2014年6月2日、日本マイクロソフトは、Windowsタブレット「Surface」シリーズ最新版となる、Windows 8.1 Pro搭載の「Surface Pro 3」を発表。今年5月20日(現地時間)に米国本社で発表され、そこから約10日間で国内でも正式に披露された。発表会には、日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏と、マイクロソフト コーポレーション ジェネラルマネージャー Surface & Windows Hardware セールス & マーケティング担当のBrian Hall(ブライアン・ホール)氏らが登場した。

■【レポート】まずは写真で見る、日本マイクロソフト「Surface Pro 3」
■Surface Pro 3、一般向けは7月17日発売 - 91,800円~202,800円

写真左は日本マイクロソフト 代表執行役 社長の樋口泰行氏、写真右はマイクロソフト コーポレーション ジェネラルマネージャー Surface & Windows Hardware セールス & マーケティング担当のブライアン・ホール氏

Surfaceシリーズについては、米国での公式発表から数えて、日本国内リリースまでの期間が世代を重ねるごとに短くなっている。初代Surface RTは米国時間の2012年6月に発表し、2013年3月に国内リリース同時期に発表された初代Surface Proは、2013年6月末に国内リリースと、約半年近くの開きがあった。

Surface 2 / Pro 2の発表は2013年9月だが、米国発売日の10月22日直後の24日に日本国内でもリリースすることを発表し、その翌日25日から発売を開始している。

そして今回の「Surface Pro 3」は、北米市場は6月20日から、日本を含む世界26地域は8月末までにはリリースすると、当初から発表していることから、1カ月程度の遅延で国内発売と思われていた。今回、日本マイクロソフトが開催したプレスカンファレンスでは、樋口氏やHall氏によるデモンストレーションが中心となり、リリース日や参考価格は後回し。まずは順番にお伝えしよう。

日本マイクロソフトの樋口泰行氏。今回は皆統一したTシャツを着用していた

MicrosoftのBrian Hall氏。初代Surfaceからタッチしてきた責任者である

最初に登壇した樋口氏は「現行のSurface Pro 2はフルPCの需要を満たしたものの、分厚い・重い・画面が小さい、といったフィードバックを受けた。数多くの改善を図り、満を持して投入するのが『Surface Pro 3』である」と語った。

ちょうど一年前の2013Q1と比較すると3倍以上のシェア成長率だ

さらに、IDCが発表した家電量販店における7型~11.6型Windowsタブレットのシェア成長をアピール。この結果は、自社のタブレット参入遅延を認めつつも、2013年からは3割のシェアを目指すとしてきた日本マイクロソフトとして、肩の荷が下りるとともに、さらなるシェア拡大のチャンスが見えてきたところだろう。

一方のHall氏は「『Surface Pro 3』はアーティストを始めとする、すべてのユーザーに100パーセントの能力を引き出せるデバイスだ」と語った。続けてノートPCの特徴として、筐体の薄さや軽さ・バッテリの持ち時間は好ましいポイントとなるとしつつ、趣味やビジネスといった場面で生産性を高めるには、ノートPCの方が有効であると述べている。これはSurface担当Vice PresidentのPanos Panay氏と同じ論調だ。

「Surface Pro 3」の特徴を壇上で語るHall氏。ちょうどこのシーンは画面サイズに言及していた

こちらは筐体の軽さに関する話。広いステージを左右に動き回るプレゼンテーションは海外では一般的

Hall氏は「本社とユーザーの意向を踏まえてチャレンジしたのが(初代)Surfaceである。そして第2世代のSurfaceも成功した。今回のSurface Pro 3には自信を持っている」と語るが、気になるのはSurface Pro 2が店頭から消えてしまった件だ(初代Surfaceは在庫を赤字計上するなど、いくつかの憶測を呼んだ)。これについてHall氏いわく「Surface Pro 2に、我々(Microsoft)が想像する以上の需要があったのは知っている。だが、その時点ですでに『Surface Pro 3』が控えていたため、増産を控えた」という。

Surface Pro 3に関しては、解像度の高さやコントラスト比の高さを強調しつつ、キックスタンドに関するデモンストレーションを披露。Surface Pro 2と同じく2段階に加えて、最大150度まで倒し、「キャンパスモード」と読んでいた。なお、Surface Pro 3のキックスタンドは、自由な角度調整ができるようになった。

