日本マイクロソフトは、2014年7月1日からスタートした同社2015年度の経営方針を発表した。

そのなかで、日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏は、2014年中に、コンシューマ向けクラウドサービスである「Office 365 for Consumer」を日本でも提供することや、7月17日から発売するSurface Pro 3の予約が、予約初日に前モデルの25倍に達したことなどを明らかにした。

日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏

日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏は、会見の冒頭に、6月30日で終了した同社2014年度の成果について説明。「ひとことで言えば、着実な成長を遂げたというよりも、ものすごくよかった。最高の年であった」とし、「Windows XPの延長サポート終了と、消費増税前の駆け込み需要により、PCの販売は過去最高となり、日本マイクロソフトの売上高も過去最高を達成した」と述べた。

6月30日までの前年度は、過去最高の売り上げを達成

さらに、日本マイクロソフトに社名を変更し、日本に根ざした企業を目指してから3年を経過したこと、働きがいのある会社としての社会的評価を受けた実績を紹介したほか、「エンタープライズ分野においては、製品の信頼性に加えて、会社そのものが信頼してもらえるかどうかが重要な尺度となっている。その点では、コンシューマクラウドを中心とした会社よりも信頼をいただいているという自信がある。また、日本の企業の生産性を高める、あるいは競争力を高めるという点でも貢献していきたい。日本ではICTの利活用が遅れているが、グローバル標準のツールを使うことで、ワークスタイルの変革に取り組む支援をしていきたい」と語った。

また、米マイクロソフトのCEOに、サティア・ナデラ(Satya Nadella)氏が就任したことにも触れ、「発表当日にCEOに就任して以降、矢継ぎ早に新たな戦略を打ち出している。Mobile First, Cloud Firstというメッセージを通じて、モバイルとクラウドを第一優先とし、大胆にシフトしていく姿勢を打ち出した。また、もうひとつのメッセージは、ユーセージ。簡単にいえば、『使ってもらってなんぼ』ということである。Windows、Officeはドミナントな状況にあり、だからこそ、なにかをつければ、それで売れるという傾向があった。つまり、景観のいいレストランだから、人が来るという発想。しかし、これで売れる時代は終わった。サティアは、顧客が、マイクロソフトの製品を直感的に、自然に使うようにしなくては駄目だということを、R&D部門に対して号令をかけた。また、Windows環境で開発するエンジニアが、クールだと思ってもらえるようにしたいと考えている」とコメント。

米Microsoftの新CEO、サティア・ナデラ(Satya Nadella)氏

さらに、「Windowsにはこだわらず、クロスプラットフォームで展開していく。フットプリントが広がっている他社のタブレットに対してもOfficeを提供。他社が同様の製品を無償で提供していることから、Officeの一部を無償で提供しはじめた。目には目をという戦略。これには私も驚いた。ビル・ゲイツやスティーブ・バルマーといったこれまでのCEOは、これらの製品は自分の子供のようなものであるため、ここまでのディシジョンできなかったのかもしれない。新たなCEOは、現実に即した形で、短期間にこれだけの意思決定をしている。通常ならば、2、3カ月かかる案件も、2日間で終わらせている。現実的で合理的である。さらに、現実を踏まえて、戦うところは戦うが、手を組むところは組むといったことにも取り組んでいる。これからもマイクロソフトの進化に期待してほしい」とした。

一方、Windows XPについては、「4月9日に延長サポートが終了したWindows XPは、12年に渡りサポートを提供してきたが、すでに構造自体が古く、脆弱性が高い建築物と一緒。その主旨を理解していただき、日本の多くのユーザーに新たなOS環境に移行してもらった。日本は、もともとWindows XPの構成比が高い国であったが、最も移行が進んだ国となっている。現在、Windows XPの構成比は約8%のところまできた。引き続き、社会的使命として、マイグレーションを続けていく」と言及。一方で、Windowsタブレットについては、店頭におけるシェアが2年前には0%であったものが、2014年1~3月は30.5%になったことを示しながら、「年度内には過半数のシェアを取りたい。従来のタブレットはできることが少ない。これからは、PCの機能を持っていることが重要になってくる。長期戦になるほど有利になると考えている」と語った。

さらに、4月下旬に明らかになったIEの脆弱性についても説明。「日本での報道がアグレッシブであり、コールセンターのコール数は日本が一番多かった。IEは、脆弱性を99.9%カバーできているが、Chromeブラウザでは70.7%、Firefoxでは4.2%となってしまう。IEの脆弱性を機にして、他のブラウザに変えた途端に、ものすごく脆弱になってしまう」などと述べた。

そのほか、日本におけるMicrosoft Azureのデータセンターの開設により、国内に閉じた形でのBCPの実現や、レーテンシーの改善といった点でも高い評価を得ており、「想定を上回るお客様が殺到している。データセンターのキャパシティを拡張している段階にある」とコメント。

さらに、Office 365は日経225の企業のうち60%の企業が利用していることや、教育分野においてもGoogleのシンボリックなユーザーであった日本大学がOffice 365 Educationを10万ユーザーに導入したことにも触れ、「多くのお客様から『やはりマイクロソフトでなくては駄目である』というお声を頂戴している。オンプレミスで培った信頼感、営業体制、サポート体制をクラウドサービスでも継続する。お客様の課題から絶対に逃げないという日本マイクロソフトの姿勢は、これからもますます強めていきたい」と述べた。

さらに、東京・品川の同社本社には、これまでに延べ48万人が来社し、最先端のワークスタイルを提案するオフィスとしての役割を果たしていることを強調。「政府、省庁、自治体の見学が多い。あうんの呼吸による日本的な経営から、新たなワークスタイルへと変革すること、機敏性が高いスタイルとはどんなものかということを、考えるきっかけとしている」と語った。

昨年度を振り返って