札幌の味噌ラーメン、旭川の醤油ラーメンと並び、北海道3大ラーメンのひとつとされている、函館の塩ラーメン。全国的には札幌と旭川のラーメンほど知名度はないものの、逆にこれからドーンと一気にブレークする「伸びしろ」は大きいと言える。そんな期待大の函館ラーメンを現地で食べ歩いてみた。

「函館ラーメン」とはどんな一品なのか!?(写真は「マメさん」のイメージ)

ワンコインでおつりがくる!

まず訪れたのは、昭和61年(1986)創業という「昭和苑」だ。「函館ラーメンの特徴? うーんそうだなぁ。やっぱり"あっさり"に尽きるかな」。そう語るのは店主の平原惣之助さん。

平原さんによれば、函館は幕末に開港した国際貿易港で華僑とも深い付き合いがあった。資料によれば、そのルートから伝わったのが中国南部の塩味の湯麺だという。つまり、函館のラーメンは東京や横浜などを経由していない、中国から直系のものだったのだ。鶏ガラの澄んだスープはその頃からの伝統だという。

とはいえ、今も鶏ガラだけでスープを作っている店は少数派だろう。昭和苑もベースはトンコツで香味野菜と昆布、カツオの一番ダシで風味をつけている。だが、伝統の"あっさり"は変わらず。そして麺はかすかにウエーブしただけの、ほぼストレートの細麺だ。ひと口スープをすするとどこまでも落ち着いて優しい味。刺激的ではないが癒やし感が十分だ。

「昭和苑」の「塩ラーメン」は460円。現地では高い人気だ

「塩ラーメン」は460円で、ココは「醤油ラーメン」(490円)も人気。醤油を煮詰めてうま味だけを取り出したタレがコク深く、「函館の人は圧倒的に塩ラーメンを注文するけれど、他のエリアの人には醤油ラーメンの方が人気なんだよね」とのこと。それにしてもリーズナブルなお値段。「最近の傾向は知らないけれど、たかがラーメンだもの。これぐらいが適正価格だと思います」とうれしいことを言ってくれる平原さんだ。

●information
昭和苑
函館市昭和3丁目36-1 昭和ビル1F

麺にも海藻を練りこんだ優しい味わい

さて次の店に行こう。たどり着いたのは「新函館ラーメン」と看板を出す「マメさん」だ。一体何が「新」なのだろうか。

「実 は当店のもとの店(マメさん)は1度閉店してしまっているんです。14年前に新横浜ラーメン博物館で函館塩ラーメンを出店しようということになりその時に、『新函館ラーメン』として復活させたんですね」と経緯を説明するのは、店主の岡田匡史(まさふみ)さん。

「マメさん塩ラーメン」(730 円)は函館ラーメン伝統の鶏ガラをベースにとんこつや魚介類などを入れている。何よりも面白いのは麺だ。「塩ラーメンの麺には、海藻の"ふのり"を使っています」。食べてみると麺の風味がふわっと薫りコシもあるので、上品なスープによく絡む。ホッとする味だ。

「マメさん」の「塩ラーメン」は730円

●information
新函館ラーメン マメさん
函館市宝来町 22-6

実はベトナム料理もオススメの店

もう一軒行こうかと、ふらっと入った店は「大国屋(おおくにや)」だ。「ウチの味は40年間変えていない昔からの味だよ」と言うのはおかみさん。トンコツをベースにした「塩ラーメン」は480円とリーズナブルだ。

長ネギやメンマ、チャーシューと具材もシンプル。でも味の主張はしっかりしていて飽きがこない。しっかりと函館ラーメンの輪郭をとらえた、伝統の味わいだ。ココの店のユニークな点は、店主の母国だというベトナムの家庭料理が食べられるということ。エスニックなオリジナルメニューも豊富なので、ぜひ試していただきたい。

「大国屋」の「塩ラーメン」は480円

●information
大国屋
函館市弁天町13-6

くどさのないあっさり系で、かつ食べ応えのある函館ラーメン。まだ食べたことのない人は、ぜひ挑戦してみてほしい。

※本文中の情報・価格は2014年3月取材時のもの