富士通とジャストシステムは24日、"スマートフォン史上最高レベル"と銘打つ日本語入力システム「Super ATOK ULTIAS(スーパーエイトックウルティアス)」に関する記者発表会を開催した。同システムは両社が共同開発したもの。富士通の提供する2014年夏モデルスマートフォンに標準搭載される予定だ。
Super ATOK ULTIASとは?
説明会の冒頭、富士通 執行役員の高田克美氏が登壇し概要を説明した。富士通では、スマートフォン利用者を対象に利用動向を独自調査した。その結果、"音声通話からテキストベースへ"とコミュニケーションの形が変化しつつあることが明らかになったという。一方、別の調査ではスマートフォンの不満点に「文字入力のしにくさ」をあげる人が上昇傾向にあることが分かった。高田氏は「いま、より使いやすい文字入力が求められている」と話した。
富士通では、これまでも持ち手の位置を気にせずに使える「うっかりタッチサポート」、タッチしたい場所を推測して補正する「おまかせタッチ」、ボタンのように押した感触がある「らくらくタッチパネル」などの先進技術で、タッチパネルの使いやすさを追求してきた。同社の2014年夏モデルスマートフォンの大きな目玉になる機能が、今回の「Super ATOK ULTIAS」だ。ULTIASとは、Ultra Technology of Input method for ARROWSの略だという。高田氏は「打とうと思った文字が打てない、予測候補に打ちたい言葉が出ない、といった文字入力の不満に対する、きっちりとした解決策を利用者に提示していきたい」とし、夏モデルの発表に期待を寄せた。
パソコン版「ATOK」相当の高性能な推測エンジンを搭載
続いてジャストシステムCPS事業部長の田食(たじき)雅行氏が登壇。機能の詳細について解説した。田食氏は「文章の作成中、文字変換する時間が利用者の思考を停止させてしまうことがある。この文字の変換作業にかかる時間をいかに減らすか、ということを常に考えてきた」と話す。Super ATOK ULTIASは、最新のパソコン版「ATOK」相当の高性能な推測エンジンを搭載するのが特長だ。これにより、文字変換に要する時間を大幅に短縮できると自信をみせる。
「文脈変換」は、文脈を分析して最適な単語を変換候補の先頭に表示する機能。例えば「せいかく」を変換する場合なら、「計算が正確」「気の強い性格」のように、文脈に使われている他の単語を分析することで「せいかく」を適切に変換する。また日本語から英語への変換にも対応する。契約を「contract」に、アーカイブを「archive」に、カラバリを「color variation」に、メタボを「metabolic syndrome」に変換するといった「英語入力支援機能」なら、スペルの分からない英単語の入力も簡単に行える。
登録語彙数も大幅に増強された。ATOK史上最大クラスの豊富な語彙数で「水馬」(あめんぼ)、「翻車魚」(まんぼう)など、これまで変換できなかった珍しい読みの漢字も一発で変換することができる。加えて「ATOKキーワードExpress」により、話題の言葉を自動的に収集し蓄積できるようになった。これにより、いま人気の有名人や話題のキーワードなど、常に最新の単語が語彙に追加できるという。
「スマートフォンでは、アプリごとに入力に求められる単語が違う」と田食氏。これを考慮して、使用するアプリケーションごとに最適な予測変換候補を表示できる機能も搭載された。地図アプリでは地名が優先され、メールやSNSでは話し言葉が優先され、連絡帳では人名が優先されるといった具合だ。このほか「かんたん住所入力」では、地名の一部を入力しただけで県名・区名などが入った住所に変換できる。
田食氏は最後に、スマートフォンの入力効率を独自調査した結果を公表した。調査方法は、Twitterユーザーがつぶやいた10個のツイートをランダムに選び、その文字列を入力するために必要なタッチ数を、複数の入力システムを使って調べるというもの。その結果、Super ATOK ULTIASでは他社製品の半分程度の操作数で文字を入力できることが分かったという。田食氏は、本製品の利便性について「(利用者に)確実に体感いただけると思う。自信をもって、"スマホ史上最高のATOK"と言える製品に仕上がった。是非、ご期待ください」とアピールした。
夏モデル以降の端末への搭載予定
説明会の最後に、質疑応答の時間がもうけられた。「ATOK for Android Professional」との違いについて教えてください、という質問に田食氏は「Super ATOK ULTIASは、富士通のデバイスに搭載することを前提に開発し、チューニングしたもの。単独で提供している他のATOK製品との比較はできない」と回答した。既存のARROWSユーザーならSuper ATOK ULTIASを利用可能なのか、という質問に高田氏は「夏モデル以降の端末への搭載を予定している。現段階で、既存機種への提供予定はない」と回答した。
富士通製のWindows PCに導入する予定は、と聞かれると高田氏は「具体的な計画はない」と回答。また、他社製スマートフォンへの搭載予定を聞かれた田食氏は「他社への提供は考えていない」と回答した。