7月8日、大塚食品「ボンカレー」が新たなキャンペーンを発表した。歌手の山崎まさよしさんとのコラボレーションソング「うたたね ボンカレーVer.」を制作、「ボンカレーゴールド<甘口><中辛><辛口>」購入者限定でダウンロードできるというのだ。(※詳細は特設サイトにて確認できる)

カレーを買ったら楽曲をダウンロードできる! というのは画期的な試み。一体どういう経緯でこのような試みになったのか? そして昨今取り沙汰される音楽業界の未来とは? どんな人がこれから音楽業界でやっていけるのか? 楽曲を担当した山崎まさよしさん、そしてプロデューサーの方にお話を伺った。

山崎まさよしさん
1971年12月23日生まれ、滋賀県出身。1995年に「月明かりに照らされて」でデビュー。1997年公開の主演映画『月とキャベツ』の主題歌「One more time, One more chance」がロングヒットし、ブレイク。精力的な全国ツアーを行ってきたほか、全国各地のフェス・イベントへの出演、ミュージシャンとしてのセッション参加なども数多く、音楽ファンのみならず多方面から支持を得ている

商品としての「音楽のパッケージ」はどんどん変わってきている

--今回の、「カレーを買ったら音楽をダウンロードできる」というキャンペーンについてはどう思いましたか?

山崎さん「ベースボールチップスのカードなり、ビックリマンチョコのシールなり、何か特典がついていると、やっぱりうれしいものなんですよね。パソコンはもう各家庭には普及してるでしょうし。斬新なやり方だと思いました」

--買う人の喜びになりますね

山崎さん「そこにつけこむ!(笑)」

--お話を受けられた経緯はどのようなものだったのでしょうか?

プロデューサー「山崎まさよしのレパートリーには食べ物をモチーフにした楽曲が、尋常でないくらいに存在します。タイトルにストレートに現れている『セロリ』『中華料理』『パンを焼く』『ドレッシング』をはじめ、歌詞中に食べ物がでてくる歌は枚挙にいとまがありません。

山崎本人はこのことを問われるたびに『食いしん坊だから』などとうそぶいていますが、『食』という生活の最も基本を成す行為が、比喩として、テーマとして表現することの伝わりやすさを体感しているのが大きな理由なのでしょう。そんな山崎が、ある時期曲を書かずにカレーばかり作っていたことがあります。スパイスや材料、果てはナンまで手作りする始末でした。つまり、いままでカレーをモチーフにした楽曲がないことのほうが理に合っていなかったほどなのです。カレーから想起されるテーマはやはり、『お母さんが作るカレー』の懐かしさ、暖かさ、元気であり、それは現在の山崎のメインテーマにダイレクトに通じるものでした。

加えてお話をいただいた時まで知らなかったボンカレーの製造工程の丁寧さに感動し、まさしく『愛情に満ちた』カレーをテーマにした楽曲ができると確信しました」

--こういった新しい試みも含め、音楽業界の移り変わりに対して、どのような印象を持っていますか?

山崎さん「いわゆる、音楽の商品としてのパッケージ、位置はもうずいぶんと変わって来ましたよね。それこそダウンロードできるようなデータになったり…」

プロデューサー「CD、配信ともに右肩下がりに歯止めがかかりません。ライブが唯一横ばいという傾向です。加えてサブスクリプションや、動画サイトの隆盛などの要素を考えるに、音楽業界のビジネスモデルの再構築をいよいよ迫られることになるでしょう」

山崎さん「そうですね、ライブというのが非常に重要になって、実際に足を運ばれる率が高くなってると思います」

ホールのファンだからライブに来る、という層もいる

--それは肌で感じますか?

山崎さん「やっぱりツアーをやっているので…特にこういうときだからこそ、都心を外して、例えばアクセスの悪い田舎などに行く方が喜ばれているみたいです。これが面白いもので、けっこう合併や統合で市からお金が出て、ホールをつくりました、というのがけっこうあるんですよ。そういうところに行くと、音楽以外でもよく使われていて、落語のポスターの横に僕のポスターがある(笑)。ミュージシャンとか、やる人は出掛けるべきだと思いますよ」

--それで今精力的にライブを行われているんですね

山崎さん「今、週末はずーっとライブですね。初めて見に来られる方がけっこう多くて。ホールに対してのファンの人も存在するんです。年齢も、子供からおじいちゃんおばあちゃんまで。新しい層が増えて行ってる気がします」

プロデューサー「複製産業として限界が見えてきたということであって、原初的な音楽のニーズが下がったわけではないということに光明が見えますね。優良故に有料のライブがしっかりできて、質の高い作品を、制作費の高低に左右されずに制作できるアーティストが相対的に活動の場を広げていける、スポットが当たる、ということになるため、結果的には望ましいことと考えています」

異動があってもいじけずに!

--いま音楽業界を目指しているような人もいますが、どういう方と一緒に働きたいですか

プロデューサー「いまやどの業界も同じでしょうけど、水物のビジネスであることは今も昔も変わりありません。安定志向ということからはやはり遠いということだけは言えるでしょうか。ただそれ故にチャンスは、キャリアや環境に関わらず、いくらでも転がっているということも事実ですし、今後ますます広がっていきます。仕事自体を大いに楽しんで、愛することができることもこの業界の魅力です」

山崎さん「スタッフの方たちはお客さんを前に何かするというわけではないんですが、音楽を好きな人がいい。それにつきると思います。それこそ業界も多様化していますが、好きだったら乗り切れると思いますよ。

そりゃ『俺はディレクターがやりたかったのに販売促進になった』とか、そういうこともやっぱりありますからね、会社が大きいと。『東京志望なのに名古屋になった』とか、会社大きいとね(笑)。音楽が好きという気持ちがあれば、諦めないで『東京に戻された』『ディレクターになった』とあるかもしれません。異動があったりするけど、いじけずにやってほしい。すねちゃうと大変なんだ(笑)。それを乗り切ってほしい、というのはありますね」