本連載ではAppleが取り組むiPhoneやモバイルサービス、そしてこれから作りだされる未来の生活などについて、ジャーナリストの松村太郎氏が深読み、先読みしながら考えていく。今回は「iOS 8の可能性」について。
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Appleは米国西海岸時間6月2日から、毎年恒例となる開発者会議WWDC14を開催した。基調講演では、Mac向けの新OSとなるOS X Yosemite、iOSデバイス向けの新OSとなるiOS 8と新しいAPI、そして新しい開発環境となるSwiftを発表した。
一般ユーザーからすると、Appleに期待している新しいハードウェアが出なかったことが、開発者向けの情報に多くの時間が割かれ、新しく作られたプログラミング言語Swiftの登場には、詰めかけていた多くの開発者を熱狂させるに十分だった。
特にSwiftの登場は、これまでMacやiPhone・iPad向けのアプリでObjective-Cが長らく利用されてきたことを考えると、むこう10年規模でのイノベーションを左右する大きなトピックとなる。開発環境は、これまでの経験を生かすことができ、モダンに、インタラクティブに、よりプログラミングに取りかかりやすい環境になったのではないか、と見ている。
開発環境の進化や新しい機能、クラウド連携などを本連載でも扱っていくが、まずはiPhoneユーザーの"手先の器用さ"を作り出しそうな、iOS 8の機能について触れていこう。
真っ先に恩恵が受けられる通知センターの進化
普段iPhoneを使っていて当たり前のように過ごしてきたが、実際は不便だったり、よけいな手数を踏んでいることがいくつかある。その1つは通知機能だ。
iMessageやLINEなどでメッセージを受信したとき、画面上部に通知が現れる。これをタップすると、今使っていたアプリから離れて、メッセージを表示し、返信をするという手順だ。再び元々見ていたアプリに戻るには、ホームボタンを2度押して、1つ前に使っていたアプリに戻らなければならない。
しかし、30秒ごとに行動が変わるのがモバイルだ。返事を待っている間に他の通知を受けてしまったら、しばらくは元々見ていた画面に戻らず忘れてしまうかもしれない。そこで、通知を受けたら、アプリを切り替えずその場で返事ができるようにしたのがiOS 8の新機能だ。