永久不滅ポイントの「セゾンカード」で知られる株式会社クレディセゾン。同社が運営する「永久不滅.com」は、多種多様なECショップが軒を連ねるアフィリエイト・モールで、2013年に会員数980万人、売上520億円を達成している。同社が日本有数の実績を挙げるまでに成長した要因、それはビッグデータを用いた仮説検証サイクルの実行にある。

株式会社クレディセゾン ネット事業部 ネットビジネス部 部長 白又賢二氏

2014年3月19日に開催された「現場で即実践! 仮説検証サイクルを回すデータ分析セミナー」。当日は「スピーディに仮説検証サイクルを回すクレディセゾンの分析力」と題して、株式会社クレディセゾン ネット事業部 ネットビジネス部 部長 白又賢二氏による、講演が行われた。

本記事では、当日の講演内容に沿って、クレディセゾンが行っているビッグデータ分析術について紹介する。

4つのデータを多角的に分析して評価を実行

クレディセゾンが保持するデータには、「会員データ(会員の氏名、年齢、職業など)」「クレジットデータ(クレジットの信用情報など)」「EC利用データ(利用履歴、購入商品情報など)」「アクセスログ(行動ログ)」の4つがある。

ただ「以前はこれらのデータが分散してしまっていたために、多角的な分析と評価ができない」という課題があった。この問題を解決するために、白又氏は分散していた4つのデータを統合し、ビッグデータ基盤を構築。それを可視化する手段として、クリックテック社が提供するBIツール「QlikView」を導入した。白又氏は「QlikView」を選択した理由として「RAWデータを直接利用できること」を挙げた。

デモ展示ブース

一般的なBIツールの場合、目的ごとにデータマート(集計データ)を作成する必要がある。データマートの作成には、ある程度の専門的な知識が必要となるため、ベンダーや情報システム部などへの依頼が発生する。その場合、どうしても相応の手間と時間がかかってしまう。だが、「QlikView」では、RAWデータをそのまま利用できるため、データマートの作成は不要となる。

「『QlikView』は操作も簡単で、また専門的な知識も必要ではない為、データマートが不要であればベンダーや情報システム部に頼らずとも、私たちだけで分析を行うことができます。このスピード感が大きな魅力でした」(白又氏)

変化の激しいネットビジネスの世界では、仮説を立て(Plan)、実行し(Do)、分析と評価を行い(Check)、改善する(Act)、仮説検証のPDCAサイクルを迅速に行う必要がある。

分散化されていた4つのデータを統合したビッグデータ基盤を、「QlikView」による分析で的確な評価を行い、素早く仮説検証サイクルを回す。これが、クレディセゾンが売上520億円を達成できた要因である。

クレディセゾンによる仮説検証の実例

講演では、実際に「永久不滅.com」が行っている仮説検証の実例について、具体的な数値を用いた解説が行われた。その中の一つが、顧客ポートフォリオの作成によるユーザー層の分析である。

会員には、ライトユーザー層とヘビーユーザー層がいる。だが以前は、「それぞれの人数がどれくらいで、どれくらいの頻度で商品を購入しているのか、その定量的な数値を把握していませんでした。そのため、分析しても適切な評価が得られず、効果的な仮説検証サイクルを回すことができなかったのです」(白又氏)

現在では、顧客の利用状況を「在籍期間(初回から直近までの購入期間)」「離脱期間(最終購入日からの未利用期間)」「購入金額(1年間の利用金額)」の3軸について、「QlikView」で分析している。

その結果、初回購入から2回目購入までの期間が、どのくらいであればリピート会員になるのか、未利用期間がどれくらい続けば離脱会員となるのか、利用金額が年間いくらを超えればリピート会員になるのか、その傾向が明確に見えるようになってきた。

「その結果、それぞれの層に対して、どのタイミングで、どのような対策を打てばいいのかが明確になりました」(白又氏)

クレディセゾンでは、この顧客ポートフォリオについて、30日ごとに定点観測を行っている。リピート会員が順調に増えていれば、実施している対策が効果的に作用していることになる。一方、もしリピート会員が減ったり、離脱会員が急激に増えたりすると、何らかの改善策が必要な状況ということになる。

「このように、定期的にポートフォリオを更新し確認することで、順調に推移しているかどうかの評価が可能になります」(白又氏)

さらにデータを組み合わせ、より効果的な分析を実行

「現在は、前述した4つのデータを用いて分析を行っていますが、今後はさらにリサーチ(アンケート)データなどの定性データ、行動ログ(回遊データ)なども組み合わせた分析を行っていきたいと考えています」と白又氏は語る。

「私たちの母体であるセゾンカードでは、リアルとバーチャルを合わせ、多数の企業様と提携しています。そこから提供されたデータも組み合わせていけば、お客様の購買行動を予測した、適切なオファーが行えることでしょう。『QlikView』は、それを分析し評価するツールとして、これからも重要な役割を担ってくれると期待しています」(白又氏)

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