Surface Pro 2の時よりも深い角度でキックスタンドを広げていく

最終的には150度まで開く「キャンパスモード」として使用可能

ヒンジ部分を改良し、硬度を高めているという

また、Surface Pro 3対応のタイプカバーを装着し、椅子に腰掛けた状態でのデモンストレーションを行った。「以前のSurface Pro 2は、ディスプレイ(=筐体)が揺れてしまったが、(キーボード面が折れ曲がるヒンジで)ホールドすることで、生産性も向上する」(Hall氏)と強調。残念ながら、この点の操作感覚は確認できなかったので、実際に店頭で試してみてほしい。

タイプカバーを装着した状態。できることなら机の上に設置してキーを叩きたいものである

既報のとおり、Surface Pro 3はIntel Core i3/i5/i7といったラインアップを用意しているが、高負荷時の排熱処理については社内でも議題に上がったそうだ。初代Surface Proは、動作したまま小脇に抱えると、結構な温度になる。これを何度も経験している筆者にとっては、さもありなんという具合だ。Hall氏によると、ベントと呼ばれる支柱の間から取り込んだ空気で排熱を行い、最終的には30%も廃熱を改善したという(Microsoft調べ)。

Intel Core i7を搭載したSurface Pro 3の内部写真を披露したが、昨日Microsoftが公開したものと同じだ

すべての空気がデバイス全体に流れ、ベントの隙間をぬって排出する仕組みを採用

この他にもドッキングステーションなどのアピールを行いつつ、登壇者がバトンタッチ。壇上に立ったのは、アドビシステムズ クリエイティブソリューション第1部 デジタルイメージング製品担当グループリーダーの栃谷宗央氏だ。「Surface Pro 3」を「非常にエキサイティングな製品」とコメントしつつ、「Adobe Photoshopなどクリエイティブなアプリケーションを使うにあたり、『Surface Pro 3』はよい選択肢だ」と述べた。

アドビシステムズの栃谷宗央氏

開発版のAdobe Photoshop CCでペンやタッチ操作をアピール。しかし、途中でアプリケーションがハングアップするというトラブルも発生した

続いては、日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows本部 本部長の藤本恭史氏が登場。Windows系の発表会ではお馴染みのプレゼンターだ。藤本氏はHall氏と同じく、付属ペンによるデモンストレーションを行った後に、日本向け「Surface Pro 3」は「Office Home and Business 2013」のフルライセンス版がプリインストールされることを明らかにした。加えて、MetaMoJiの手書きノートアプリ「NoteAnytime for Surface」やOneNote用テンプレートなどが付属する。

日本マイクロソフトの藤本恭史氏

「Office Home and Business 2013」が付属する。もちろんビジネスシーンでの利用も可能だ

日本独自サービスとして、手書きノートアプリ「NoteAnytime for Surface」がプリインストールされる

OneNoteのテンプレートは漢字練習。付属ペンの利用シーンも増えそうだ

再びHall氏が登壇し、Microsoft本家でも行ったデモンストレーションを披露。11インチMacBook Airと思われるデバイスとSurface Pro 3の重量を計るところまでは一緒だが、さらにAC電源や(Hall氏のおやつになるはずだった)リンゴまで秤(はかり)に乗せても、まだSurface Pro 3が軽い。最近の日本マイクロソフトには見られないウィットな内容だった。

本家と同じ計量器を使ったデモンストレーションも披露。リンゴはHall氏のおやつだという

最後は樋口氏が登壇し、予約開始日や発売時期などを発表したが、既に本誌記事でまとめられているので、そちらをご覧頂きたい。

コンシューマー向け「Surface Pro 3」は今晩(6月3日)0時から予約を受け付けるという

個人的に気になるのが、キックスタンドの部分である。数値的な内容は前述のとおりだが、一定角度以上に開くと、上から圧をかけるだけでそのまま開いてしまうのだ。会場のデモ機でよく確認したかったが、今回は来場した記者も多かったため、十分に試すことが難しかった。さらに日本マイクロソフトからは、「展示デバイスは最終製品版ではない」という注意が出されていた。もっとも、上から圧をかけること自体レアケースかもしれないが、デバイスの扱いが上手ではない筆者にとって気になるところだった。実機に触れる機会があれば、改めてご報告したい。

この角度であれば以前の初代Surface ProやSurface Pro 2と同じく、しっかりした印象がある

Surface Pro 3を裏返し、キックスタンドを開ききった状態

この点は個人的な感想なのでひとまず置いておくとしても、「Surface Pro 3」は十分に魅力的なマシンだ。筆者は初代Surface Proを使っているが、タブレットライクな使い方もできるこのマシンは、確かに気に入っている。決して安価な製品ではないのだが、PCの買い替え時期が近づいているユーザーや、Windowsタブレットをそろそろ1台……と考えているユーザーにとって、Surface Pro 3は注目する価値がある。

阿久津良和(Cactus)