2010年10月からMBS・TBS系で放送されたドラマ『闇金ウシジマくん』の映画化第2弾となる『闇金ウシジマくん Part2』が16日から公開をスタートした。山田孝之演じる闇金・カウカウファイナンス社長の丑嶋馨が、本作でも違法な金利で貸し付けた債務者たちを徹底的に追い込んでいく。ナンバー2の柄崎役のやべきょうすけ、元ホストでヤミ金界のプリンス・高田役の崎本大海といったおなじみのメンバーをはじめ、丑島の情報屋・戌亥(いぬい)役の綾野剛など新たなキャストにも注目が集まる。

中でも強烈なインパクトを残しているのが、闇金融ライノー・ローンの女経営者で丑島を過剰にライバル視し、時折奇声を発するなど情緒不安定かつ暴力的な女・犀原茜。原作には登場しないオリジナルキャラクターを、『キカイダー REBOOT』(5月24日公開)や『るろうに剣心』(8月1日・9月13日公開)など話題作の出演が続いている高橋メアリージュン。人選が難航する中、なぜ彼女はこの役を射止めることができたのか。モデル時代から朝ドラでの鮮烈デビュー、そして今。"女優・高橋メアリージュン"へと進化を遂げるまでの軌跡を、インタビューで追った。

高橋メアリージュン
1987年11月8日生まれ。滋賀県出身。2004年からファッション誌『CanCam』(小学館)の専属モデルとして活躍。2012年に同誌を卒業し、同年のNHK連続テレビ小説『純と愛』の狩野マリヤ役に抜てきされ、女優デビュー。今年の入って、『闇金ウシジマくん Part2』、『るろうに剣心 京都大火編 / 伝説の最期編』、『キカイダー REBOOT』の3作の映画が公開を迎える。撮影:荒金大介(Sketch)

――高橋さんは本当にこんな人なんじゃないか、と心配になるくらい衝撃的な役でした。オーディションは撮影現場だったそうですね。

ありがとうございます(笑)。突然マネージャーさんに言われたんです。すぐに決めないといけない状況で、映画自体はすでにクランクインしていて。私がオーディションに呼ばれたのはラストシーンの撮影現場でした(笑)。そこが、川沿いの公園みたいなところで。住宅街の中にあって、普通に散歩している人もいるんですよ。

――すごい状況ですね。

ええ(笑)。そこで待ってたら、監督が来て。事前に台本を渡されていたのですが、指定された部分を見たら…これ、声張る系だなと。人もめっちゃ通ってるし、住宅街ですし、一瞬臆しそうだったんですけど、これは度胸を試されているんだなと思って、思いっきりやったんですよ。めっちゃ大声で。そしたら、やっぱり散歩していたおばちゃんも振り返ったりして(笑)。監督は「ありがとう」って言って、そこからいなくなったので、これは落ちたなと。空気読めない女に思われたんだと思いました(笑)。

――起用が決まったのはその場ですか?

いえ、後日です。えっ! 受かったの!? って感じでした。監督から聞いた話によると、大丈夫そうだったからすぐにいなくなったらしいです。インタビューで話されているのを耳にしたんですけど、立って待っていた時に立ち姿の重心が上じゃなくて、下だったらしいんですね。その、男に媚びてない感じがすごくよかったそうです。あとは、伸びる声を出せるのがすごく大事だったと。

――しかし、本当にすごい迫力の役でした。こうして目の前にしても、そんな方なんじゃないかと…。どのように役を作っていったのでしょうか。

普通のヤンキーにはしたくなかったので、狂った意味の怖さにしようと。YouTubeを参考にしようと思って、「狂った女」だと日本の女性しか出てこないので、「crazy woman」で検索して、世界中の狂った女性たちの動画を見まくりました(笑)。

――それはどんな動画なんですか? 相当、破天荒な女性たちなんでしょうね。

破天荒ですね。いきなり車を壊しはじめたりとか。ファストフードのドライブスルーで注文した商品がなかったから、カウンターに乗り込んだりとか。そうやって自主的に調べた部分もありましたけど、監督からのアドバイスもすごく大きくて。

――裏設定も細かく考えたそうですね。

めちゃめちゃありました。最初は難しい役だなと思って。どうやったらあんなに卑劣なことをできるようになるんだろうと考えて、過去にすごくつらい経験があったことにしたり。

――スプーンの不格好な持ち方でチャーハンを食べるシーンが印象的でした。貧しい家庭で育ったんじゃないかと。

まさにそうです。貧しくて、愛情を注がれずに育って、食べ方も分からないまま大人になった。ゲーテの言葉「涙と共にパンを食べた者でなければ、人生の本当の味はわからない」を監督はご飯に変えて私に言ってくださって。茜はずっと涙の味をするご飯を食べてきたんだと。

――映画を見終わってまず思ったのは、「犀原茜が主人公のスピンオフを見たい」でした。

うれしいです。私も茜をもっと知りたいです。そう言っていただける方もいるので、監督もいいねとは言ってくれてます。本当にそうなるといいですね(笑)。

――試写での周囲の反応などはいかがですか。

やはり、ギャップがすごいと言われます。インタビュアーさんも私が入ってくるまで緊張すると。こういう人だったらどうしようみたいな。全然違うので、みなさんホッとしてくださってるみたいなんですが(笑)。

――本当に真逆な役を演じたわけですね。

空気感的にはそうですけど、分かる部分もあります。

――先ほど、「下半身に重心がある」という話がありましたが、それは自然にやったことですか。

たぶん、日頃からですね。

――日頃から男には媚びないと。

そういう感じだと思います(笑)。あとは、舞台に出た直後だったせいかもしれません。舞台はお腹から声を出すみたいな感じだったので。