高級アンティークショップが並ぶハリウッドロードから1本外れたところに、安価な骨董品や雑貨店が並ぶ摩羅上街(キャットストリート)がある。この通り、別名"泥棒市"とも言われるように、出所不明の怪しげなものもあって何やらガラクタ市ようでもある。このキッチュ感あふれる通りをあえて選んで、2014年1月に店を出したというのが「Man Mo Cafe」だ。

古い街並にすっぽりはまっている、「Man Mo Cafe」のモダンな外観

「『西洋と東洋が出合う』がコンセプトの店を構えるにはうってつけの場所だった」というのは、スイス出身のオーナー・ニコラスさん。香港では珍しく、ドアを開放してもうるさくない通り。それが気に入ったのだという。

アジアとヨーロッパの完璧なコラボ

小皿でいろいろな料理を大勢でシェアできる点心は、スペイン料理のタパスのようでもあり、西洋人にも受けるだろうとニコラスさんは興味をもった。そして、点心と西洋の本格的な味が融合しているところは、まだほとんどないことに目を付けたのだそう。それを実現しようと、フランスの三ツ星レストラン・ロブション出身のシェフと小籠包を世界に知らしめた台湾の鼎泰豐(ディンタイフォン)出身のシェフという、東西の横綱クラスを連れてきてしまったのだ。

見た目は中華なのに、口に入ればヨーロッパ。この調和にこだわった。野菜は現地の新鮮なものを使い、肉はオーストラリア、ホタテは日本からなど、メニューに合わせてこだわりの具材をそろえている。

特におすすめなのが、「フォアグラの小籠包」(2個で88香港ドル=約1,160円)だ。小籠包の皮を破った途端に広がる濃厚なフォアグラの香りと、ティンタイフォン仕込みの絶妙な肉汁感。点心の皮とフレンチの具、どちらの味も壊さずむしろ引き立て合う、夢のようなメニューなのだ。

「フォアグラの小籠包」は、フォアグラのとろみまで"っぽい"どころかフォアグラそのもの。 目をつむって食べたらフランス料理を食べていると思うかもしれない

モダン点心は目にも口にも斬新

こだわっているのは味だけではない。印象的な真っ赤な皮に包まれた「ラタトゥイユ(2個で48香港ドル=約630円)」など、まるで食べるアートのように見た目も楽しませてくれるのだ。

点心メニューには、そのほかにも「トリュフ・ブリー(チーズ)」(2個で58香港ドル=約770円)、「トマト・モッツァレラ」(2個で48香港ドル=約630円)の餃子や、肉料理のトルコ風「ケバブン」(2個で58香港ドル=約770円)など、各国料理をイメージさせる名前が並ぶ。中華料理と世界の美食のおいしいとこどり、と言っても過言ではないのだ。

「ラタトゥイユ」はもはやアートの域

デザートには、香港のエッグタルトとヨーロッパのレモンタルトが合体した「香港エッグレモンタルト」(2個入り26香港ドル(約340円))がおすすめ。中にはメレンゲが入っていてフワフワ

一般的には昼から夕方までの点心だが、ここでは終日OK。お茶ベースのオリジナルカクテルなどドリンクメニューも豊富なので、飲茶としてだけでなく居酒屋感覚でも食べられるのも日本人にはうれしいポイントだ。今後はアフタヌーンティーも提供するなど、毎週のように新しい創作メニューを予定している。

別名"泥棒市"の摩羅上街(キャットストリート)には、こんな品がずらり

※1香港ドル=13.2円で換算。記事中の価格・情報は2014年6月取材時のもの