愛知県のバケツプリンをひとりで完食することができる人はめったにいないはず。なんせサイズの単位が「L(リットル)」なのだから。え? L? 例のプッチンするやつが100gなのだから、1Lだとしてもその10倍だ。そしてこのプリン、なんと最大50Lのものまであるのだとか。

「バケツプリン」1.2Lは2,980円

割烹料理店にあった使えるバケツ

驚きのプリンを作っているのは、愛知県にある「さんま亭」というバケツプリン専門店。実はこちらのお店、もともとは割烹料理店で、魚介類はすべて天然ものにこだわる名店だった。しかし、近年、漁獲量の獲れ高減少により、客に納得できる料理を提供できなくなったことを理由に業種を変更したという。

しかしなぜ、そんな大胆な変更をするに至ったのだろう? その理由を教えてくれたのが、同店代表の加藤正雄さん。

「10年ほど前、割烹料理店をご利用くださったお客さまから、誕生日なので最後にケーキを出してほしいとのオーダーがあったんです。

でもケーキはあまり作ったことがありませんでしたので、『従業員のまかないに、おやつとして女将が大きな器でプリンを作っているのですが、それでしたらお出しできますよ』ということで承ったところ、このお客さまが大変喜んでくださり、知人にも送りたいとのうれしいお申し出があったんです」。

まかないとして従業員のおなかを満たしてきたプリン

しかし、そのような注文は初めてだったため、何の容器を使えばいいのだろうと加藤さんは頭をひねったという。その時、目に入ったのがバケツだった。「当時、食材の保存に、抗菌作用がある素材でできたバケツを使用していたんです」。こうした出来事から数年後、ついに「バケツプリン専門店」として通販も積極的に展開していくに至ったのだ。

バケツプリンを前に満足げな表情の加藤さん

「ケーキカットのかわりにプリンカットを!」

小さいサイズのものは誕生日やバレンタイン、母の日などの機会にご注文くださる方が多いらしく、大きいものは、結婚式や披露宴用のご注文がほとんどだという。

「『ケーキカットのかわりにプリンカットを!』ということで友人がサプライズ注文なさるパターンが多いのですが、当店のプリンは、お皿に盛りつけて食べていただくのを前提にお作りしているので、『ぜひ新郎新婦様の共同作業でみなさまのお皿にお出ししてください』と伝えています。お皿に出す時は、まるでプリンが生まれるのをみんなで見守っているかのように、会場が一体となって盛り上がるようですよ」とのこと。

誕生日会や母の日に家族で分けあえばみんなハッピー

なんともユニークな加藤さんのコメントを聞いていると、愛と幸せがいっぱい詰まったプリンで、居合わせた人みんながハッピーになる様がありありと浮かんでくるから不思議だ。

「バケツプリンは、卵と牛乳のいい香りがするのもポイントです。現在ではほとんどのプリンは生クリームを使用していますが、そうすると残念ながら材料の香りが消えてしまうんです。なので、うちのプリンは生クリームは使用せず、昔ながらの懐かしい味を守っています。

それと、隠し味としてカステラを練り込むことで、コクの深さを追求しています。材料の卵は加熱しても黄身の黄色が鮮やかに残るものを選んで、よりおいしそうな見た目にもこだわっています」。このあたりは、さすが元割烹料理屋だ。

並べると一層かわいいカラフルなバケツプリン

茶碗蒸しの感覚でマツタケ入りも登場

さらに、マツタケ入りやチョコレート入りなどの変わったバージョンを思いついた理由についても、「茶碗蒸しの感覚で作っているのかもしれません」と納得のコメント。また、夏季限定で、「きんぎょ鉢ゼリー」(1匹バージョン=1,480円、3匹=3,130円)などの手の込んだ商品も販売しているが、こちらも、プレゼントにしたら喜ばれること間違いなしだ。

「変わった商品のためか、インターネットで見つけたという方からの注文も多いのですが、配送後にみなさまからお礼の手紙やメール、お電話をいただけることがなによりうれしいですね」と加藤さん。手紙やメールを送っている人たちはきっと、お店の丁寧な対応だけでなく、真心のこもったその味にも感動しているに違いない。

暑さ吹き飛ぶ納涼スイーツ「きんぎょ鉢ゼリー」は3,130円

※記事中の情報・価格は2014年5月取材時のもの