先週はSurface Pro 3の発表や、Kindleを付属しないXbox Oneの国内価格が明らかになるなど、さまざまイベントがあった。Surface Pro 3の国内展開については本日6月2日に日本マイクロソフトから発表される予定だが、本稿では開発者向けコードカンファレンス「Re/code」で披露された、Skypeによるリアルタイム翻訳についてレポートする。

チーム間の協力で生まれたSkype翻訳機能

Microsoftは今年のRe/codeで、Skypeによるリアルタイム翻訳のデモンストレーションを披露した。実際にデモを行ったのは、同社Information Platform&Experience担当CVP(Corporate Vice President)のGurdeep Singh Pall氏と、同社社員のDiana Heinrichs氏。2人は英語とドイツ語でSkypeによる音声通話を楽しんでいた。Pall氏が英語で喋った内容をSkypeがドイツ語に翻訳してスピーチし、Heinrichs氏はドイツ語で返答。そして再びSkypeが英語に翻訳してスピーチするという流れだ。

Microsoftの公式ブログで公開された「Re/code」におけるリアルタイム翻訳のデモ動画。3分過ぎからに注目

Code Conferenceで対談するCo-Executive EditorのKara Swisher氏(左)と、Walt Mossberg氏(中央)、そしてCEOのSatya Nadella氏(右)

デモンストレーションを行ったGurdeep Singh Pall氏

Pall氏の発言はSkypeでドイツ語に翻訳され、Diana Heinrichs氏に伝わる仕組み

P2Pインターネット電話だったSkypeが、音声翻訳機能を実現するところまで進化するとは驚きだが、その背景にはMicrosoftのSkypeチームと翻訳チームの共同開発における努力があったという。以前から同社は音声認識や自動翻訳、機械学習技術に投資してきたが、2013年8月にMicrosoft Asiaで、当時Microsoft Researchの主任研究席責任者だったRick Rashid氏が英語でスピーチした内容を中国語にリアルタイム変換するデモンストレーションを行ったように、一歩ずつ進化している。

その1年前に、Advanced Technology担当EVP(Executive Vice President)のEric Rudder氏とMicrosoft Research代表CVPのPeter Lee氏がMachine Translation(機械翻訳)チームに参加し、Skype翻訳研究プロジェクトは加速した。Re/codeに出席するPall氏はOffice LyncおよびSpeechグループを担当しており、各チームのコラボレーションが功を奏した内容だ。

Microsoft Researchのトップページに張られたバナー。「#speech2speech」というハッシュタグが概要を表している

また、同社は「Speech-to-speech milestones」と題して、機械翻訳の歴史をマイルストーンとしてまとめている。年表を示す画像に不備があるのはご愛敬だが、こちらの情報によればMicrosoftが本格的にコミットし始めたのは、2000年からのようだ。Microsoft Research ASIAで完成した「HMM音声合成のための音声パラメータ生成アルゴリズム」。個人的には1997年のIBMとDragon Systems(現Nuance Communications)が開発した音声認識ソフトウェアの名前が懐かしい。

Microsoft Researchが公開している動画から抜粋。タブレットからSkypeを通じて、クロスリンガルの会話を楽しんでいる

2014年末にはユーザーも利用可能に

これらは絵に描いた餅ではなく、同社は2014年の終わりまでにはWindows 8向けのベータ版をリリースすると明言している。スタートレックを始めとするフィクションの世界では、ストーリーを簡潔にするために万能翻訳機なるものが登場する。スタートレックなら「Linguacode Matrix」、ドラえもんなら「ほんやくコンニャク」のように。言語という障壁がなくなることで、コミュニケーション範囲は拡大し、ビジネスにおける生産性が向上することだろう。年末に登場する新しいSkypeに注目したい。

阿久津良和(Cactus)