたもの。同調査では、ソフトバンクにMNPした利用者の62.4%が「つながりやすくなった」と実感しており、ドコモ、auを引き離し最も満足度が高かったという。加えて、ソフトバンクにMNPした利用者の67.3%が「通信速度の速さ」を実感しており、こちらも、ドコモ、auを抜く結果となった。

ソフトバンクにMNPした利用者が、最も「つながりやすさ」と「通信速度の速さ」を実感しているとの結果に

同調査のソフトバンクの高い満足度の理由を探るにあたり、ソフトバンクのネットワーク戦略の流れについておさらいしておこう。

まず、フィーチャーフォン全盛の時代、モバイルのネットワークが強いキャリアはNTTドコモとKDDI(au)の2社で、ソフトバンクの電波は「つながらない」と言われ続けていた。これはソフトバンクにだけ周波数800~900MHz帯のいわゆる「プラチナバンド」が割り当てられていなかった(NTTドコモとKDDI(au)には使用が認められていた)ことが原因のひとつと同社は指摘していた。

潮目が変わったのは、ソフトバンクに900MHz帯の割り当てが決まった2012年3月。それ以来、同社では2.5GHz、2GHz、1.7GHz、1.5GHzに900MHzを加えた周波数でサービスを提供できるようになった。

プラチナバンドを手に入れたソフトバンクは与えられた周波数を最大限に活かせるよう、提供するサービスを工夫している。例えば、周波数の面では、2.1GHz帯および1.7GHz帯の周波数帯を使い、下り最大75Mbpsの高速通信「倍速ダブルLTE」を提供。2014年の夏には、900MHz帯のプラチナバンドでもLTEが利用可能になる予定だ。また提供するスマートフォンには、高速通信サービス「SoftBank 4G LTE」および「SoftBank 4G」の両方が利用できる「Hybrid 4G LTE」対応モデルを用意している。

このほかソフトバンクでは、スマートフォンユーザーから月間18億件(2014年5月現在)の通信ログを集めて電波の改善に活用しているという。通信が集中する都市部には「小セル設計」で基地局を設置。”パケ詰まり”と呼ばれる、「電波は届いているのに通信が行えない」状態の発生を抑える工夫を行っている。ちなみに同社の発表によれば、基地局の建設は設備投資のピークを越えたという。現在も投資を前倒しして基地局の建設を進めているとのことだ。

2014年5月に行われた「ソフトバンク3月期 決算説明会」での模様。プラチナバンド基地局、LTE基地局の設置を急ピッチで進めている

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今回のMMD研究所の調査において、ソフトバンクにMNPした多くのユーザーが「つながりやすさ」と「通信速度の速さ」と回答した。この結果は前述したソフトバンクの企業努力が反映されたひとつの例と言えるだろう。

決算発表会や株主総会などにおいて、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏は「接続率No.1」になったと繰り返しアピールしている

これらの電波改善の取り組みについて、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏は、決算発表会や株主総会などで「接続率No.1」になったと繰り返しアピールしている。「電波が弱い」と言われた過去を持つ会社だからこそ、他の2社より強い思いで電波の改善に取り組んでいると言えるだろう。

(執筆:大石はるか)