一方で液晶テレビ事業に関しては、液晶カラーテレビが米州や欧州で低迷したものの、日本、中国、新興国で伸張し、損益が改善。黒字化を達成している。競合各社が赤字からの脱却に時間がかかるなか、一歩先んじた黒字化といえる。

2013年度の液晶テレビの販売金額は6.6%増の4,138億円、販売台数は前年同期比2.7%減の781万台。一方、2014年度の液晶テレビの販売金額は6.3%増の4,400億円、販売台数は前年比4.9%増の820万台とする。

2014年度は、国内の消費税率引き上げ影響による一時的な販売減などが影響し、上期は低調な推移を予想しているが、下期は新製品投入により挽回。6月2日から試験放送が開始される4K放送に対応した4K対応AQUOS(4K試験放送視聴には「AQUOS 4Kレコーダー」が必要)や、クアトロン プロによる高精細テレビの拡大、70型、80型、90型モデルのラインアップ拡充、新興国などの重点地域に対するローカルフィットモデルの販売強化に取り組むという。また、収益が悪化していた欧州テレビ事業の構造改革の推進も重要な課題となる。

また、白物家電を中心とした健康・環境の売上高は、前年比5.6%増の3,268億円、営業利益が34.7%減の210億円。消費税率引き上げに伴う期末の駆け込み需要から大型冷蔵庫や高機能エアコンが好調に推移したほか、PM2.5問題に伴い空気清浄機の販売も成長したものの、円安進行により海外で生産している輸入製品の採算が悪化し、収益性が低下した点が課題。2014年度の売上高は前年比10.1%増の3,600億円、営業利益が9.6%減の190億円と利益減は避けられない見通しだが、健康・環境ではアジア・パシフィック地域の新体制のもと、全社プロジェクト体制を敷き、ASEANを中心とした海外事業の強化、地産地消推進により為替影響の極小化を図る考えだ。

「シャープのけったいな文化を変える」

2014年度からは「再成長ステージ」として位置付けられている

シャープは、中期経営計画において2013年度までを「構造改革ステージ」と位置づける一方、2014年度からは「再成長ステージ」と位置づけている。再成長ステージの1年目となる2014年度には、収益体質のさらなる強化を掲げ、2015年度には営業利益率5%確保を目指す計画だ。

だが、2014年度の通期業績見通しは売上高が前年比2.5%増の3兆円、営業利益が前年比7.9%減の1,000億円、経常利益が前年比6.2%減の500億円、当期純利益が前年比159.5%増の300億円。営業利益率は3.3%で、2015年度の5%までには距離があると言わざるを得ない。2014年度業績見通しでも、営業利益率で5%を超えるのは、ビジネスソリューションと液晶、健康・環境だけ。これに続く、営業利益率5%の事業を創出しなければ達成は難しい。

高橋社長は、「シャープのけったいな文化を変える」と宣言している。

「けったい」とは関西弁で、「奇妙な」という意味を持つ。社内風土に起因したシャープ独特の文化を指すが、それだけにとどまらず、社内向きの議論や根回しが多く、スピード感に欠如していることも、けったいな文化の1つとする。

高橋社長は「もっと市場状況の変化、環境の変化に即応していける体質にしていかなくてはならない。シャープが目指しているのは、外部要因の変化に社員が迅速に、かつ的確に対応できるということ。そのためには、いかに情報の流通をよくしていくかが重要である。社員一人ひとりが環境変化、事業変化を捉えて、行動を起こすまでの道のりは長いと考えている」とする。

けったいな文化の改善は、そのまま環境変化に即応できる体質を持った会社への改革へとつながる。今回の決算の数字はその成果というにはまだ早いというのが、高橋社長の気持ちのようだ。

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