"純国産クラウド"として着実にユーザーの評価を得ているニフティクラウド。5月14~16日に開催された「第5回 クラウド コンピューティングEXPO【春】」では、同サービスの人気を物語るような展示やセミナーが開催された。前回は、シンカによる講演『クラウドを活用した経営効率向上 ~ 稼ぐためのクラウド利用とは ~』を取り上げたが、今回は秋田県横手市の取り組みについて紹介した『ITエースをねらえプロジェクト ~ 地方クラウド人材育成の現状と課題 ~』の模様をご覧いただこう。

秋田県横手市「ITによる地域振興プロジェクト」

デジタル・ウント・メア
岩根えり子氏

ニフティがボランティアベースで協力している地域振興ブロジェクトは少なくない。クラウド コンピューティングEXPOのセミナーでは、そんなブロジェクトの1つである秋田県横手市の「ITエースをねらえ!」のケースが紹介された。

講演したのは、同ブロジェクトを指揮してきた秋田県の企業デジタル・ウント・メアの専務取締役である岩根えり子氏。岩根氏は、「日本で一番少子高齢化が進んでいる地域だからこそ、ITを活用して次世代へ続く取り組みの成功事例を作る」ことをテーマに、同プロジェクトに取り組んでいる。

横手市というと、B級グルメの大会「B-1グランプリ」で優勝した「横手やきそば」や日本穀物検定協会で特A評価の横手産あきたこまちなど、全国的に知られるブランドも少なくない。だが、人口統計を見ると、秋田県は子どもの割合が10.9%と最も少ない県であり、横手市も少子高齢化が進んでいる地域なのだという。そんななか、「"少子高齢化の最先端"だからこそできることがあるのではないか」(岩根氏)と考え、プロジェクトを発足させた。

最も子どもの割合が少ない秋田県。横手市はそのなかでも顕著に少ないという

プロジェクトの目的は、「次世代のITを担う人材を見つけ地域のIT化を促進するためのリーダーとして育成すること」と「地域のIT人材の交流を促進し個々の人材の伝える力、引き出す力、見つける力を伸ばすこと」にある。

「それまでは横手市のIT産業というと、Webサイト製作やシステム構築の下請け的な仕事が多かったのです。そうしたことから脱却し、各分野のスペシャリストを育成して付加価値の高い仕事をしようと思いました。なかでも注目していたのはクラウドを使ったシステム構築です」(岩根氏)

具体的な取り組みとしては、2012年6月からクラウドをテーマとした会議「Cloud Meetup in Yokote」を開催し、クラウドサービスデベロップメントミーティングや、中小企業のためのクラウドを活用した社内ツールの作り方、HTML5とCSSを活用したスマホアプリの作り方などを講義した。

地元商工会議所が主催することで課題を共有

Cloud Meetup in Yokoteの講師としては、ディアイティの河野省二氏やco-meetingの吉田雄哉氏が参加。両氏らを交えた合宿でさまざまな企画の話が盛り上がり、そのまま第2弾「Business Model Generation」、第3弾「Enjoy Mashup in Yokote」の企画につながっていったという。震災後の支援策を検討していたニフティの久保田朋秀氏もプロジェクト初期から参加した。

「当初は取り組みに共感してみんなが手弁当で参加する形でしたが、東北を支援したいという会社の方針と合っていたことから、次第に、インフラの提供や講師の派遣などで協力できるようになりました。今でもボランティアベースでの参加ですが、いろいろな成果がではじめており、手応えを感じているところです」(久保田氏)

現在プロジェクトは第8弾まで進んでいる。その間、横手市のITへの取り組みは、オープンデータに対する取り組みを評価する「Linked Open Data Challenge Japan 2013」で公共LOD賞を授賞し、「フクオカRuby大賞2014」では、当プロジェクトがまつもとゆきひろ特別賞を授賞した。このような取り組みが知られるようになるにつれ、ITに興味を持っていなかった地元の人の間にも関心が広がっていったという。

フクオカRuby大賞2014を受賞

また、ITエースをねらえプロジェクトの大きな特徴として、横手商工会議所が、主催者という形で全面的にバックアップしている点があげられる。地域の中小企業を最もよく把握している商工会議所が取り組むことで、地元の企業が抱える課題が見えてくる。その課題を解決することが地域振興に直接つながり、即効性のある取り組みが可能になる。たとえば地元商店街では、当プロジェクトの指南で、Facebookベージや独自のホームページをイベントの告知や集客、交流に使うようになった。SNSの利用率(横手市Facebookのいいね数やTwitterの横手市フォロー数)は県内ダントツで、東北のみならず全国レベルで見ても有数だという。

SNSの利用率は東北で郡を抜いている

岩根氏は今後も「少子高齢化の最先端である秋田県横田市からのチャレンジを続けていく」と強調した。

ニフティクラウド Japan IT Weekブースレポート
第1回:ニフティクラウドに、"ほぼプライベート"の新サービス
第2回:"稼ぐ" ためのクラウド活用とは?
第3回:少子化最先端の横手市がクラウドで地域振興を実現– Japan IT Week(本記事)