電子版お薬手帳について話してくれた日本調剤広報部・弓場鉄雪次長

使用している薬の名称や量を記録することができる「お薬手帳」。既報のように、お薬手帳を活用している人は多く、実際にふだんから持ち歩いている人もいるだろうが、その電子版があることはご存じだろうか。紙版と電子版で違いはあるのか、日本調剤広報部・櫻井琢也部長、弓場鉄雪次長にうかがってみた。

お薬手帳とは

病院で受診すると、医師や薬剤師が薬を決める際、他の薬との飲みあわせに配慮して、「現在、服用している薬はありますか? 」と必ず聞いてくる。市販されているOTC医薬品ならまだしも、処方薬の名前やその量まで正確に言える人は少ないだろう。そんなときに役立つのがお薬手帳だ。

手のひらサイズの紙の手帳には、処方された薬の名称や量、処方した日付をはじめ、処方箋を出した病院名と医師名の情報が記載されている。しかも調剤薬局に行けば無料でもらえることができるという便利なアイテムだ。では電子版のお薬手帳とは一体、どのようなものなのだろうか。

電子版お薬手帳とは

「電子版お薬手帳とは、お薬手帳の中に入っている『どういう薬を患者さんが受け取ったのか』という情報を電子化させることによって、個人が自分の薬情報を電子上で管理することができる仕組みです」(弓場さん)。

日本調剤が採用している電子版お薬手帳「Pocket Karte(ポケットカルテ)」は、正確に言えば「個人向け健康情報管理サービス」となる。その仕組みは下記の通りだ。

1.患者自身がカメラ付携帯電話やスマートフォンを用いて、調剤薬局で発行された領収書に印字された「2次元バーコード(QRコード)」を読み取る

2.「2次元バーコード(QRコード)」を読み取ることで処方薬情報および医療費情報が「電子版お薬手帳」(Pocket Karte)に保存され、個人が携帯電話やパソコンなどで情報管理ができる

3.「電子版お薬手帳」(Pocket Karte)の履歴をプリントアウト、あるいはタブレット端末やスマートフォンで医師・薬剤師に見せることで、投薬履歴を共有することができる

「Pocket Karte」のほかにも、大阪府薬剤師会による「大阪e‐お薬手帳」や、川崎市薬剤師会が市やSONYと協力して制作した「harumo(ハルモ)」などが知られる。弓場さんは「集約した情報をどこで保管するかは、各電子版お薬手帳によって異なりますが、『Pocket Karte』ではセキュリティを重視し、クラウド上に保管しています」と話す。

将来はより便利な電子版お薬手帳に?

電子版お薬手帳は、通常のお薬手帳に記載されている情報を電子上でも管理できるという点が最大の利点。ただ、今後さらなる"進化"を遂げていく可能性を秘めているという。

「例えば、患者さんが薬を1か月分もらったとします。それを毎日使っていく過程で、『あと2日間で薬が切れますよ』といった具合に、アラーム機能を電子版お薬手帳に持たせようとするといったサービスなどですね。この電子版お薬手帳を推奨することで、調剤薬局側が何らかの報酬を得るというわけではないのですが、医療の電子化はどんどん進んできています。その中で、うまく患者さんに活用していただければと思います」(櫻井さん)。

2011年に起きた東日本大震災では、慢性疾患を抱えた大勢の被災者がお薬手帳を持参していたおかげで、各避難所ではすみやかに「これまでと同じ薬」を「正しい用量」で供給できた。災害時のお薬手帳の必要性が再認識された格好だが、時として津波や大地震は一瞬にして私たちの家屋を破壊してしまうことがある。そうなってしまうと、家庭で保管していたお薬手帳も同時に紛失してしまう可能性がある。

その点、電子版お薬手帳ならば携帯電話で登録さえしておけば、パソコンからも利用ができ、データのバックアップも可能。「Pocket Karte」では、通常のお薬手帳の情報の他にも、特定健康診査の結果や紹介状(診療情報提供書)などを管理する機能も備わっている。

日ごろから持ち歩けて、「いざ」というときにサッと使える紙版。やや手順を踏まないといけないものの、「命に関わる情報」を紛失することなく保存できる電子版。異なるメリットがある2つのお薬手帳を有効利用することで、賢く自分の身を守るようにしよう。

記事監修 / 日本調剤広報部・櫻井琢也部長、弓場鉄雪次長

日本全国にて保険調剤薬局チェーンの経営を手がける日本調剤にて、広く国民に最良な医療サービスを提供するための情報を発信している。