ソニーは、ゴールデンウイーク中、経営関連で3つのニュースリリースを発表した。

1つは5月1日付で発表した2013年度の連結業績見通しの修正だ。同社では、2014年5月14日に連結業績見通しを発表する予定だが、東証の開示ルールに基づき、当初開示した予想数値とその後の見通しに乖離がある場合には、事前に修正発表を行う必要があり、それに則った形での発表だ。

2月時点での公表値に比べて、売上高は700億円増の7兆7,700億円と上方修正したが、ポイントは、営業利益および税引前利益、そして当期純損益の下方修正だ。営業利益および税引前利益は、いずれも2月公表値の800億円に対して、260億円へと67.5%減もの下方修正となった。さらに当期純損益では、1,100億円だった赤字(損失)見通しが、1,300億円の赤字へと膨れ上がった。その理由としてソニーでは、PC事業の収束に関する費用が新たに約300億円見込まれることをあげたほか、海外におけるディスク製造事業において約250億円の減損計上が見込まれることを挙げている。

2つめのニュースリリースは、業績修正の理由のひとつに挙げられたPC事業に関するもので、5月2日付でリリースした「PC事業の譲渡に関する正式契約の締結について」である。

ソニーのPC、すなわちVAIOの事業を日本産業パートナーズ(JIP)に譲渡することで正式契約を締結したこととともに、2014年7月1日を目処にJIPによる事業が開始される予定であることが改めて示された。会社名はVAIO株式会社(英語名:VAIO Corporation)で、本社は「VAIOの里」の別称を持つ長野県安曇野市のソニーイーエムシーエス長野テクノロジーサイトと同じ場所になる。資本金10億円のうちJIPが95%、ソニーが5%を出資。代表取締役社長には、かつてVAIO事業にも携わった経験を持つ、ソニーの経営企画部門担当の関取高行氏が就任し、従業員数は約240人となる。

当初は、VAIO事業を統括する業務執行役員SVP VAIO&Mobile事業本部 本部長の赤羽良介氏を中心とした体制になる見込みだったが、社長には関取氏が就任した。また、新会社に異動すると見られていたのは当初、ソニーのPC事業に携わっていた1,100人のうち250~300人だったが、実際はそれを下回る人員規模に抑え込んだ。この2点が特筆できよう。

3つめのニュースリリースは経営に直結する内容ではないが、大きな意味での経営関連モノとして、ソニーマーケティングが同じく5月2日にリリースした「ソニーポイントサービス不正ログインに関するお知らせとパスワード変更のお願い」である。

4月19日~29日の11日間にわたり、なりすましによる第三者のメールアドレスとパスワードを用いた不正なアクセス試行が発生し、「ソニーポイント」をプレイステーションストアチケット、mora music card IDに交換されたことが判明。不正な交換に使用された可能性のあるメールアドレス数は273件、不正な交換が行われたと思われるポイント数は、75万3,000ポイント(75万3,000円相当)。なお、メールアドレスとパスワードを含む個人情報漏えいの証跡は確認されていないという。

同社では、不正アクセス試行を遮断するとともに、不正アクセス試行の予防や検知の強化、個別の取引の監視体制を強化。不正な交換に利用された可能性のあるメールアドレスによるログインを遮断し、該当するユーザーに連絡し、パスワードの変更を要請したという。一般利用者に対しても、同様にパスワードの変更を要請している。

相次ぐリリースが物語るドタバタ感

ゴールデンウイーク期間中の相次ぐリリースは、ソニーのドタバタ感を物語っていると言わざるを得ない。連結業績の下方修正はもとより、PC事業売却についても、当初はもう少し前倒しで進捗しているはずだったものが、この時期の正式締結となっている。そして、不正ログインによるポイントの不正交換使用は、まさに脇の甘さを突かれた格好だ。

特に、発表を2週間後に控えた時期での連結業績下方修正は、ソニーの置かれた立場の厳しさを一層際立たせるものとなっている。

2014年2月6日に、ソニーが2013年度第3四半期の連結業績を発表した際、それまでの300億円の最終黒字の計画を、1,100億円の最終赤字へと大幅に下方修正。テレビ事業の10年連続の赤字見通しや、「必達目標」(ソニー・平井一夫社長)としていたエレクトロニクス事業の黒字化を断念せざるを得ない状況を説明し、平井社長が描く改革が予定通りに進んでいないことが露呈した格好だった。為替が円安傾向に振れたことで、ソニーにとっては追い風となるはずだったが、その効果も限定的とならざるを得ないほど進捗が遅れているのだ。