6月25日から27日にかけて、東京ビッグサイトでは「日本ものづくりワールド」が開催された。「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS)」には数多くの製造業向けITソリューションを持つメーカーが出展する中、ローランド ディー.ジー.株式会社は現在話題の3Dプリンターなどを含めて独創的なアイデアを”立体”にするための機器展示を行った。

熟練の切削加工機と待望の3Dプリンターの両方を展示

ローランド ディー.ジー.は現在、3次元デジタルデータを活用したものづくりを提案する「3D事業」の可能性を一層広げることを目標とし、さまざまな新製品開発や、各種展示会への参考出品に取り組んでいる。DMSへの出展もこの一環として行われたものであり、展示会ブースでは最新の3Dプリンターと小型切削機を中心とした展示が行われていた。

多くの注目を集めて盛況だったローランド ディー.ジー.のブース

もともと、ローランド ディー.ジー.は「小型3次元切削加工機」に長年取り組んできた企業だ。ブースではその30年来の技術を詰め込んだ最新の小型3次元切削加工機と、同社初となる「小型3次元積層造形機(光造形方式の3Dプリンター)」の両方が展示された。 派手なパフォーマンスを行っているわけではないブースだが、時には人があふれかえるほどの賑(にぎ)わいで多くの注目を集めていた。

ローランド ディー.ジー. 国内マーケティング課 係長 錦見 尚樹 氏

「やっと3Dプリンターを出したのか、と言われたりもしました。昨年のFab9で限定的に展示はしたのですが、かなりお待たせしてしまったようです。今日はこのブースを見に来たというお客さまもいたようで、うれしいですね」と語るのはローランド ディー.ジー.国内マーケティング課 係長の錦見尚樹氏だ。

小型切削加工機と3Dプリンター2種の3D加工技術の使い分けや組み合わせを提案

展示された小型切削加工機と3Dプリンターは、どちらも小型で、小規模にオリジナルの立体物を製作できる機械だ。しかし、その加工方法は違う。3Dプリンターは樹脂を一層一層積み重ねることによって三次元造形を行う。つまり、何もない場所に物が現れてくるというようなイメージだ。一方、切削加工機は元の素材から立体を削り出す、彫刻のようなイメージと言えるだろう。

実現する方法が違うために、できあがるものにも違いがある。3Dプリンターは採用する素材と設計によっては、内部が非常に複雑な形でも造形することができる。一部が稼働する状態での加工も可能だ。これに対して切削加工機は固形からの削り出しになるから、ある程度形状に制限は出る。しかしその分、金型などは起こしやすいものができるため量産化を前提とした試作に向いている。

今回の展示では、これらを選択して利用するだけでなく、うまく組み合わせて利用することが提案されていた。

「切削加工機と3Dプリンターのいい所を使って組み合わせたらよりよいものができる、ということを提案しています。球形スピーカーの場合は嵌合を見たい部分は精度を求めて切削加工機を使っています。周辺部については、斜めにビスをとめる形に切削加工機で作るには上位機種が必要なので、3Dプリンターで作ったものを利用しています。金型では起こせないというような所も3Dプリンターならデザインの段階でもできるので非常によかったとデザイナーからも言われました」と展示試作機について錦見氏は語った。

3Dプリンターで制作した猫型の小物。中空のこの構造は3Dプリンターでしか作れない

メガネの弦部分はしっかりとした素材を切削加工機で作り、より細かい造形が必要な鼻当て部分は3Dプリンターで作っている

切削加工機と3Dプリンターで作った部品を組み合わせて作られた球形スピーカー

「Desktop Fabrication」を実現する2つの新モデル

切削加工機を28年扱ってきたローランド ディー.ジー.には、元から小型の製品「MDX-20」が存在する。今回展示された新たな小型切削加工機は、その後継機のような位置づけだ。そして、新製品の3Dプリンターも本体サイズは同じくらい。どちらもテーブルに無理なく置くことができるサイズだった。

こうしたサイズの機器を利用して、ものづくりを行うことを、同社では「Desktop Fabrication」というコンセプトで提案している。

「切削加工機をお使いいただいている既存のお客さまの場合、切削加工機の強みや弱みはよくご存じですから、3Dプリンターでそれを補ってどんなことができるのか、という話になります。完全に新規のお客さまの場合は、切削加工機のことをあまりご存じでない方も多く、その特徴から解説することが多いですね」と錦見氏は展示会での来訪者について語る。

切削加工機と3Dプリンターの双方を扱うメーカーというのは多くないため、双方の特性を細かく理解いただいた上で、その上手な使い分けや組み合わせを提案できるのがローランド ディー.ジー.の大きな特徴となる。来場者の質問の中には、3Dプリンターの具体的な技術部分について他社製品との違い等を尋ねるものも多かったようだが、ものづくりの際のより具体的なフローや作成方法などの質問も飛び交っていた。

「趣味で使いたい方は少ないのでしょうが、個人で仕事を受けていらっしゃるフィギュアの原型を作られている方などもいらっしゃいました。テーブルに置けるサイズでのものづくり、ということで興味を持っていただいています」と錦見氏は語った。

参考出品された3Dプリンター

実際の造形の様子も展示されていた

デスクトップサイズの小型切削加工機の新製品も参考出品

2014年秋に登場する国産加工機に期待

今回出品されたものは2機種とも参考出品であるため、実際の販売時には細かな仕様は変わってくると考えられる。実際、ユーザーの声を取り入れての調整なども行われる予定のようだ。

どちらにしてもポイントとなるのは、ローランド ディー.ジー.という切削加工機においては長い実績を持つ、国内メーカー製の機器だということだ。特に3Dプリンターは安価な海外製品も登場している中で、ユーザーも何を選んでよいのか悩んでいる部分もある。ハードウェアスペックの比較はできても、実際の使い心地やサポートといった面には不安が残っている場合もあるだろう。

その点、ローランド ディー.ジー.には切削加工機メーカーとしての実績と、充実したサポートがある。会期中にブースを訪れた人々の中でも、特に購入意欲を持っていた人に多く見られたのは、サポート重視・信頼性重視の傾向だ。切削加工機と3Dプリンターを共通したひとつのメーカーのサポートを受けながら利用したいと考えた場合、大きな選択肢になる。

「今回、価格についての質問も非常に多く受けましたが、未定です。弊社としてはスペックだけで販売するような考えはなく、これまで日本において、ものづくりの機械を提供してきた信頼と実績にもとづいた安心をお届けできること、販売後にも強力なサポートがあることなどを付加価値として考えていただけるようにしたいですね」と錦見氏は語った。

今後は2014年秋の発売を目指しながら、自社クリエイティブセンターの展示スペース等で逐次開発中モデルの展示を行う予定だという。また未定な部分も多いが期待に応える自信はあるという。錦見氏は「ご期待ください」と力づよく語った。

3Dプリンターで出力した繊細な造形物

ローランド ディー.ジー.株式会社

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