一時、造る度に赤字を出し、批判を浴びた空港の建設ラッシュ。それが一段落した今、代わって積極的に進められているのが新ターミナルの建設だ。

代表格は関西空港。第2ターミナルができたと思ったら、第3ターミナルの建設が発表された。関空の第1(メイン)ターミナルに行くとチェックイン・カウンターにずいぶん「空室」があるのに、なぜそこを使わずに新しいターミナルを造るのか。

供用開始当時の関西空港・第2ターミナル。今ではたくさんの利用者であふれている

その理由は、メインターミナルのカウンターなどの施設使用料は、第2ターミナルよりも高いので、経費を安くすませたいLCCには不向き。しかし、不便な第2ターミナルは施設使用料が安くすむというわけだ。

利用者目線はどこへやら

ただし、航空会社にとって不便だということは、利用者にとっても不便。「満室」ならば分からないでもないが、そうでないのならもう少し利用者のことを考えてくれてもよさそうである。第3ターミナルも第2ターミナルと同じくLCCの利用を見込んでいるのだが、前述したようにパイロット不足が表面化した今、新しいターミナルを造ってもどれくらい増便できるのか疑問だ。現に、第3ターミナルの開業は2015年から2016年に延期されている。

成田空港でも2015年にLCCターミナルの供用がはじまる予定だが、そうなると現在、第1、第2ターミナルと屋根続きのチェックイン・カウンターから別のビルに移動する必要が出てくる。

また、2010年10月に供用がはじまった国際線ターミナルビルも国内線ターミナルから離れていて不便だ。こうしたターミナルの建設ラッシュの裏には「自分の手柄を立てたい」との理由で、かつての空港の建設が批判を浴びたため、今度は新しいビルを建てたがる、空港の天下り官僚の相変わらずの性質が背景にあるのも事実だ。

いずれにしろ、利用者目線とは遠く離れたところで進められるターミナル建設ラッシュは、今後も続きそうだ。

筆者プロフィール : 緒方信一郎

航空・旅行ジャーナリスト。旅行業界誌・旅行雑誌の記者・編集者として活動し独立。25年以上にわたり航空・旅行をテーマに雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアで執筆・コメント・解説を行う。著書に『業界のプロが本音で教える 絶対トクする!海外旅行の新常識』など。