動画配信プラットフォームを提供している米Ooyala。2007年に元Googleのエンジニア3名が創業した同社は、世界で2億人のユニークユーザーを抱え、6000件以上のWebサイトにおける動画配信を下支えしている。同社が2億人のユーザーを分析した最新のネット動画市場の状況を見ていこう。

動画配信プラットフォームは、企業がYouTubeやニコニコ動画といった既存動画サービスを利用せず、自社で動画サービスを提供する際に利用するもので、国内では日本テレビやプロバスケットボールのbjリーグの動画配信に活用されている。

Ooyalaのプラットフォームは、単純に動画を配信するだけではなく、Analytics機能も備えており、ユーザーがどれほどの動画を再生したか、途中で見ることをやめたのか、どの関連動画をクリックしたのかなど、きめ細やかな動画再生情報の取得が可能だ。こうしたデータを集計すると、1日あたり数十億件のログが溜まり、Ooyalaのビッグデータとして蓄積していくことになる。

意外と多い長尺の動画視聴

ネット動画利用動向の説明会には、米Ooyala Vice President, Asia Pacific and Japanのキース・バッジ氏と日本カントリーマネージャーの磯崎 順信(よりのぶ)氏が登壇した。

米Ooyala Vice President, Asia Pacific and Japan キース・バッジ氏

Ooyala 日本カントリーマネージャー 磯崎 順信(よりのぶ)氏

両氏によると、動画の視聴時間はスマートフォンとタブレットが伸びを見せており、過去3年でシェアが7倍に拡大した。現在のシェアは全体の約1/4とのことで、スマートデバイスでの視聴習慣が徐々に根付いていると言えるだろう。

筆者が意外に感じたのは、スマートフォンにおける視聴習慣が、いわゆるショートムービーだけではなく、長尺の10分以上というコンテンツが視聴数の過半数を占めていることだ。どのデバイスでも過半数となっているが、タブレットよりもスマートフォンの方が長尺コンテンツの視聴割合が多いのは興味深い。

バッジ氏は、こうした数字をもとに「企業が動画コンテンツをマネタイズする上で、価値の高い情報になっていると思う。マネタイズのお手伝いをすることが、まさに私たちの仕事だ」と語り、多面的な動画配信のサポート体制をアピールした。

続いて、磯崎氏が日本における動画配信の現状を説明。グローバルと異なる部分として、スマートフォンにおける生放送動画の視聴割合が他国よりも圧倒的に多い点を挙げ、「通信インフラが整備されている要素が大きいのではないか」とした。

また、日本ではAndroidと比較して圧倒的にiPhoneの動画視聴回数が多く、他地域では競っているか中南米ではAndroidの方が視聴回数が多い中、日本では76%のシェアを獲得している。

日本で動画をマネタイズするには

日本ではテキスト系のメディア利用時間が動画系よりも多く、文章を読みに行く文化だと説明する磯崎氏。ただ、動画配信に可能性がないわけではなく単純に「動画コンテンツの権利処理が世界に比べて後れを取っている」(磯崎氏)という側面もあるのだという。

また、日本はネット上の技術ばかりを追い求めて「ユーザーが求めている体験を意識していない。どういう技術を組み合わせて使わせていくかが重要になる」と指摘。読むためにサイトを訪問させるのではなく、見に来てもらえるよう、直観的なユーザー体験が重要で、「ネットだから読ませなきゃダメということはない。他国ではインターネットのテレビ事業者化が進んでいて、そうした取り組みが見に来るユーザーを増やすことができる」(磯崎氏)と話す。

「コンテンツは資産で、テレビ放送と同様に媒体そのものの価値を決めていくのがコンテンツだ。ユーザーは総合的にサービス評価し、その時ユーザーに最適な動画を提供できるかが、またサイトに来ようという評価に繋がる。我々のプラットフォームは、リアルタイムでエンゲージメントに繋げられると思っている」(磯崎氏)